NGO職員になるには? 仕事内容や就職先、年収などについて解説

「NGO職員」とは

NGO職員になるには? 仕事内容や就職先、年収などについて解説

政府とは異なる立場で国際協力や世界的な問題解決のための活動をする。

NGO職員とは、「NGO(Non Governmental Organization:非政府組織)」に所属する人のことをいいます。

NGOは、政府や国際機関とは異なる民間の立場で、多様な社会の課題解決のための活動をする団体です。

とくに貧困や飢餓、人権、環境破壊、紛争といったグローバルな問題に向き合うことが多いことが特徴です。

日本国内には400以上のNGO団体があるとされ、NGO職員は各NGO団体の理念にしたがい、活動を行っています。

多くのNGOは「寄付金」によって事業を運営しており、職員は有給で働く正規雇用スタッフだけでなく、ボランティアとして活動する人も少なくありません。

資金に限りがあることから、新卒採用はあまり行われておらず、民間企業や国際機関、国際ボランティアなどで豊富な経験がある人が活躍するケースが目立ちます。

「NGO職員」の仕事紹介

NGO職員の仕事内容

国家の枠組みを超えた世界の諸問題に立ち向かう

NGO職員とは、NGO(Non Governmental Organization)という団体に所属する人のことをいいます。

NGOは、日本語では「非政府組織」と訳され、政府とは異なる民間の立場から、国家の枠組みを超えた世界的な問題に取り組んでいます。

日本国内には400以上のNGO団体があるとされ、各NGOが途上国の貧困問題や紛争問題、地球環境問題、人権問題などに関する活動を行っています。

NGOのひとつの特徴として、民間企業のように営利を目的としない点が挙げられます。

ただ、これは利益を上げてはいけないという意味ではなく、利益は「NPOとしての活動に使って社会に還元する」ことを指しています。

所属するNGOによって活動内容はさまざま

NGO職員の仕事内容は、所属先のNGOによって異なります。

貧しい地域の開発や教育、農業指導などに携わったり、森林保護や環境保全、女性や子ども、難民などの人権擁護的に関わったりと、世界各地にまたがる活動をすることが多いのが特徴です。

NGOによっては、国際機関や政府、自治体、企業などとも連携して、それぞれの強みを生かした活動を行っているところもあります。

また、日本国内の事務所で広報や管理などの働く人もいれば、海外で生活しながらNGOとしてプロジェクトを推進していく人もいます。

NGO職員になるには

社会人経験のある人が中心に採用される

NGO職員になるには、各NGO団体が出す職員募集の求人に応募して、採用される必要があります。

ただし、NGOは限られた資金で運営する規模が小さい団体が多いため、大手企業のように大々的な採用活動を行うケースはまれです。

また、企業のように採用後にじっくりと研修・教育を行う余裕があまりないことから、社会人経験のある人材が求められやすく、民間からの転職によってNGOに入る人が目立ちます。

欠員が出たときのみ採用活動を実施するケースが一般的となっているため、NGO関連の求人情報サイトなどを活用しながら、こまめに情報をチェックしましょう。

インターン経由でNGO職員になる若者もいる

NGOでは、上記で挙げた理由もあって新卒の募集はとくに少ないです。

しかしなら、学生のうちにNGOのインターンに参加し、卒業後にそのまま正規職員になるケースは見られます。

早くからNGOの活動経験を積んで人脈を広げておくことは、NGOへの就職にあたって有利にはたらくでしょう。

その他、国際的なボランティア活動の経験も評価されやすいです。

なかにはJICAの青年海外協力隊に参加し、その経験を生かしてNGOに入る人もいます。

NGO職員の学校・学費

学歴よりも何をしたいか、どう力を発揮できるかが重視される

NGO職員として働くために、必ず通わなくてはならない学校はありません。

NGO職員の採用試験では、学歴そのものが応募資格や採用条件になるというよりも、「NGOで何をしたいのか」や「どのような知識・能力を生かせるのか」が重視されることが多いからです。

