アニメ業界研究・仕事内容や求人状況、今後の動向を解説
アニメ業界とは
日本のアニメ産業は世界からも注目を集めており、今や日本の一大産業ともいわれています。
「クールジャパン政策」でもアニメ産業は非常に重要なポジションを占めており、今後も日本の産業を牽引する役割を担っていくことでしょう。
日本を代表するアニメ制作会社としては、「東映アニメーション」「マーベラス」「創通」などがあげられます。
しかし、なかには「長時間労働」など、労働環境が問題視されている企業が存在することも事実です。
過去には、アニメ制作会社で時間外労働が上限を超えて行われていたことが発覚し、労働基準監督署から是正勧告を受けたという事例もあります。
世界中でアニメ全体の需要が高まる中において、今後も質の高いアニメ作品を作っていくことが日本のアニメ業界には求められます。
大きな成長を見せるアニメ需要に追いつくためには安定的な人材確保が不可欠であり、今後はアニメーターをはじめとした「制作スタッフの働きやすさ」にも注力していく必要があるでしょう。
アニメ業界の役割
一昔前までは「アニメは娯楽の一つ」というイメージもあったアニメ産業ですが、今では子どもたちの成長にも欠かせないものという認識が広がっています。
アニメは子どもたちの感性を磨き、より豊かにすることが期待されているからです。
そして、現在日本のアニメは世界各国で翻訳されており、国籍を問わず幅広い世代の人が日本のアニメを楽しんでいます。
アニメだけでなく関連グッズなども人気を集めており、こうした関連グッズの売り上げもアニメ業界にとっては非常に重要な収益源です。
このように日本国内でのアニメ産業が活性化していくことで、国内全体の経済が活発になることが期待されています。
外国人からの人気が高い日本のアニメ業界は、まさに日本の経済成長を支える役割を担っており、今後も日本からのブーム創出に欠かせない存在だといえるでしょう。
20代で正社員への就職・転職
アニメ業界の企業の種類とビジネスモデル
制作委員会方式
従来のアニメはTV局や広告代理店などにスポンサーが付く形で、アニメの企画・制作がおこなわれていました。
また、アニメ制作会社が単独で企画から制作までをおこなうケースもありました。
しかし、1995年に放映された「新世紀エヴァンゲリオン」以降、アニメ制作は「製作委員会方式」が主流になっています。
製作委員会方式とはTV局や広告代理店だけでなく、おもちゃメーカーやパチンコメーカーなどが自社製品で版権を利用できる形で制作に携わる方式です。
これによってアニメはただ映像として楽しむだけでなく、グッズやその他のコンテンツとしても楽しめるようになっています。
メディアミックス戦略
製作委員会方式による変化は、ゲームやおもちゃ、パチンコなど、アニメを映像以外でも楽しめるようになっただけでではありません。
同じアニメ作品を漫画や映画などの別のメディアで楽しむことも、近年では積極的におこなわれています。
このように、一つのアニメを様々なメディアで展開していくことを「メディアミックス戦略」と呼びます。
原作はゲームでありながら、アニメ・漫画・映画になった「株式会社ポケモン(放映当初は任天堂)」の「ポケットモンスター」などは、メディアミックス戦略の代表的な成功例といえるでしょう。
OVA
アニメ作品のなかにはテレビ放送されないだけでなく、劇場版にもならない作品も数多く存在します。
こういった作品のことを「OVA(オリジナル・ビデオ・アニメ)」と呼びます。
OVAは非常にコアなファンに向けて作られたアニメであり認知度は高くありませんが、名作と評価される作品も多く、新たな人気を生み出しているのです。
このように、OVAは熱狂的なファンを対象とした作品を制作することで成功するビジネスモデルとして、アニメ業界では重要視されつつある戦略となっています。
アニメ配信
近年ではHuluを運営する「HJホールディングス」や「Netflix」などの動画配信会社において、自社でアニメを独占配信することも増えてきています。
各動画配信会社が日本のアニメ制作会社に依頼し、自社オリジナルのアニメを制作、そして自社サイトで配信をおこなっているのです。
このビジネスモデルは「1社による独占配信」であるため、テレビや他社で配信されることがありません。
また、通常のテレビでは放送できないような描写も、インターネット上での動画配信であれば規制を受けずに配信できることもあります。
このようなメリットから、原作への忠実さを求めるアニメファンを新たに取り込むことが可能となっています。
アニメ業界の職種
アニメ業界の仕事は幅広く、一つの作品を作り出すために、さまざまな職種の人たちの力が必要になります。
ここでは、アニメ業界の代表的な職種を4つ紹介していきます。
プロデューサー
プロデューサーとはアニメ制作全体の指揮をとる人です。
アニメ制作に関わるスタッフの確保、スタッフ全体のスケジュール管理や、仕事の割り振りなどをおこないます。
アニメーターが描いた絵をスタジオに持っていくなど、パイプとしての役割も担っています。
そのほか、予算内でアニメが作れるように予算の把握・管理をおこなうのもプロデューサーの仕事です。
