病棟薬剤師の仕事を解説・調剤薬局薬剤師との違いは?
ふつうの病院薬剤師の仕事については、コラム「病院で働く薬剤師の一日」に書きました。
今回は病院薬剤師の中でもちょっと特殊な、「病棟」薬剤師について紹介します。
病棟のナースステーションで始まる一日
ふつうの病院薬剤師は、多くの仕事を「薬局」という病院内の限られた場所で仕事をします。
しかし病棟薬剤師は、読んで字のごとく、一日のほとんどを病棟で過ごします。
朝は、出勤するとすぐ病棟へ。
病棟の、医師、看護師、リハビリスタッフ等、スタッフが一同に会し仕事をする場所(ナースステーション)に行きます。
朝の病棟では、夜勤明けの看護師とその日の日勤の看護師が来ており、引き継ぎをします。
そこに同席し、患者の状態を把握します。
朝から他の職種の人たちの中で仕事を始めるわけです。
カルテチェックと服薬指導
それが終わったら、患者一人ひとりのカルテチェックと患者へのインタビュー(服薬指導)を並行して行い、
を中心にチェックし、問題や改善策があれば医師・看護師に協議します。
他の職種のスムーズにコミュニケーションを行う能力が発揮されます。
(大丈夫、大学薬学部でしっかり練習します。)
さらに他の職種とコミュニケーション
病棟にいると、医師、看護師やリハスタッフから薬についての問い合わせをよく受けます。
その都度、一遍通りの答えではなく、その患者さんの状態に応じた解決策を他職種と一緒になって考えます。
お互いのバックボーン(薬剤師なら薬学、看護師なら看護学)は異なりますが、患者さんを想う気持ちは同じ。
それぞれが、それぞれの知識・経験をフルに活かすことで、患者さんにとっての最適な答えが見つかります。
看護師は患者の性格とか、価値観といった部分もとても良く知っているので、看護師と話をすることで、その患者に適した薬の飲ませ方・続け方等を考えることができます。
また、リハビリスタッフとは、
今の薬を飲んでいたら、リハビリ時に、或いは自立に向けて、どんなことに注意すべきか?
などを中心に話し合います。
退院患者への説明と指導
このようにして入院中に磨き上げてきた薬物治療の内容を患者が退院されたあとも、途切れなく続けるには、町中の調剤薬局(患者のかかりつけ薬局)との連携が大切です。
そこで患者が退院される際には、調剤薬局への「お手紙」を作成します。
「お手紙」には、患者さんのアレルギー歴・副作用歴・薬を続けるために工夫していること等を書きます。
そして、退院時に「かかりつけの薬局で提出してください」と言って退院患者に託します。
かかりつけ薬局の薬剤師が、「お手紙」を読むことで、安心安全な薬物療法が続けられます。
入院患者には、入院中ずっと深く関わっていたため、退院時に感謝されることもしばしば。
とってもやりがいを感じる瞬間でもあります。
「配薬ボックス」とは
病棟には、患者さん毎のお薬ボックス(配薬ボックス)があって、1週間分のお薬が服用時点毎にセットされています。
病棟の薬剤師はそのボックス一つ一つを確認し、
・続けるべきなのに、途中で切れてしまっている薬がないか
等確認します。
続きの薬が必要なら、電子カルテに処方を入力して、医師に承認をもらいます。
薬剤師が積極的に薬の処方を提案して医師に採用されることは多く、薬剤師自身が薬物療法をリードしている感があり、これもやりがいを感じる瞬間です。
病棟での昼食
病棟薬剤師は、昼食もナースステーション横の休憩室で済ませることが多いです。
スタッフはいつもたくさんのお菓子を持ち寄ってくるので、休憩室はいつもお菓子でいっぱいです。
昼食のあと、お菓子とコーヒーで、リフレッシュ!
午後の仕事が始まります。
(午後は入院患者への対応があります。)
これからの薬剤師像
いかがでしたか?
お読みいただければわかるように、病棟薬剤師は従来の薬剤師が行っていた、「薬品棚から錠剤を取り出して、薬袋に入れる」といった作業(調剤)はほとんど行いません。
そういった作業は、機械化したり、薬剤助手にやってもらったりして、薬剤師は、どんどん付加価値のある仕事へシフトしています。
全国の病院薬剤師・病棟薬剤師が、自分たちの職能を発揮できる高い付加価値の仕事を見つけ出して、実践しています。
どんどん新しい仕事が生み出され実践されていく、まさにフロンティアです。
こんなに可能性のある仕事は少ないのではないか、と我ながら思います。
ぜひ皆さんも、このような挑戦しがいのある病院薬剤師を目指してください!