もちろん、学生時代に専門的に学んだことがあれば、それは大きなアピール材料になるでしょう。

実際、NGO職員のなかには大学院卒など高い学歴をもつ人もいます。

しかしながら、学歴が低いからNPO職員にはなれないわけではありませんし、逆に特定の学校を出ればNGOへの就職で有利になるということもありません。

NGOの多くは社会人経験者を中心に採用しているため、これまでの職務経歴をNGOでどう発揮できるかをしっかりと考えて、応募することが大切です。

NGO職員の資格・試験の難易度

NGOによって求められる資格・スキルは異なる

NGO職員になるために、どのような資格・スキルが求められるかは団体ごとに異なります。

団体によって活動内容も異なれば、仕事内容や求める人材像もまったく違うからです。

ただし、NGOはグローバルな活動を行うところが多いため、英語力を中心とした高い語学力をもつ人は歓迎されやすいです。

また、高い事務処理スキルや経営・マネジメントのスキル、ITのスキルなども役立たせられることが多いとされています。

なかには特別な資格がなくても、これまでの経験や意欲次第で採用される可能性もあります。

希望のNGOが見つかったら、求められる資格・スキルレベルについて調べてみるとよいでしょう。

NGO職員の給料・年収

安定した収入が得られるNGO団体は限られている

NGO職員の給料・年収は、民間の会社員に比べるとやや低めといわれています。

「NGOセンサス2017 調査結果報告」によると、NGOの有給職員全体の平均年収は341万円という結果になっています。

この数字を見ても、ある程度の社会人経験を積んだ人でも、月々の給料は大手企業の新入社員と同じくらいの水準か、所属先によってはそれ以下になる可能性もあります。

最近では、多くのNGOが有給職員の採用を増やすようになったものの、それでも限られた財源で活動する以上、民間企業並みの収入を得るのは難しいと考えておいたほうがよいでしょう。

待遇・福利厚生はNGOによってまちまち

NGOの待遇や福利厚生については、各団体でまちまちです。

一部の大きなNGOであれば社会保険や各種手当、休暇制度なども充実しているものの、小さなNGOでは満足な待遇が用意されていないこともあります。

NGOには、一部、無給のボランティアとして活動しているスタッフもいます。

NGOの職場環境改善は徐々に進んでいますが、給料や待遇を最優先に考えたい人にとっては、NGOはあまり向いていないかもしれません。

NGO職員の現状と将来性・今後の見通し

社会的に必要な存在だが、経営状況が不安定な団体も

NGOは、政府や国際機関とは異なる民間団体の立場で国際的な諸問題に向き合い、世界をよりよいものにしていくという重要な役割を担っています。

日本にも、「グリーンピース・ジャパン」「日本赤十字社(JRCS)」「日本国際ボランティアセンター(JVC)」のような有名で比較的長い歴史をもつNGOがいくつもあり、その活動内容は社会的にも認められています。

ただし、多くのNGOは「寄付金」によって事業を運営しているため、どうしても経営状況が不安定なものになりがちです。

したがって新しい事業に挑戦しにくかったり、事業を拡大させるのが難しかったりする一面があり、近年は新規で設立されるNGOはあまり多くありません。

NGO職員として働きたいのであれば、自分のやりたいことと団体の理念がマッチするかをしっかり確認するのはもちろん、活動内容や事業基盤、安定性までよく調べておくとよいでしょう。

