住宅設備業界研究・仕事内容や求人状況、今後の動向を解説
住宅設備業界とは
住宅設備とは、住宅内に設置される、生活に必要な設備のことをいいます。
住宅設備の中でも、さらに「サッシ」「シャッター」「住宅設備(狭義)」の3つにわけられ、それぞれに専門の企業が開発・販売を行なっています。
業界内の売り上げは景気の影響を受け2006年頃から減少傾向にありました。
しかし、2011年以降震災復興需要や消費税増税前の駆け込み需要などの後押しを受け、回復傾向が見られました。ここ数年は横ばいとなっています。
現在急速に進む少子化・人口減少を受け、新規の住宅建設数は減少傾向にあり、市場規模をどのように維持していくかが業界の課題です。
住宅設備業界の役割
その家に住む人の暮らしがどれくらい快適かは、住宅設備によるところがとても大きいです。
特に、キッチンやバストイレなどの水回りに関しては、設備や機器によってその使い勝手や快適性が大きく異なります。
普段の生活における使用頻度が大変高い設備ですから、住む人の生活への影響はとても大きく深いものとなります。
住宅設備業界で取り扱う商品は、そのように住む人の暮らしに直結するものばかりです。
キッチンやバス・トイレなどの設備の使用快適性や、配管などライフライン設備の安全性はそのまま住む人の快適度・安心につながっています。
住宅は多くの人にとって人生においてとても長い時間を過ごす重要な場所です。
また、家族を育む場でもあります。
住宅設備業界は、全ての住宅において、住む人の暮らしを根本から守るという大きなミッションを担っているのです。
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住宅設備業界の企業の種類とビジネスモデル
住宅設備業界には、住宅設備を開発・製造しているメーカーと、それらの設備の販売を担っている商社があります。
住宅設備メーカー
実際に住宅設備の開発・製造を行なっている企業をメーカーと呼びます。
メーカーの中にも、住宅設備全般を幅広く取り扱っている企業もあれば、専門分野を絞って開発している企業もあります。
例えば、業界最大手のひとつであるLIXIL株式会社はキッチンやバストイレなどの水回りの他、フェンスや玄関周りのエクステリア、ベランダやカースペース、太陽光発電機器など、住宅に関する設備を幅広く取り扱っています。
対して、TOTO株式会社はトイレなどの水回り設備に特化して開発していますし、YKK株式会社は窓やドアなどのエクステリアにとても強い企業です。
商社
メーカーが、自社が開発した商品の販売まで一括して行うこともありますが、住宅設備専門の商社も存在しています。
住宅設備の場合、購入されるタイミングは新築建設時やリフォーム時です。
そのため、これらの住宅設備は個人ではなく、施工を担当する工務店やハウスメーカーへ向けて販売されることが一般的です。
住宅設備を取り扱う商社としては、三谷商事株式会社やジューテックホールディングス株式会社などがあります。
一般向け販売者
住宅設備は工務店やハウスメーカーへの販売が一般的と書きましたが、最近ではその流れにも少しずつ変化が見られ、一般消費者向けに、住宅設備を直接販売する業者も現れています。
例えば、大塚設備株式会社の運営するネットショップ「住宅設備販売ドットコム」や株式会社サンリフレホールディングスの運営する「交換できるくん」では、さまざまなメーカー製の住宅設備をインターネット経由で購入することができます。
住宅設備業界の職種
住宅設備業界の職種は、技術系と事務系の2つに分けられることが一般的です。
技術系は実際に商品の製造・開発にあたる職種です。
事務系はそのほとんどが営業職として商品の販売を担当しており、さらに営業職とショールームスタッフに分けられます。
技術職
住宅設備メーカーにおいて、実際のものづくりの部分を担う職種です。
住宅設備に関わる新技術の開発や、技術を利用した新商品の開発を行う部署と、実際の商品製造に関わる工場での勤務があります。
多くの場合、新規採用者は工場勤務からキャリアをスタートし、その後志望や適性に合わせて技術開発や商品開発部署への配属となるようです。
営業職
メーカーで製造した商品を実際に販売する職種です。
事務系職種の中では最も人数が多いことがほとんどで、企業の売り上げを一手に担う、重要な役割を果たしています。
また、顧客に対してアフターフォローや必要時の対応を行い、次の機会へつなげていくことも、営業職の重要な仕事のひとつです。
ショールームスタッフ
住宅設備メーカーの中には、ショールームを展開している企業も多くあります。
生活の場面をイメージしつつ、実際に商品に触れながら比較検討してもらえるショールームは、住宅設備販売においてとても重要なポジションを担っています。
ショールームスタッフは、展示している商品すべてに対する幅広い知識と、顧客に対するきめ細かなホスピタリティが求められる職種です。
