コンプライアンスとは
気になるのは、「非常識ではあるが、法律に反するほどの行いではない」場合も、同様のコメントが聞かれること。
コンプライアンスとは、どういう意味なのでしょうか。
コンプライアンスとは
コンプライアンスとは、法律や条例などの法令、社会常識、道徳などを守ること。
特に、企業が、法令に従い、一般常識やモラルに沿った正しい事業運営を行うことを意味します。
多くの場合、コンプライアンスは、「法令順守」と訳されます。
注意したいのは、「法令順守」と言っても、コンプライアンスには、法令だけではなく、世間の人々の一般的な価値観に従う意味も含まれること。
そのため、例えば「飲食店が、客が手を付けなかった料理を、そのまま、次の客に料理として出した」など、違法ではないが非常識な対応も「コンプライアンスに反する」行為と称されます。
コンプライアンスには、法令とともに、常識や道徳も守る意味があることを覚えておきましょう。
コンプライアンスの語源
日本語のコンプライアンスの語源は、英語の「compliance」。
complianceは、「(要求・命令への)服従」を意味しており、「応える、従う」という意味の動詞「comply」から枝分かれした言葉です。
この「comply」の語源は、「満たす、完成させる」を指すラテン語の「complere」です。
語源をたどると、コンプライアンスが、「人々の期待に応える、要求を満たす」という意味合いを含んでいると分かります。
企業が、株主や地域社会の期待に応え、要求を満たすには、法令を守るだけでは不十分。
世間の価値観にかなった事業運営であってこそ、人々に喜んでもらえます。
語源を考えれば、コンプライアンスが、「法令に加え、常識や道徳に従う」ことを意味するのも、納得できます。
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コンプライアンスが広まった背景
コンプライアンスという言葉が広まったきっかけは、続発する企業の不祥事と、これを防ぐための法律の施行だったようです。
多発した企業の不祥事
1990年代のバブル経済崩壊以降、著名な企業による不祥事が相次ぎました。
不祥事の要因として指摘されたのが、企業の倫理や社会常識の欠如。
株主や消費者への責任より企業の利益優先、業界の常識と社会の常識の混同、経営者も関わった組織ぐるみの隠ぺい体質といった企業のあり様に、社会の厳しい声が高まりました。
コンプライアンスへの取り組み義務づけた法律の成立
こうした事態を受け、国は、企業に自主的に組織を正しく管理する仕組み「内部統制」をつくることを求めるようになりました。
この仕組みで達成すべき目的の一つに位置付けられたのがコンプライアンス。
その実現に向け、2006年以降、
・企業活動全般にわたるコンプライアンス体制の整備を大企業に義務づけた「会社法」
・正しい財務報告や横領などの不正防止のためのコンプライアンス体制づくりを上場企業に課した「J-SOX法」
などの法改正が進められていきました。
この一連の動きの中で、コンプライアンスという言葉も頻繁にマスコミなどで使用されるようになり、社会に認知され、浸透していったと考えられます。
企業のコンプライアンス体制
コンプライアンス関連の法整備が進み、コンプライアンスの重要性が再認識されるにつれ、コンプライアンスを徹底・管理するための「コンプライアンス体制」づくりが活発になっていきました。
ここからは、こうした企業のコンプライアンス体制について紹介していきます。
コンプライアンス体制の軽視がもたらすリスク
まず、コンプライアンス体制が不十分な企業の場合、どのようなリスクが高まるかをあらためて見てみましょう。
(1)職場規律の乱れ・優秀な人材の流出
コンプライアンス教育に力を入れず、問題に発展しそうな行動も見逃すような職場では、社員のモラルや社会的責任意識が低下し、職場の秩序も乱れがちになります。
コンプライアンス意識の高い人材は、このような企業から離れていきます。
(2)不祥事への対応の遅れ
トラブルの目の早期発見・是正手順が未整備な企業は、万一、不祥事が起きた際、これを隠ぺいしたり、発見や対応に手間取って深刻化したりなどしやすくなります。
