石油業界研究・仕事内容や求人状況、今後の動向を解説
石油業界とは
日本は天然資源の少ない島国であり、石油に関しても、ほとんどを海外からの輸入に頼っています。
そのため、石油資源確保を目的としてグローバルに事業展開する企業が多く、さまざまな地域の石油の採掘から精製、販売に関わっています。
このような生活に欠かすことのできない石油やガソリンを安定的に確保・供給し、日本国内に流通させることを目的として事業展開している企業は、石油産油国はじめとした海外の取引先と協業して事業を進めていくことが多いです。
ですから、国際色豊かな仕事であり、さまざまな国が関わる分、国際情勢にも左右されやすい業界だといえます。
また、「オイルマネー」と言われるように、一事業で巨額の金額が取引される業界であることから、関わる企業の収益も大きくなります。
近年は石油需要の減少から、それに代わる代替エネルギーの開発や生き残りをかけた企業の吸収合併などの業界再編が進み、動きが激しい業界ともいえるでしょう。
石油業界の役割
石油業界は、ガソリンや石油を、輸入、精製、販売している会社で構成される業界のことで、私たちの生活に欠かせないエネルギーを扱っています。
エネルギーの供給が不安定になると、社会生活や経済活動が滞ってしまうため、これを安定的に供給することがミッションになります。
一部の大手企業が、原油の採掘、輸送、精製、販売までを、グループ企業で行っているところもありますが、原油自体は日本国内で採掘できるところがほとんどないため、輸入に頼っているのが現状です。
石油は枯渇問題や国際政治経済の問題と深く関わる業界であり、情勢次第で多くの課題を抱えることがありますから、業界の先行きが不透明なイメージが少なくありません。
そのため、近年の石油業界の動きとしては、安定的なエネルギー供給のため石油以外の天然ガスや石炭開発、再生可能エネルギーなどの代替エネルギー開発に注力している企業も多い状況です。
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石油業界の企業の種類とビジネスモデル
石油業界のビジネモデル
石油業界では、原油の採掘から、販売店への卸販売をするまでのそれぞれのプロセスを川の流れに例えて、上流、中流、下流と呼ぶことがあります。
石油開発や生産を行う上流、石油を採掘国から日本へ輸送するプロセスを中流、日本国内での精製、卸販売を下流と呼んでいます。
これらプロセスの一部分を担う企業もあれば、石油開発から販売までを一貫して行っている企業もあります。
日本では、資本力のある大規模企業が上流から下流までの一連のプロセスを事業展開していることが多いです。
大手石油企業のビジネスモデル
国内石油企業大手のJXTGホールディングス株式会社や出光興産などは、豊富な資本力を背景にプラント開発からガソリンスタンドの運営まで幅広く事業展開し、石油元売り会社と呼ばれています。
これら大手の石油元売り会社は、近年の原油価格の低下や省エネによる石油需要の減少、国際情勢による供給体制の不安定化などから、競争力と対応力を強化するため、他企業をM&Aし資本力を強化しています。
それにより大手は、出光昭和シェル、JXTGエネルギー、コスモ石油、ギグナス石油、太陽石油の5社まで集約されています。
資本力を結合することで、経営の効率化やエネルギー開発の効率化を目指し、総合エネルギー企業として天然ガス、電気事業、再生エネルギーなど新しいエネルギー事業への参入を進めています。
海外の石油企業
石油採掘現場が海外であるため、上流の石油開発、生産を担う企業は海外に集中しています。
中でも、原油採掘量がトップのサウジアラビアに市場トップシェアを誇る企業が集中している状況です。
例えば、国営企業で原油採掘量トップの世界的企業であるサウジアラムコがあります。
石油採掘に関しては他社を追随させない規模があり、会社の利益に関してもアップルやエクソンモービルなどのアメリカ有名巨大企業さえもはるかに上回っています。
今までは、主に石油の上流プロセスを事業の主力としていましたが、近年は他社と協業し事業を展開しています。
例えば、日本の自動車会社のマツダなどと共同研究を開始し、車両エンジンに最適な燃料の開発を進めたり燃料電池自動車用の水素ステーションの建設も進行中です。
石油業界の職種
石油業界の職種は、大きく2つに分けることができます。
1つはエネルギー開発や製造に関わる技術系の職種で、2つ目は事務系の職種です。
これらの職種で代表的なものを4つご紹介します。
プロセス管理
プロセス管理は、石油精製や石油化学製造に関わる職種です。
石油の生産管理全般を担当し、需要予測や生産計画の立案、実行、進捗管理を行います。
需要に合わせた適切な生産計画を作成し正確に進めて、石油を供給することが任務となりますので、採掘から輸出までのプロセスに関する知識が必要となります。
開発
開発職には2種類あり、1つ目は研究開発職で石油の成分や精製プロセス、石油製品の開発など石油自体を研究して商品化を行います。
新製品を開発すると同時にコストを抑えた精製方法を提案するなど、企業の収益に直結する開発を行います。
2つ目は、石油施設を建築する際に最適な土地を探す資源開発職です。
