スイッチングコストとは
マーケティング用語の1つで難しそうにも思えますが、実はわたしたちの生活の中にも自然に繰り広げられている経済現象を示す用語なのです。
今回は、スイッチングコストについて解説します。
スイッチングコストの意味は?
「スイッチングコスト」を直訳すると、「切り替え費用」です。まさにこの直訳通り、あるものを何かに切り替えたり、変更したりすることで発生する費用のことをいいます。
「あるもの」とは、現在所有している「もの」であったり、利用している「サービス」を示します。
それを同等の何かに切り替えるとき、費用がかかります。
その費用は「もの」そのものにかかる費用だけではありません。サービスや新しいものにかえた時の、不慣れな感覚とかそれを習熟するためにかかる費用など、実際にお金に換算できないものも含まれます。
スイッチングコストは「わたしたちの生活の中にも自然に繰り広げられている経済現象」です。具体的な事例でご紹介しましょう。
スイッチングコストの身近な事例
あなたが今持っている携帯電話を買い替えるとします。現在持っている携帯電話には、アドレス帳なり、写真なり映像なり、プライベートで大切な情報がつまっています。
これを別の機種に切り替えるとすると、どのくらいコストがかかるのかを考えてみましょう。
まず、大切なデータを移行するのには時間も手間もかかりますよ。これは立派なコストになります。
つぎに新機種の操作に習熟するまでの時間もまたコストとして換算します。
また、今持っている携帯電話、長年使っていたので愛着があるでしょう。この「愛着」もコストに換算します。
さらに言えばイヤホンなどのアクセサリーはともかく、スマホ専用ケースは新機種では使えないこともありますから、こうしたもろもろのことで、薄い層を重ねるように、携帯電話の買い替え(スイッチング)にはコストがかかるのです。
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スイッチングコストが高い、低いって?
このように携帯電話の乗り換えひとつとっても、スイッチングコストは意外にかかっていることがわかります。
携帯電話のスイッチングコストは、機種本体の金額や通信サービスが「機能的価値」にあたります。
機能的価値はさらに通信料や機器本体の値段である「金銭的コスト」と、データを移してもらったり、通信サービスを追加したりにかかる「物理的コスト」に分けることができます。
手持ちの携帯電話に対する愛着感や新機種に対応するまでの習熟を面倒臭いと感じる思いなどは「情緒的価値」にあたります。
愛着心やブランド価値といったものは「心理的コスト」であるためお金に換算しにくく、比較対照できません。
買い換えの場合、これが一番のハードルになったりするものなのです。
このようにスイッチングコストはさまざまな要素で積み上がります。
それが高ければ、すなわち費用が高いので、人は買い換えをしないほうに傾きます。逆にスイッチングコストが低ければ、買い替えしやすくなります。
スイッチングコストでロックイン、とは?
スイッチングコストが高いと、買い替えにはためらいがちになりますがが、まさにこれを使ってユーザーを囲い込むことを「ロックイン lock in」(しまい込み、囲い込み)すると言います。
携帯電話を例にとれば、機種本体の金額、データ移行の手間、いまの機器への愛着など、いろいろ考えて行くと買い替えに消極的になる、または買い換えしない、という気持ちになってきます。
このようにスイッチングコストがかなり高いことから「ロックイン」状態になるのです。
企業からしてみれば、大切なお客さまが自社製品から他社製品に買い換えしないのですから、非常にありがたい状態です。
つまり「ロックイン(囲い込み)」は、企業側にとって顧客をつなぎ止める有効な手段となるのです。
ロックインを行うために行っていること
製品単位ではなく、ブランドのスイッチングコストやロックインといった例もあります。
iphoneからiphoneの新機種への買い替えをするときのスイッチングコストは低く、iphoneからandroidへのスイッチングコストは高くなります。
これは、データ移行の手間、操作の慣れ、iphoneブランドへの親しみなどがあるからです。
逆にいえば、iphoneを製造するアップル社は、次に携帯を買い換えるときもiphoneを選んでもらえるように、データ移行を簡単にできるようにしたり、機種が変わっても操作が変わらないようにしたり、iPhoneのブランド価値を高めたりしています。
さらに、ipadやmacbookなどiphoneと相性のよい機器を販売し、アップル製品でユーザーをロックインしています。
この記事のまとめ
私たちは生活のあらゆる場面で、スイッチングコストを考慮して買い替えや切り替えを決断しています。
身の回りのものを見渡して、いま使っているもののスイッチングコストが高いか低いかを考えてみると理解が深まるでしょう。
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