大学院を中退してしまったら? 就職はできる?

(読了時間:7分19秒)

大学院に入ったものの、必ずしも全員が修士課程や博士課程を修了できるわけではありません。

仮に修了する前に大学院を去るとなると、いわゆる「中退」という扱いになります。

大学院を中退した場合、その後の就職にどのような影響があるのでしょうか。

大学院中退の実態や中退するデメリットと併せて見ていきましょう。

大学院中退の実態

大学院を中退することの影響について解説する前に、まずは大学院中退の実態について確認しておきます。

実際に大学院を中退する人はどのくらいいるのでしょうか。

また、中退する理由としてはどのようなものが多いのでしょうか。

修士課程・博士課程それぞれのケースについてまとめました。

修士課程・博士課程の中退者数

平成26年に文部科学省が公表した調査結果によれば、1年間での修士課程中退者は5,121人、博士課程中退者は3,823人となっています。

国立・公立・私立の大学院で、それぞれの内訳は以下のようになっています。

《大学院中退者数》

国立 公立 私立 合計
修士課程 2,595人 284人 2,242人 5,121人
博士課程 2,407人 273人 1,143人 3,823人
(参考)学部 5,465人 1,816人 61,681人 70,367人

参考:学生の中途退学や休学等の状況について(平成26年9月25日)

修士課程では国公立と私立で中退者数はほぼ同じであるのに対して、博士課程になると国公立のほうが私立よりも中退者数が多いことが分かります。

大学(学部)の中退者が年間7万人を超えていることと比べると、大学院の中退者はそれほど多くないように見えます。

ただし、18歳人口のうち学士課程入学者が50.6%であるのに対して、22歳人口のうち修士課程入学者(社会人を除く)は5.5%と、学生数そのものが大学院のほうが少なくなっています。

参考:中央教育審議会大学分科会大学院部会(第81回) 資料5「大学院の現状を示す基本的なデータ」

つまり、大学院中退は決してめずらしいことではないと考えられます。

大学院を中退する主な理由

修士課程・博士課程のそれぞれの主な中退理由の内訳は下図のようになっています。

参考:学生の中途退学や休学等の状況について(平成26年9月25日)

修士課程・博士課程ともに、中退する理由として「就職」が高い割合となっています。

研究の道を途中で断念し、就職へと方向転換するケースが多いことが分かります。

また、大学院全体を通して経済的理由により中退する人が一定数いることから、大学院進学にあたって学費の準備を十分に考えておく必要があるといえるでしょう。

中退ではなく休学を選択する人もいる

大学院を中退する人がいる一方で、いったん「休学」するという選択をする人もいます。

上記と同様の調査結果によれば、年間の修士課程休学者数は5,863人、博士課程休学者は5,109人となっています。

休学した人の主な理由の内訳は以下の通りです。

修士課程・博士課程ともに休学理由として目立つのが「経済的理由」です。

研究を続けるために学費を納入する必要がありますが、何らかの経済的理由により納入を続けることが難しくなってしまうケースが多いことが分かります。

学費の支払いが難しくなった結果、休学から中退へと移行した人も一定数いたはずです。

こうしたことから、経済的な面は大学院進学にあたって慎重に考えておくべき検討事項といえるでしょう。

大学院を中退しても就職できる?

さまざまな事情から大学院を中退することになる場合もあるでしょう。

そこで気になるのが、大学院を中退しても就職できるのか?という点です。

一般的に「中退」という言葉はネガティブなイメージを伴います。

大学院中退はその後の就職にどの程度影響するのでしょうか。

また、大学院を中退すると就職する上でどのようなデメリットがあるのでしょうか。

既卒生として就職することは可能

一般的に、就職する際に正式な学歴として認められるのは最終学歴です。

つまり、採用担当者が見るのは最後に「卒業」した学校です。

大学院を中退した人の場合、最後に卒業したのは大学の学部となります。

よって、学歴の上では大学を卒業してから期間が空いた「既卒」と同じ扱いとなります。

逆の見方をすれば、既卒として就職活動に取り組む人もいるわけですから、大学院中退者が既卒生として就職することは可能です。

中には大学院で研究に取り組んだ経験を評価してくれる企業もあるかもしれませんが、一般的には既卒と同じ扱いになるものと考えておいたほうが無難でしょう。

既卒として就職活動を進めるのであれば、大学院中退という経歴によって就職が著しく不利になることはありません。

大学院中退の理由によっては就職で不利になることも

大学院中退という経歴そのものよりも、むしろ大学院での研究を途中で諦めることになった理由のほうが重要です。

企業の採用担当者は、大学院に進学した人に対して「ただ何となく進学したのではないか」「明確な目的を持たず大学院に入ったのでは?」といった厳しい目を向けていることがあります。