石油は地下深くにありますが、地質・物理調査を実施し、最適な石油プラント建設地を選定する職務を担います。
プラント管理
プラント管理は、石油採掘や製造に必要となる、プラントの設計を行う職種です。
新しくプラントを建てる場合の設計を行うのはもちろんのこと、建築から年数の経過した施設の改修や補修を計画し、施行するのもこの職種の役目です。
セールスエンジニア
石油業界のセールスは、一般的な提案型の営業職とは少し違います。
原油は日本に輸入されて精製され、石油やガソリンなどの製品として日本全国の販売店に卸されます。
卸先の例としては、ガソリンスタンドなどが該当します。
これらの店では、ガソリンを供給するために専用の機器を使用しますが、それらの機器のメンテナンスを行いつつ、営業活動を行うのがセールスエンジニアの役割です。
そのため営業スキルだけでなく、石油の幅広い知識と供給機器の保守メンテナンスの知識が必要となるため、技術営業職と呼ばれることもある、専門性の高い営業職です。
石油業界のやりがい・魅力
石油業界で働く魅力は、多くの人たちの生活を支えることができる事業に関われるという点です。
石油自体が日常生活であまり意識されることはありませんが、石油がなくなっては普段の生活を続けることは不可能になってしまうほど、深く生活と関わっています。
重要なエネルギーである石油を安定的に供給し続ける仕組みを保っていくことは、社会的にも意味のあることだといえます。
また、グローバルに事業を展開している企業が多いため、日本だけでなく世界各地の幅広い地域で働くことができる可能性が高いです。
海外赴任のチャンスをつかむことができれば、ビジネスマンとしてのスキルアップも実現できるでしょう。
石油業界で働く人の待遇ですが、大手企業は待遇がいい状況です。
大手石油会社の平均年収は、800万円~900万円前後が平均値とされており、他の業界や業種と比較しても好待遇といえます。
また、大手企業は福利厚生が充実しており、働く環境も充実している点も注目すべきところです。
一方、中小企業では年収の水準が大手に比べると数百万円低い年収となる場合もあり、大手と中小企業で格差が大きいのもこの業界の特徴です。
石油業界は、国際情勢に左右されて業界動向が変化しやすく、不安定な部分もある業界ですが、エネルギー資源は生活になくてはならないという点において需要がなくなることはありません。
今後は天然ガスや石油に代替するエネルギー開発を進めている石油会社も多くありますので、石油だけにとらわれずに多角的に事業を展開し、総合エネルギー企業として成長してくという意味で将来性のある業界です。
石油業界の雰囲気
石油業界は、ほとんどの企業が海外との取引があるため、グローバルな雰囲気が強いのが特徴です。
企業によっては、外国籍の人が多く働いている場合もあります。
また、石油プラントのほとんどは海外にありますので、石油を日本に輸入させるなどの業務に携わる場合は、日本企業とは違った文化を持つ人とコミュニケーションをとる機会が多くあります。
多様な文化や価値観を持った人と仕事をする中でも、正確にスケジュール通りに業務をこなす対応力のある人が向いている業界といえるでしょう。
また、国際情勢に左右される業界でもありますので、常に政治経済の動きを情報収集するなど、情報感度が高い人も能力を発揮できる業界といえます。
石油業界に就職するには
就職の状況
大手の石油企業を中心に毎年新卒採用を行っており、100名を超える応募枠の企業もあります。
職種では、事務職よりも石油事業の開発に携わる技術系職種の応募が多い傾向にあります。
1社あたりの募集人数は多いのですが、石油会社は大手を中心に好待遇で年収が高めの企業が多く、福利厚生も充実していることから、毎年応募人数が多く競争が激しい業界です。
条件のいい会社で採用されるためには、技術系やの専門的な研究を行っていたり、外国語が堪能でグローバルな働き方に対応できるなどといった、アピールできる能力があると面接時の強みとなります。
就職に有利な学歴・大学学部
石油企業の求人は、前述の通り、技術系と事務系の募集があります。
技術系は、研究開発や石油施設の設計、管理など石油に関する専門知識が必要となる職種です。
また、事務系は、営業、物流管理、人事・総務、財務経理など多岐にわたります。
どのような職種に就くのかで違いますが、技術系の職種であればエネルギーに関して学べる工学部・理工学部や、環境・資源エネルギー工学科等であれば、基礎知識を学ぶ機会が得られます。
また、エネルギーの原理などを研究したい場合は、物質工学科や応用化学科、理学部の物理学科・化学科などが該当します。
どの分野の専門知識を身に着けたいかにより、学部の選択肢はさまざまな種類があります。
事務系は、比較的学部や学科の縛りがなく、幅広く募集されています。
外国語のスキルが高いと、グローバルな事業の現場業務が支障なくこなせますので、語学スキルを磨いておくのも、採用に有利な条件となるでしょう。
就職の志望動機で多いものは
志望動機として多いのが、生活に欠かすことのできない、エネルギー資源の開発や供給に携わりたいというものです。
近年の石油企業は、石油資源に限らず天然ガス等の新しいエネルギー資源を有効活用し、供給する仕組みづくりを始めています。