住宅設備業界のやりがい・魅力
住宅設備業界で扱う商品は、当然ですが、そこに住む人の生活に深く根ざした商品です。
そのため、その商品の良し悪しは、実際に使用する人のクオリティ・オブ・ライフ(生活の質)に直結します。
特に、キッチンやバストイレなど、水回りの設備は発展が顕著で、毎年のように新商品が開発・発売されます。
これらの分野において、新技術の開発や、新しいアイデアに基づく工夫は、そのまま住人の生活の質を向上させ、家庭で過ごす満足感や幸福感を大きくします。
自分の工夫や働きが、誰かの幸せにつながるというポイントは、住宅設備業界で働く人にとっての大きなやりがいということができます。
また、住宅設備業界における平均年収は600万円弱と言われています。日本の有職者全体の平均年収は400万円強ですから、業界として給与水準は高めであることがわかります。
大手企業に絞って言えば、LIXIL株式会社の平均年収は1000万円以上、三和HDや積水化学株式会社も900万円台と、とても高い水準の企業が多く存在しています。
住宅設備業界の営業職は、多くの場合基本給+営業成績による歩合給で給与が決まっています。
営業職の場合、顧客の都合に合わせて働く必要があるため、大変な側面もありますが、頑張れば頑張った分だけ給与となって還元されますから、やりがいがあり、モチベーションの維持のしやすい職種ということができます。
住宅設備業界の雰囲気
住宅設備業界で働く人の雰囲気は、技術職と営業職で異なります。
技術職の場合、新しい技術の開発や実際の製造にあたりますから、細かいことに気づくことができたり、しっかりとした製品管理が重要です。
そのため、スタッフにも真面目できっちりと働くことが求められます。
対して、営業職の場合は顧客と対応し、ニーズを把握したり、問題解決への提案をしたりといったことがメインの業務です。
そのため、コミュニケーション能力が高く、ポジティブな雰囲気のスタッフが多くなります。
業界全体としては、市場も大きく、需要も大きな変動なく安定している業界であるため、落ち着いた雰囲気があります。
短期的な変化やイノベーションよりも、中長期的に市場や社会情勢を見極め、対応する力が求められる業界ということができます。
住宅設備業界に就職するには
実際に住宅設備業界に就職を希望する場合、どのような状況なのでしょうか。
まずは、新卒採用を取り巻く状況を紹介します。
就職の状況
住宅設備業界では、多くの場合新卒一括採用を行なっています。
募集は技術系と事務系に分けて行われることが一般的です。
事務系で採用された場合、そのほとんどは営業職として勤務することになります。
技術系で採用された場合、ほとんどの場合は最初は工場勤務となります。
工場において実際の製造業務や製造管理業務を学び、その後志望や適正に合わせて技術開発や商品開発部署へステップアップしていくというルートが多いようです。
事務系での採用の場合は、営業職もしくはショールームスタッフとしてキャリアをスタートすることがほとんどです。
その後は希望や適性に合わせてさまざまな部署を経験し、管理職を目指すという流れが想定されます。
就職に有利な学歴・大学学部
住宅設備業界においては、大卒以上の学歴が必須となっている求人が多く見られます。
一部企業では職種を限定して高卒以上での採用を行なっていることもあるようですが、職種や給与面において限定されるなど、大卒に比べると不利な条件となっていることがほとんどです。
ただし、技術系に限り、高専卒以上という募集となっていることもあります。
営業職の場合、大卒以上であれば学部や専攻は問われないことがほとんどです。
それよりもむしろ、営業に必要なコミュニケーション能力が重視される傾向にあります。
また、企業によっては海外展開やITの強化を進めている企業もあります。そのような場合は、語学力やITリテラシーが歓迎されることもあります。
技術職の場合は、学部や専攻を具体的に指定されていることがよく見られます。
その企業で扱う商品の種類によって、電気系や工学系、化学系など、業務に直結する学部が求められています。
就職の志望動機で多いものは
住宅設備業界を目指す人の志望動機としては、やはり生活に直結する商品を扱いたい、というものが多く聞かれます。
住宅設備は人の暮らしに大きな影響を与える商品ですから、その開発や営業はとてもやりがいのある仕事です。
また、営業職の場合、自分の頑張りがそのまま評価されるという点もやりがいにつながります。
住宅設備業界にはさまざまな企業や専門性があります。
企業によって取り扱っている商品の分野や特性もさまざまですし、同じカテゴリの商品を扱っていても、企業ごとにその商品の特性や企業らしさがあります。
そのため住宅設備に対する思いだけでなく、業界内でも特にその企業を志望する理由、その企業の商品の魅力などを伝えることが好印象につながります。