自分自身の将来についての計画やキャリア設計をしっかりと考えていなかったことで中退という結果を招いたのであれば、計画性や目的意識が厳しく問われることは覚悟しておく必要があります。

反対に、目的意識を持って進学したものの、就職して実社会で活躍したいという思いが勝るようになったのであれば、そのように考えるようになったきっかけや経緯をきちんと伝えればいいのです。

中退の理由が計画性の欠如や目的意識の希薄さに起因していると思われないように注意する必要があります。

大学院中退が就職に与えるデメリット

計画性や目的意識が問われる以外に、大学院中退が就職に与えるデメリットがあるとすれば、主に次の3点が考えられます。

大学院修了が条件の職種に応募できない場合がある

大学院を中退した時点で、大学院修了が必須条件となっている求人には応募できなくなります。

大学院修了が必須条件でない場合でも、研究職など高度な専門性を求められる職種で採用される可能性は残念ながら低くなるでしょう。

むしろ、大学卒業から期間が空いている既卒扱いとなりますので、大卒で働き始めた同級生よりも社会人としてのスタートが遅れているわけです。

大学院を中退する以上、大学院修了という学歴は就職活動で活用できないことを覚悟しておく必要があります。

教授による紹介や研究室の人脈を頼れなくなる

大学院を中退したことによって、大学院の教授による企業への推薦や研究室の人脈を活用した就職は事実上できないことになります。

中退した時点で、もう所属していた研究室の人間ではなくなってしまうからです。

大学院を修了していれば頼れるはずだったコネクションを活用できなくなりますので、就職活動は自力で進めるものと考えておきましょう。

教授や研究室を経由した紹介で就職することを計画していたのであれば、就職先の業種や職種を再検討する必要に迫られることも考えられます。

初任給は大卒と同水準となる場合がある

大学院に在籍していた期間がある分、就職する時点での年齢は大卒で就職した同級生よりも高くなっているはずです。

しかし、就職した場合は大卒(既卒)という扱いになりますので、初任給は大卒と同水準となる場合があると考えておきましょう。

「大学院で研究に取り組んだ経験がある」といったプライドを持ち続けていると、大卒と同じ扱いになることが理不尽に感じるかもしれません。

正式な学歴としては大学院を修了していないわけですから、大卒として就職するという事実を受け入れる必要があります。

大学院中退者が就職時に注意すべきこととは?

やむを得ない事情で大学院を中退することになった場合、就職時にいくつか注意しておくべきポイントがあります。

重要なことは、大学院中退という事実が就職において不利に働かないよう、ネガティブな影響を最小限に留めることです。

とくに次に挙げる2点については、就職活動を開始する際にしっかりと考えておき、できるだけ良い条件で就職できるよう気持ちを切り替えることが大切です。

大学院中退の理由をきちんと考えておく

一度は大学院に進学したものの、途中で就職するのは重大な決断といえます。

採用選考では、なぜ大学院を中退することにしたのか、ほぼ確実に問われると考えておいたほうがいいでしょう。

とくに重要なのは、就職という道を選んだのが「妥協」や「諦め」によるものではなく、考えた末に就職して実社会に出たいと思うようになった経緯が伝わることです。

はじめから中退することを想定して大学院に進学する人はまずいませんので、何かしら進学前に想定していた計画に狂いが生じたことは、採用担当者も見抜いているはずです。

その計画の狂いに直面したとき、自身の将来をしっかりと見据え、より適切な選択をした結果、就職という道を自らの意思で選び取ったことが伝わるように工夫しましょう。

「何となく就職のほうがいいと思った」といった曖昧な伝え方をするのは避けるべきです。

大学院中退の経緯が客観的に納得を得られるものとなるよう、できるだけ前向きな理由を考えておくことが大切です。

大学院での研究内容と関係性が薄い仕事を選ぶ

ときおり、大学院を中退することになっても、大学院で取り組んできた研究と関係性の高い仕事を就職先として選ぼうとする人がいます。

しかし、これはあまり得策とはいえません。

研究テーマと関連性の高い仕事であれば、すでに大学院を修了して第一線で活躍している人が数多くいることは想像に難くないからです。

どのような事情があったにせよ、大学院を修了していないという事実に変わりはありません。

就職時に中退という事実による影響を最小限に留めるには、大学院での研究内容と関係性の薄い仕事を選ぶようにしましょう。

ゼロからのスタートとなる場合がほとんどかもしれませんが、新たなスタートを切る覚悟で就職し、「大学院に在籍していた」というプライドとは縁を切る覚悟を持ってのぞむ必要があります。

大学院を中退しても、既卒として就職することは可能です。

ただし、大学院を修了した場合と同じ就職先に同等の待遇で迎えられるわけではないことは覚悟しておかなくてはなりません。

既卒としてゼロからスタートすることになりますが、悔しさをバネにして社会人としての新たな一歩を踏み出すつもりで就職活動にのぞみましょう。