奨学金の保証人とは? 誰に頼めばいい?

(読了時間:7分44秒)

奨学金を申し込む際、保証人を立てる必要があります。

保証人を頼むとはどういうことなのか、保証人の仕組みや責任の範囲について知っておくことは非常に重要です。

また、保証人と連帯保証人、さらには機関保証のちがいを理解しておくことも欠かせません。

奨学金の保証人の仕組みと依頼する人の選び方について解説します。

奨学金の保証人の仕組み

奨学金は将来の自分が返済する「借金」です。

問題なく返済していくことができればいいのですが、もし返済が遅れてしまったり、返済できない事情が出てきたりした場合のことを想定して「保証人」を立てることになっています。

保証人になってほしいとお願いする以上、保証人とはどのような仕組みなのか知っておくことは欠かせません。

まずは保証人の基本的な仕組みについて確認しましょう。

奨学金が返済できない場合、保証人が肩代わりする

保証人を依頼するということは、「将来、私が奨学金を返済できなくなった場合、あなたが返済を肩代わりしてください」とお願いすることです。

保証人を引き受ける相手にとって、将来大きな負担を強いられることになるリスクがあります。

借りる奨学金の総額は大きな金額になるため、返済できなくなれば保証人自身も自己破産に追い込まれるなど、大変な迷惑をかけてしまう可能性があります。

言い換えれば、保証人になってもらうには「私は借りた奨学金を自分で責任を持って返済します」と約束し、信頼してもらわなくてはなりません。

このように、奨学金の保証人は決して気軽に頼めるようなものではなく、将来責任をもって自分で返済していくことを約束する意味が込められています。

保証人に認められている権利

保証人には、次の3つの権利が認められています。

<保証人に認められている権利>
・催告の抗弁権
・検索の抗弁権
・分別の権利

催告の抗弁権とは?

保証人に奨学金返済の請求が来た場合、主債務者(奨学金を借りた本人)に自己破産や行方不明など請求不可能な事情がない限り、主債務者に請求するよう主張できる権利です。

どのような権利なのか、具体例を見ていきましょう。

大学に進学するAさんは奨学金を借りましたが、転職して給与が下がってしまい、返済が滞る時期が続きました。

すると、「Aさんの代わりにあなたが奨学金を返済してください」と、保証人のもとに請求がきます。

このとき「いえ、Aさんにどうしても返済できない事情があるとは思えないので、私はAさんの奨学金を返済したくありません」と、保証人は請求を拒むことができます。

これが「催告の抗弁権」です。

検索の抗弁権とは?

主債務者に返済能力があるにも関わらず返済を拒んでいる場合、主債務者による返済や財産の差し押さえをするよう主張できる権利です。

Aさんの例でたとえると、「Aさんは返済できるのに返そうとしていないだけですから、きちんと返済するよう本人に伝えるか、無理ならAさんの給与を差し押さえてください」と主張できるのです。

つまり、催告の抗弁権・検索の抗弁権はどちらも「何とかして借りた本人に返済させてほしい」と主張する権利が保証人に認められていることになります。

さらに、保証人には請求額を1/2に減額することを求める「分別の利益」も認められています。

分別の権利とは?

返済額の残り半分は連帯保証人が負担するよう主張できる権利です。

Aさんの例で言えば「分かりました、では私が保証人として返済すべき金額の半分を支払いますので、残りの半分は連帯保証人の方に負担していただきたいです」と主張することができます。

このように、保証人は奨学金を安易に肩代わりさせられることのないよう、さまざまな権利が認められています。

保証人を立てたからと言って、奨学金を借りた本人が返済する責任を免れたり、責任が軽くなったりするわけではないことを十分理解しておく必要があります。

届け出た保証人は変更できる?

一度届け出た保証人を変更することは、原則として認められていません。

保証人の死亡や債務整理など、客観的に見てやむを得ない事情がある場合に限り、新たな保証人を選任することが認められています。

また、保証人が引っ越した場合の住所変更など、保証人の個人情報に関する変更を届け出ることはできますが、保証人そのものを別の人に変更することは認められません。

つまり、保証人を届け出た以上、個人的な事情などによって別の人に変更することはできません。

奨学金は卒業後15年間、20年間といった長い歳月をかけて返済していくことになるので、保証人を依頼するにあたっては極めて慎重に、十分に考えた上で選任する必要があります。