石油に限らず、環境に負荷をかけすぎないエネルギー資源の開発など、さまざまなエネルギー開発に携わりたいという意欲のある志望動機もあります。
その他に、暮らしを縁の下で支える、社会の重要なインフラに関わる仕事がをしたいと希望する人も多いようです。
また、日本だけでなく海外での事業立ち上げやプロジェクトにかかわる機会も多いため、グローバルなビジネスをしたいというチャレンジ精神旺盛な気持ちから、石油業界を志す人もいるようです。
石油業界の転職状況
転職の状況
転職求人は、業界経験者を中心に、不定期で中途採用を実施している状況です。
中途採用は、特に中小企業での募集が積極的に行われており、即戦力となる人材が求められています。
中小企業には、大手のように新人教育を手厚く行う体制が整っていない企業もあるため、中途採用で専門知識とビジネススキルを持った人材を採用する傾向にあります。
中途採用の場合、募集職種にもよりますが、技術系職種ですと実務経験があることや「危険物取扱者」、「高圧ガス製造保安責任者」などの資格を求められる場合があります。
他業界からの転職者が多いのは、化学や機械系メーカーの技術者が、石油・エネルギー業界に転職する場合です。
転職の志望動機で多いものは
転職の志望動機で多いのは、エネルギー業界で業務経験がある人が、他社のエネルギー開発事業に共感して、転職を希望するケースです。
今まで培ってきた経験を活かしてさらにステップアップするために、現職の企業では行っていない事業にチャレンジし、スキルアップを試みるための転職が多いようでした。
転職で募集が多い職種
転職求人が多い職種としては、技術職が挙げられます。
石油に関する専門知識だけでなく、天然ガスなどの石油とは違うエネルギー資源に関しての研究開発の知識があると、アピール材料となります。
また、日本国内の業務ではなく海外での実務経験があると、グローバル人材としてプラント開発や営業職などで採用の間口が広がる傾向にあります。
どんな経歴やスキルがあると転職しやすいか
技術職の転職求人は、実務経験が重要視されます。
石油に関しての専門的な知識だけでなく、業務を遂行するための高い能力やスキルを求め、即戦力としての採用を考える企業が多いためです。
ですから、業界未経験だと採用が厳しい場合があります。
しかし、営業職や人事、総務などの管理部門の職種であれば、石油企業での実務経験が乏しくても、語学や管理系の専門スキルをアピールすることで、採用される可能性があります。
石油業界の有名・人気企業紹介
JXTGホールディングス株式会社
国内の石油業界で、トップシェアの売上を誇る大手企業です。
新日本石油株式会社、新日鉱ホールディングス株式会社、東燃ゼネラルと合併して現在の会社名になりました。
国内燃料油50%の販売シェアがあり、売上高は10兆円、国内第一位の石油企業です。
JXTGホールディングス株式会社 ホームページ
出光興産株式会社
出光興産株式会社は、ガソリンスタンドでおなじみの国内有数の大規模企業です。
近年は、昭和シェル石油株式会社と経営統合され、JXTGホールディングス株式会社に次ぐ国内第2位の石油企業です。
石油開発事業では、ノルウェーや東南アジアを中心に石油・天然ガス採掘プロジェクトを行うなど、グローバルに事業を展開しています。
出光興産株式会社 ホームページ
コスモエネルギーホーディングス株式会社
コスモ石油株式会社は、1986年に大協石油株式会社、丸善石油株式会社、旧コスモ石油株式会社の3つの社が合併した企業です。
持ち株会社のホールディングス傘下に多数のグループ会社があり、コスモ石油ではガソリンスタンドの運営を行っています。
石油事業のほかに、風力発電やソーラー発電など環境にやさしいエネルギー開発にも取り組み、社会インフラ整備をグローバルに取り組んでいる企業です。
コスモエネルギーホーディングス株式会社 ホームページ
石油業界の現状と課題・今後の展望
近年の石油業界の大きな動きといえば、それぞれの企業が生き残りをかけた経営統合による業界再編がますます加速している点が挙げられます。
石油企業大手のJXホールディングスと東燃ゼネラル石油の経営統合や、出光興産と昭和シェル石油の経営統合など、資本を統合することで企業力を強化する動きをとっています。
また、日本国内では人口減少やマイカー保有率の低下により、ガソリン需要が年々低下していることもあり、新しい石油製品の開発も急がれるところです。
また、従来は、石油やガソリンが私たちの生活に必要不可欠なエネルギー源でしたが、オール電化が普及するなど、エネルギーに対するニーズが変化することで、需要が徐々に減少しています。
石油、ガソリン需要が低下する背景から、国内では天然ガスや火力発電燃料へのシフトの動きもあります。
これらの流れを受けて、石油会社でも電力販売や再生可能エネルギーなどの領域での事業を展開し始めており、石油ビジネスにとどまらない、総合エネルギー企業へと変革する動きが続いています。
エネルギーに対してのニーズの変化にうまく対応し変化できる企業が、今後の石油業界の牽引役となっていくでしょう。
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