住宅設備業界の転職状況
前項では、新卒採用における就職の状況を紹介しました。
こちらでは、既にキャリアがある状態からの転職について紹介します。
転職の状況
営業職の場合、キャリアアップとして転職する人材も多く、離職率も高めのため、求人数は多めにあるようです。
同業界内での経験や知識は転職において大変有利になりますが、そうでなくても転職は可能です。
特に、他業界であっても営業経験者の場合、即戦力として歓迎される傾向にあるようです。
しかし、技術職はあまり離職率が高くなく、求人数としてはあまり多くありません。
また、専門的な知識や技術、経験が必要とされるため、全くの未経験からの転職は簡単ではありません。
転職の志望動機で多いものは
他業界からの転職の場合、新卒採用の項でも書いた通り、人の生活に密着した仕事に対する思いや意気込みを志望動機として伝える人が多いです。
ただし、それだけでは業界内のどの企業でも良いという印象を与えてしまいます。
その企業を志望する気持ちをしっかりと伝えるためには、(1)なぜ住宅設備業界なのか(2)なぜその商品(カテゴリ)なのか(3)なぜその企業なのかの3点に言及することをおすすめします。
転職で募集が多い職種
事務系職種、特に営業職は常に求人がある職種のひとつです。
業界内での経験があれば即戦力としてもちろん歓迎されます。
しかし、営業職やショールームスタッフの場合、経験や知識など、入社後獲得することができるスキルよりも、コミュニケーション能力やホスピタリティ、人当たりを重視する企業が多いです。
そのため、別業界であっても営業職の経験は大きなプラスとなりますし、全くの未経験であっても、面接の印象が良ければ採用の可能性は十分にあります。
どんな経歴やスキルがあると転職しやすいか
技術職を希望する場合、同業界内での経験や知識が重視されます。
業界内でのスキルアップを検討しているのであれば、現職で経験・実績をしっかりと積んでおくことがおすすめです。
営業職の場合、業界未経験であっても転職は十分可能です。
営業経験があればそれが、なければ自身のコミュニケーション能力がアピールポイントになります。
また、事務職は「販売士」など、技術職は「建築設備士」などの資格が業務に深く関連します。
これらの資格を持っていると、転職の際有利になることがあります。
住宅設備業界の有名・人気企業紹介
住宅設備業界内には、さまざまな企業が存在しています。
それぞれに、取り扱い商品カテゴリや技術開発分野など、特徴があります。
ここでは、有名な企業を3つ紹介します。
LIXIL株式会社
住宅設備業界において、2大大手企業のひとつです。
キッチンや浴室・トイレ、リビングなどのインテリア設備や窓・門、ベランダやガーデンスペースのエクステリアの他、太陽光発電設備やタイルなど、暮らしに関わる設備を幅広く取り扱っています。
パナソニック株式会社
LIXIL株式会社と並んで、業界内最大手企業のひとつです。
インテリア設備・エクステリア設備に加え、家電部門で培った技術をもとに、IoT設備においても高い技術力を有しています。
自社で注文住宅やリフォームも取り扱っており、ワンストップサービスも強みであり特徴のひとつです。
YKK株式会社
窓やドアなど、エクステリア設備に特化した大手企業のひとつです。
バリアフリーや断熱など、専門性と技術力を生かし、クオリティの高い商品を提供しています。
住宅設備の他、ビル設備なども手掛けています。
住宅設備業界の現状と課題・今後の展望
住宅設備市場は、新築建築やリフォーム数によって市場規模が大きく左右されます。
そのため、景気などの影響を大きく受けやすい業界でもあります。
最後に、住宅設備業界の現状と今後の展望について紹介します。
競争環境
現在、住宅設備業界においては、LIXIL株式会社とパナソニック株式会社の2強状態です。
とはいえ、市場シェアは2社合わせて3〜4割程度であり、独占というほどではありません。
それ以外にもTOTO株式会社やリンナイ株式会社など、有名企業が多数あります。
最新の動向
多様化するニーズと市場状況に対応するため、業界内での統合や再編が積極的に行われています。
例えば、2011年にはINAX、トステム、新日軽、サンウェーブ工業、東洋エクステリアの5社が統合し、LIXIL株式会社となっています。
また、パナソニック電工も解散し、パナソニック株式会社に統合されています。
業界としての将来性
急速に加速する少子化と、それに伴う将来的な人口減少のため、新築建築の件数は今後減少していくと考えられます。
対して、海外市場はアジアを中心に、急速に発展を見せている地域があります。
今後は、縮小しておく市場にどう対応し、また海外展開をどのように進めていくかがポイントとなりそうです。
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