保証人の種類と責任の範囲

保証人には大きく分けて「保証人」「連帯保証人」「機関保証」があります。

このうち保証人と連帯保証人は「人」が保証するという意味で「人的保証」と呼ばれます。

保証人と連帯保証人は「連帯」の2文字がついているかどうかのちがいに見えますが、実は責任の範囲には大きな差があります。

保証人を依頼する際、相手に負ってもらう責任を理解しておくことは最低限のマナーとも言えます。

保証人の種類と責任の範囲について整理しておきます。

保証人と連帯保証人の責任のちがい

奨学金を借りている本人が返済を拒んだ場合や、返済できない事情を抱えている場合に、保証人は返済を請求されることになります。

ただし、保証人には前で述べた「催告の抗弁権」「検索の抗弁権」という権利が認められています。

つまり、保証人はもし自分のもとに奨学金の請求が届いたとしても、別の方法で返済してほしいと主張する権利が認められています。

一方、連帯保証人には保証人に認められている「催告の抗弁権」「検索の抗弁権」「分別の利益」のいずれも認められていません。

奨学金を借りた本人が「返済できない」と言っていれば、連帯保証人の元に届いた請求を拒めないことになります。

もし奨学金を借りた本人に返済能力があったとしても、何らかの事情で返済できないと言っているのであれば、連帯保証人が返済を肩代わりする必要があります。

つまり、連帯保証人は保証人と比べて重い責任が課せられていることになります。

「保証人と連帯保証人を選任する」と聞くと、それぞれ同じように保証人を依頼するように思えますが、実際には負ってもらうことになる責任の範囲は大きく異なることが分かります。

保証人を立てない「機関保証」もある

保証人を依頼する相手が選定できない場合や、保証人を誰かに依頼するのは気が引けると感じる場合、保証人を立てず機関保証を活用する方法があります。

令和2年に実施された調査によれば、奨学金制度を利用した1,205人の大学生のうち、人的保証加入者は57%、機関保証加入者は43%となっています。

参考:日本国際教育支援協会 機関保証センター「機関保証制度に対する アンケート調査結果」

機関保証を活用することによって、人的保証の必要はなくなります。

ただし、保証料が毎月の奨学金から天引きされることになり、貸与月額が大きくなるほど保証料も高くなります。

《第一種奨学金 機関保証料》

貸与月額 月額保証料 4年間合計
国立大学 自宅生 45,000円 1,515円 72,720円
自宅外生 51,000円 1,821円 87,408円
私立大学 自宅生 54,000円 1,928円 92,544円
自宅外生 64,000円 2,666円 127,968円

《第二種奨学金 機関保証料》

貸与月額 月額保証料 4年間合計
20,000円 589円 28,272円
40,000円 1,488円 71,424円
60,000円 2,668円 128,064円
80,000円 4,286円 205,728円
100,000円 5,358円 257,184円
120,000円 6,429円 308,592円

参考:日本学生支援機構「2020年度採用者の保証料の目安」

上記のように、4年間トータルで考えると保証料によって奨学金が目減りすることがより分かりやすくなります。

機関保証を利用する際には、保証料がかかることを理解した上で、人的保証よりもメリットが大きいかどうかよく考える必要があります。

保証人の種類のまとめ

保証人は種類によって責任の範囲が異なります。

また、人的保証と機関保証には一長一短があるため、どちらのほうがいいとは一概に言えない面があります。

保証人の種類をきちんと理解した上で、依頼する際には誠実にお願いすることが大切です。

人的保証 機関保証
保証人 連帯保証人
催告の抗弁権の有無 あり なし
検索の抗弁権の有無 あり なし
保証料の要否 不要 不要 必要

奨学金の保証人・連帯保証人は誰に頼めばいい?

奨学金を申し込むにあたって、保証人を選任しなくてはなりません。

このとき、誰に保証人を依頼すればいいのか迷ってしまう人もいることでしょう。

奨学金の保証人は親族に依頼するのが一般的です。

ただし、保証人と連帯保証人では依頼できる相手が異なりますので注意が必要です。

保証人・連帯保証人を誰に頼めばいいのか確認しておきましょう。

連帯保証人は父母に頼むのが一般的

奨学生本人が未成年の場合、連帯保証人はその親権者(または未成年後見人)となります。

奨学生本人が成年であれば父母となりますが、父母がない場合は4親等内の親族を選任します。

未成年者や学生、債務整理中の人、奨学生本人の配偶者・婚約者を連帯保証人にすることはできません。

このように、「連帯保証人は両親に頼むのが一般的」を考えていいでしょう。

保証人はおじ・おば・兄弟姉妹などに頼むのが一般的

保証人については、おじ・おば・兄弟姉妹など4親等内の親族から選任します。

連帯保証人とはちがい、奨学生本人の父母は選定することができません。

また、本人や連帯保証人と同一生計の人も選任できないことになっていますので、兄や姉が両親と同居している場合、保証人になってもらうことはできません。

連帯保証人と同様、未成年者や学生、債務整理中の人や配偶者・婚約者にも依頼するのは不可となります。

以上の条件から、保証人を頼むのはおじ・おば、あるいは実家を離れて生計を立てている兄・姉に依頼するのが一般的です。

奨学金を申し込むにあたって、保証人・連帯保証人の選任は避けて通れません。

保証人・連帯保証人となってもらう人には、大きな責任を負わせることになります。

大きな金額を借りることになる上に、長い歳月をかけて返済していくものですので、親族であっても保証人や連帯保証人を依頼する場合には誠実にきちんとお願いするようにしましょう。