NGO職員の就職先・活躍の場

国内のNGO団体を中心に活躍

日本人NGO職員の活躍の場は、日本国内のNGO団体が中心です。

日本の事務所で働く人がほとんどですが、海外に駐在してプロジェクトを進めていく人もいます。

ただし全体的にみると、有給で働く正規職員の数はそこまで多いわけではなく、なんらかの目的意識があって無給のボランティアで活動する人もいるのが実情です。

また、NGOとはいってもさまざまな組織があり、法人格を得ている団体の場合は「特定非営利活動法人(NPO法人)」に分類される組織が多いです。

海外のNGOで働くことも可能ですが、採用ハードルは国内のNGO以上に高く、一定レベル以上の実務経験や高度な語学力が必須とされることがほとんどです。

実際に海外のNGOでは、民間企業や国際機関などで豊富なビジネス経験のある人が働くケースが多くなっています。

NGO職員の1日

NGOの活動内容や担当業務によって1日の動きは異なる

NGO職員といっても、人によって担当業務や働き方は違うため、1日の流れはさまざまです。

国内オフィスで働く場合には、オフィスワークが中心で、プロジェクトの企画や進行状況の管理、広報活動、啓蒙活動など多様な事務業務を遂行します。

ここでは、国内NGO団体で働く職員のある1日のスケジュール例をご紹介します。

8:30 出勤・メールチェック
9:00 現地担当者とミーティング
11:00 月例会議でプログラム内容の振り返り
12:30 昼休憩
14:00 取材対応
15:00 団体の活動内容を紹介する資料作成
17:00 現地担当者と情報共有
17:30 退勤

NGO職員のやりがい、楽しさ

国際協力の最前線で活動できる喜び

NGO職員として働くやりがいは、国際的な協力を行う団体の一員として、世界の諸問題に自ら関わっていけることだといえるでしょう。

世界各国には、紛争、貧困、人種差別など、日本ではあまり考えにくい多様な問題があふれています。

環境破壊など、全世界で取り組んでいかなくてはならない大きな問題もあります。

それらに対して真摯に向き合って、各地域や世界をよりよいものにしていくために尽力することは、NGO職員ならではのやりがいだといえるでしょう。

給料や待遇のことだけを考えれば、もっとよい条件で働ける民間企業はたくさんありますが、NGOでしかできない経験があったり、NGO独自の活動内容に誇りと充実感を得て、働き続けている人も多くいます。

NGO職員のつらいこと、大変なこと

安定した給料・待遇が約束されない職場も

NGO職員にとっての苦労のひとつは、安定して働ける環境があまり整っていないことです。

一部の大きなNGO団体は給料も比較的よく、待遇も十分に整っている場合が多いですが、あまり予算がとれず、低めの給料で働く職員や無給のボランティア中心で活動している団体もあるのが現実です。

NGOは世界にもたくさんあり、その意義や必要性には注目が集まっているからこそ、働く人への待遇面を向上させていくことは、今後の課題のひとつとされています。

現状では、いくら頑張って働いてもそれに見合うお金や待遇が還元されるとは限らないため、お金以外の「やりがい」や「使命感」などを感じられないと、NGOでの活動を続けるのが難しいかもしれません。

NGO職員に向いている人・適性

団体の理念・ミッションへの共感が最重要

NGO職員として働くにあたって最も重視されるのは、各団体の理念・ミッションに賛同できるかどうかです。

どのNGOも明確な理念を掲げて活動しているため、それに共感・納得できないようだと、その場で働き続けるのは非常に難しいと考えられます。

また、グローバルを舞台にするNGOでは、多様な価値観・キャリアをもつメンバーや外部の関係者との連携・協力も必要なことから、コミュニケーション力や協調性なども重視されることが多いです。

