大学院に社会人が通うことはできる?

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生涯にわたって学びと就労を繰り返す「リカレント教育」が脚光を浴びるなど、いま社会人の学び直しに注目が集まっています。

社会人になってからも学びの機会を持ちたいと考えている人にとって、大学院へ通うことは選択肢の1つになり得るでしょう。

では、社会人が大学院に通って学ぶことは現実的に可能なのでしょうか。

また、大学院に通うとしたら社会人はどのように準備を進めたらいいのでしょうか。

社会人が大学院に通うことは可能?

まず根本的な疑問として、社会人が大学院に通って学ぶことはできるのでしょうか。

社会人は日中の時間を仕事に充てる必要がありますので、研究のために割くことができる時間がどうしても限られてしまいがちです。

忙しい仕事の合間を縫って大学院に通うことが現実的なのかどうかについて解説します。

一般の大学院は学業への専念が条件となることが多い

一般的に、大学院に通う以上は学業に専念することが求められます。

仕事と並行して片手間に研究に携わるのではなく、研究を主軸とした生活を送ることが前提となっているケースがめずらしくありません。

たとえば、東京大学大学院総合文化研究科修士課程の募集要項には、在職中の人に対して次の注意事項が記載されています。

(5)在職中の者は、次の点に注意すること。

ア. 大学院に入学を許可された場合、在学期間中は大学院の学業に専念すること。

イ. 在職のまま大学院に入学をしようとする者は、入学手続の際に、在学期間中は学業に専念させる旨を記した、勤務先の長(任命権者又はそれに準ずる者)による証明書を提出すること。

参考:2020年度 東京大学大学院総合文化研究科修士課程学生募集要項

つまり、社会人として働きながら大学院に通うことは実質NGであり、大学院に通う以上は休職または退職する必要がある、といったメッセージと受け取れます。

このように、大学院としては社会人が仕事の傍ら研究を進めることを推奨しておらず、学業への専念を条件としていることがあります。

そこで、会社を退職・休職、もしくは転職して大学院に通うメリットとデメリットについて考えてみましょう。

会社を辞めて大学院に通うメリット・デメリット

大学院で学業に専念するための方法として、勤務している会社を辞めて大学院に通うことが考えられます。

メリットとして、研究のための時間を確実に取ることができ、集中して研究に打ち込める点が挙げられます。

デメリットとしては、会社を「退職」するわけですから、収入を得るための手段を失うことになります。

収入源がなくなっても学費は納入しなくてはなりませんし、生活していかなくてはなりませんので、少なくとも大学院に通っている期間中は経済的な不安が生じないだけの蓄えが必要になります。