(3)社会的評価の低下
(1)(2)から分かるように、コンプライアンス体制が十分でない企業は、重大な不祥事やミスの温床といえます。
そのため、取引先や株主、消費者や地域社会からの評価が下がり、相手にされなくなります。
これは、企業の根幹を揺るがす危機的状況につながりかねません。
これだけの高いリスクを防ぐためにも、企業は、コンプライアンス体制づくりに積極的に取り組む必要があるわけです。
コンプライアンス・プログラム
コンプライアンス体制は、コンプライアンスを実現・維持するための計画「コンプライアンス・プログラム」に沿って整えていきます。
プログラムの主要内容は、以下のようなものです。
(1)専任部署の設置
企業全体のコンプライアンスを統括する専任部署を置きます。
この部署が中心になって、次の(2)以下を進めます。
なお、コンプライアンスに関連した相談や、コンプライアンス違反行為通報の受け皿となる、「相談窓口」や「内部通報ホットライン」は、専任部署とは別に設ける場合もあります。
(2)企業の倫理方針、コンプライアンス・マニュアルなどの作成
社員が、コンプライアンスに反さないよう、判断・行動の指針や規準となる「倫理方針」、「コンプライアンス・マニュアル」などを作成します。
「倫理方針」とは、企業として法令はもとより、社会常識、道徳を順守することを宣言した文書。
「コンプライアンス・マニュアル」とは、具体的にどういう行為を避けるべきかを記したものです。
また、関連部署の権限と責任、不正があった場合の処分内容などを明らかにした「社内規定」、万一トラブルが発生した際の対応マニュアルなどもまとめます。
作成したものを全社員に配布し、活用する仕組みもつくります。
(3)リスクの洗い出しと対策立案
各部署ごとに、どのような行動や対応において、コンプライアンス違反が起きるリスクがあるかを見つけ出し、それぞれ対策を立てます。
マニュアルより、さらにもう一歩それぞれの部署の状況に踏み込んだリスク対策になります。
(4)社員教育・研修の実施
コンプライアンス教育・研修においては、主に、
・コンプライアンスの重要性
・個々の社員は倫理方針やコンプライアンス・マニュアルに沿ってどう行動すべきか
・万一、コンプライアンス・マニュアル違反や法令違反を起こした場合の処罰内容
などを共有します。
教育・研修はコンプライアンス体制が効果を発揮するために、もっとも重要な部分になります。
(5)監査・調査による点検
整備したコンプライアンス体制が、機能しているかどうかを定期的に点検します。
・内部通報ホットラインにおける、相談者のプライバシー保護や相談内容の記録・保管状況
・倫理方針やコンプライアンス・マニュアルに沿った行動についての社員アンケートや調査
などにより、コンプライアンスが重視されているか、潜在的トラブルの発見・是正が行われているかをチェックし、コンプライアンス体制の有効性を確認するのです。
社員の責任
効果的なコンプライアンス体制の実現・維持は、最終的に社員一人一人にかかってきます。
社員は、倫理方針やコンプライアンス・マニュアル、部署ごとのリスク対策をよく理解し、これらにかなった行動をとる責任があります。
そして、もう一つ求められるのが内部通報。
致命的な不祥事の発生、また、通報しなかったことで自らも加害者となるリスク回避のために、コンプライアンス違反に気づいたら、専任部署や「内部通報ホットライン」に連絡しましょう。
通報者の解雇など、通報を理由にした社員の不利益な扱いは、「公益通報者保護法」で禁止されています。
企業とそこで働く仲間、自分自身を守るという「社員の責任」として、堂々と通報したいところです。
この記事のまとめ
コンプライアンスとは、法令、常識や道徳などの順守のこと。
中でも、企業が、これらを守って活動することを指します。
多くの企業は、コンプライアンスを基本に事業運営するための仕組み「コンプライアンス体制」を整備しており、社員にこれに則った行動を求めています。
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