海外勤務を希望する場合は、高いレベルでの語学力や、慣れない環境でも生活できる健康な体と心をもちあわせていることも必須条件となります。

NGO職員志望動機・目指すきっかけ

国際問題の解決に強い関心をもつ人が多い

NGOの多くが国際的な協力活動を行っているため、NGOで働きたいと目指す人は、もともと世界の諸問題に強い関心があるケースが大半です。

青年海外協力隊や国際ボランティアに参加していた人が、帰国後にNGOへ就職・転職するケースもよくあるパターンです。

なお、NGOは新卒採用をほとんど行っておらず、基本的には社会人経験や国際ボランティアなどで活動していた経験をもつ人が職員として採用されています。

民間企業で働くうちに、なんらかのきっかけで国際的な貢献活動に興味を抱くようになり、NGOに入ることを決める人も多くいます。

NGO職員の雇用形態・働き方

常勤の正規職員のほか、ボランティアも多数

NGO職員は、正規雇用されている常勤職員と、非正規のスタッフに分けられます。

前者は民間の正社員と同じようなかたちで、フルタイムで働き、プロジェクトの中心人物として重要な職務に就きます。

後者についてはボランティアや、学生を対象としたインターンシップとしての働き方が主流で、無給での活動となることも珍しくありません。

NGOにおける正規雇用のハードルは高めですが、ボランティアやインターンシップとして経験を積み、信頼を集めて人脈を広げることで、内部から正規職員に登用されるケースもあります。

NGO職員として長く働きたいと考えている場合には、給料や待遇の安定性を考慮すると、やはり正規雇用で働くことを目指すほうがよいでしょう。

NGO職員の勤務時間・休日・生活

所属団体や活動内容によって働き方は異なる

NGO職員は国内で働く人と、海外で働く人の両方がいます。

国内勤務をする場合には、民間企業の日勤の会社員と同じように、朝から夕方にかけて働くことが多いです。

ただし海外とのミーティングをする場合など、時差を考慮して深夜や早朝などイレギュラーな時間に働くケースもあります。

土日や祝日は休むことが多いですが、国際協力関連の講演会やシンポジウムなどがあると、積極的に参加することもあります。

海外勤務をする職員の場合は、現地の時間や生活リズムに沿って活動するのが一般的です。

NGO職員の求人・就職状況・需要

社会人経験者を対象とする求人が目立つ

NGOには大小さまざまな団体がありますが、求人が出される場合、そのほとんどが社会人を対象としたものです。

その理由のひとつとして、NGOは限られた資金と人員で活動を行っているために、大手企業のように時間をかけて新人教育・研修を行う余裕がなかなかないことが挙げられます。

したがって、すでにビジネスマナーや業界知識などを有し、働くことに対する基本が理解できている人が優先的に採用されています。

また、他のNGOやNPOでの活動経験がある人や、国際的なボランティア活動、青年海外協力隊などに参加したことがある人も優遇されやすいです。

新卒でNGOに入りたいと強く考えている人は、学生時代にNGOのインターンに参加することをおすすめします。

NGO職員の転職状況・未経験採用

高度な語学力や専門的なスキルは歓迎される

先述した通り、NGOでは社会人経験のある人、つまりなんらかの職務経験がある人が優先的に採用されています。

事務や経理、IT、営業、企画、マネジメントなど、民間の会社員として多様な経験やスキルをもつ人が、その後のキャリアとしてNGOで活躍しています。

もちろん、各NGOの活動内容に関連する知識・スキルを有している人は、大きく歓迎されるでしょう。

NGOはそこまで求人数が多くないため、まったくの未経験からでは採用が難しいケースもあります。

NGOへの転職を希望するのであれば、社会人としての知識・スキルを身につけ、それを生かせるNGO団体を探して応募するのがベターです。

NGOとNPOの違い

NGOはグローバルに、NPOは国内での活動をすることが多い

NGOとNPOは、名称こそ異なる団体ではありますが、実態としては非常に似た要素をもっています。

どちらとも民間の団体であること、社会の多様な課題に取り組むこと、営利を目的にしないことなどは、すべて共通しています。

その上で、外務省では両者の違いについて「日本では、海外の課題に取り組む活動を行う団体をNGO、国内の課題に対して活動する団体をNPOと呼ぶ傾向にある」というメッセージを発信しています。

加えて、政府とは異なる立場であることを強調しているのが「NGO」、営利を目的としないことを強調したのが「NPO」という見方もできます。

両者は対立するものでもなく、どちらも非政府かつ非営利の組織で、NGOはおもに海外で、NPOはおもに国内で、社会的な活動をしています。