また、大学院を修了して仕事を再開する際、就業先を確保できる保証がない点もデメリットとなります。

会社を休職して大学院に通うメリット・デメリット

勤務先に休職制度があれば、大学院に通っている期間中は休職する方法も考えられます。

メリットとしては、大学院を修了してから復帰できる職場が確保できている点が挙げられます。

ただし、休職期間中はキャリアが停滞してしまいますので、業務知識の習得や実務におけるスキルアップを先送りしなくてはならない点はデメリットと言えます。

大学院に通うために休職することへの理解が得られる職場ばかりではありませんので、確実に休職できるかどうかが不透明な面もあります。

場合によっては、休職したことで昇進や昇給の機会を逃してしまい、先々のキャリアパスにマイナスの影響を及ぼすことも考えられます。

時間に融通のきく職場に転職して通うメリット・デメリット

時短勤務が可能な職場や平日の勤務日数が少ない職場に転職する方法もあります。

メリットとしては、収入源を確保しつつ大学院にも通える点が挙げられます。

経済的な安定を保てることによって、心理的にも安心して研究に打ち込めるはずです。

一方で、転職による環境の変化や収入減のリスクを負わなくてはならない点はデメリットと言えます。

時間に融通がきく仕事に変わる分、以前と比べて収入が大きく下がったり、選べる仕事の種類が限られてしまったりすることも考えられます。

また、そもそも大学院での研究と両立できるほど時間に融通のきく仕事は希少であり、仕事を見つけられる保証はないこともデメリットとなり得ます。

社会人を続けながら通うなら社会人大学院が現実的

一般的な大学院では学業に専念できることが前提となっているため、社会人が仕事と両立しながら通うのは現実的に難しい面があります。

そこで、社会人が仕事を続けながら大学院に通うのであれば社会人大学院という選択肢を検討しておくといいでしょう。

社会人大学院とは社会人が通うことを想定した大学院全般を指します。

授業は平日夜間や土日に行われるため、仕事を続けながら通うことができます。

平日夜間であれば仕事が終わってから通うことになり、土日に通う場合は仕事が休みの日を学業に費やすことになりますので、生活としてはハードなものになります。

しかし、社会人として働きながら専門性の高い研究に取り組めるという大きなメリットがありますので、社会人が大学院に通う場合には適した方法と言えます。

社会人大学院に入るための準備とスケジュール

社会人大学院にも一般的な大学院と同様に入試があります。

合格基準を満たす学力や研究への十分な意欲があると認められなければ入学することができません。

また、大学院に出願するにあたって研究計画書を提出する必要があります。

社会人の場合、仕事を続けながらこうした準備を進める必要がありますので、大学院に入るまでの段取りを計画的に進めていくことが重要です。

そこで、社会人大学院に入るまでの主な準備内容とスケジュールを確認しておきましょう。

志望大学院選びと研究室訪問

まずはどの大学院に入るのか決める必要があります。

大学院の案内を取り寄せたり、Webで調べるなどして志望大学院を決めておきましょう。

志望する大学院が絞り込まれてきたら、実際に研究室を訪問して取り組みたいテーマの研究ができるか確認しておく必要があります。

大学院で説明会などを開催している場合もありますが、研究室の教授に直接アポイントを取って訪問することもあります。

研究室訪問時に、これまでの研究内容や今後取り組みたい研究について説明を求められることもありますので、研究計画書の素案やポートフォリオを用意しておくといいでしょう。

少なくとも、大学院で取り組みたい研究テーマや研究の方向性について話せるようにしておくことは必須です。

研究計画書の作成と出願

大学院入試日から逆算して、遅くとも半年間には研究計画書の作成に着手しましょう。

研究計画書の内容をもとに研究への意欲や社会経験を研究に活かせる可能性を判断されることもあるため、しっかりと期間を確保して作成を進めておくことが大切です。

出願は入試の1ヶ月半ほど前までとなっていることが多いため、必要な提出書類を期日までに準備しておきます。

大学の卒業証明書や成績証明書など事前に取り寄せておくべきものもありますので、必要書類に漏れのないよう入念に確認しましょう。

また、正式な出願前に出願資格審査を実施している大学院もあります。

このとき、学業だけでなく社会人としての業績を証明するレポート、論文、証明書などの提出を求められることがあります。

受験に向けた勉強を進めておく

社会人大学院の入試では、小論文や口述試問を課されるケースがほとんどです。

いわゆる受験勉強というよりは、大学院で取り組みたい研究テーマに関する基礎的な素養や社会人としての業務経験があることを確認するためのものです。

ただし、受験する以上は試験に向けた準備をしっかりと行い、勉強しておく必要があります。

志望する大学院の過去問が入手できるようなら、必ず入手して出題内容を確認しておきましょう。

入試への対策方法について不明点があれば、研究室訪問時に教授に質問しておくようにしましょう。

社会人大学院の入試はそれほど合格基準が厳しくないことも多いものの、全く準備をしないまま受験すれば不合格になることも十分にあり得ます。

受験に向けた準備を決して怠ることなく、計画的に進めておきましょう。

社会人大学院に入る場合の注意点

社会人大学院は、仕事を続けながら研究に携わりたい人にとって大きなチャンスをもたらします。

ただし、仕事に加えて研究にも時間を割くことになるわけですから、注意しておかなくてはならない点もあります。

社会人大学院へ入るにあたって、注意しておくべき点について知っておきましょう。

平日夜間や土日の時間を研究に充てることになる

社会人大学院の授業は、平日夜間か土日に開催されます。

これまで仕事を終えて休んでいた時間帯や、余暇として過ごしていたはずの日を研究に充てることになります。

仕事で疲れているところへ、さらに研究のためにエネルギーを投じるわけですから、体力的にも大変なことであるのは間違いありません。

気持ちの面でも、研究に対する情熱を持ち続け、仕事と両立してやり遂げる決意を持つ必要があるでしょう。

このように、社会人大学院に通うことで仕事と研究以外に使える時間はかなり限られると覚悟しておかなくてはなりません。

趣味のための時間や家族と過ごす時間など、何らかの犠牲を払わなくてはならない場合もあるでしょう。

それでもなお、研究に邁進したいと思えるモチベーションが保てるかどうかが問われます。

講義の予習復習や論文執筆のための時間が必要

大学院での研究に必要な時間は、授業への出席だけではありません。

講義の予習復習や資料探し、必要な資料・論文の読み込みのための時間を確保することが求められます。

さらに、自分自身の論文執筆を進めなくてはなりませんので、集中して取り組むためのまとまった時間が必要です。

仕事の合間に細切れの時間を確保するのではなく、研究のためにしっかりと時間を取れるかどうかがポイントです。

必ずしも修了できるとは限らない

社会的大学院も通常の大学院と同様、修士論文や博士論文を提出し審査に合格することで修了となります。

所定の単位を取得していれば卒業できる大学とは異なります。

つまり、社会人大学院に通ったとしても全員が修了し学位を授与されるとは限りません。

仕事が忙しいなどさまざまな理由で思うように時間が取れず、研究の成果が上がらなければ修了できない可能性もあります。

社会人大学院に通うからには、研究成果をしっかりと上げる覚悟を持っておくことが求められます。

社会人大学院は仕事を続けながら研究に取り組みたい人にとって利用しやすい仕組みになっています。

ただし、社会人大学院に通うには一定以上の準備と、研究に取り組むための時間の確保が不可欠となります。

大学院で研究したいテーマがある社会人の皆さんは、社会人大学院に通うことも視野に入れて検討してみてはいかがでしょうか。