アニメーター
アニメ作品の中で、動きのある部分の絵を描く人のことをアニメーターと呼びます。
まずはアニメの中での大まかな動きを決める原画を作成し、その原画をもとに複数枚の動画を作成します。
そしてそれらの動画をつなぎ合わせることで、キャラクターが動くように見せているのです。
新人アニメーターはまず動画制作から入り、原画、作画監督、総作画監督、監督の流れでキャリアを積んでいきます。
背景美術
風景や室内など、アニメ作品の「背景」の絵を描く仕事もアニメ制作には欠かせません。
ほとんどのアニメのシーンで動きのある絵だけでなく、背景画も必要です。
背景美術を担当する人はデッサン力や色彩感覚など、非常に高い美術技術が求められます。
背景美術は経験を積むことで、アニメの中の細かな美術設定をおこなう「美術監督」にキャリアアップすることも可能です。
撮影
アニメーターが描いた動画や、背景美術が制作した背景画をつなぎ合わせて映像にする仕事です。
簡単に説明すれば、「バラバラになっていた絵を動くようにする仕事」といえるでしょう。
さらに映像に音楽をつけたり、最近ではCGを使ってアニメが制作されることも多くなっています。
そのため、仕事を行う上ではパソコンスキルも必要になる職種です。
アニメ業界のやりがい・魅力
好きなことを仕事にできる
基本的にアニメ業界には「アニメ制作が好きな人」が集まります。
アニメそのものが好きな人であったり、絵を描くことが得意な人にとっては非常に魅力的な環境といえるでしょう。
周りの人も同じようにアニメ制作に情熱をかけている人が多いので、そのような人にとっては居心地のよい環境でもあります。
その反面、アニメ業界では納期までに決められた仕事量をこなす必要があり、激務になることも珍しくありません。
そのため、働く動機が「ただアニメが好き」というだけではすぐに挫折してしまうはずです。
厳しく管理されたスケジュールの中で納期を守り抜くためにも、アニメ業界で働く上では「こんなアニメを世に出していきたい」といった強い信念も求められます。
自分の創造性を発揮できる
前述のとおりアニメ業界は激務になることも多いため、自分で何をすべきかを考え行動できる人が求められています。
逆にいえば、「人から指示されたことしかできない人」はアニメ業界で働くには不向きでしょう。
アニメを制作する過程で考えても、ただ指示されるままに仕事をおこなうだけでは良い作品を作ることはできません。
そのアニメの作風や時代の流行、世の中のニーズなどを自発的に考え、実行できる人がアニメ業界では重宝されているのです。
このように、アニメ業界は自分の創造性を発揮できる環境があり、「日頃から何かを作り出すことが好きな人」にはとくに向いている業界です。
「自分の創造性を発揮して活躍したい」と考える人であれば、やりがいを持って働くことができるでしょう。
アニメ業界の雰囲気
アニメ業界には好きなことを仕事にしている人たちが集まるため、居心地の良い職場環境であることが多いでしょう。
一方で、スケジュールなどの関係から激務になることも珍しくないため、それ耐えうる体力や強いモチベーションが求められます。
仕事のなかで孤独な作業にあたることも少なくありませんが、最終的にはチーム一丸となって一つのアニメを制作するため、作品が完了した時には達成感を分かち合う仲間もいます。
視聴者から「楽しかった」「面白かった」などのコメントをもらうことで、さらに仕事にやりがいを感じられるはずです。
また、日本のアニメが世界中から評価されていることもあり、アニメ制作に携わることで「世界で活躍している」という感覚が人によっては得られるでしょう。
以上のように、アニメ制作に強い信念をもって働ける人であれば、充実感を得られる場面は非常に多い業界です。
アニメ業界に就職するには
就職の状況
「アニメ好き」の学生は多く、そういった学生が真っ先に志望業界として挙げるアニメ業界は、就職先としても非常に人気が高いです。
求人の状況としては、大手アニメ会社の場合、新卒採用については毎年実施しているところがほとんどとなります。
募集職種は「アニメーター」「背景美術」「事務系」など、職種ごとに分けて採用がおこなわれている企業が多いようです。
職種によっては専門知識を持っていることが応募の条件となっていることもあるため、募集内容をよく確認しておく必要があります。
アニメ業界のなかでも大手企業についてはとくに倍率が高くなる傾向があるため、ただ「アニメが好き」というだけで内定を取ることは難しいと考えておきましょう。
就職に有利な学歴・大学学部
アニメ業界への就職で有利な学歴については、どの職種を受けるのかによっても変わってきます。
アニメーターや背景美術などの「実際にアニメを描く職種」であれば、当然その仕事をこなせる画力を持っていることが求められるため、専門学校や美術大学の出身者が採用されるケースが多いです。
一方、総合職や営業職などの事務系の職種については「学部・学科不問」としている企業がほとんどですが、「大卒以上」を条件としているアニメ会社が多く見られます。
このように、仕事内容によって求められる学歴やスキルは異なるため、アニメ業界への就職を考える人はその点も考慮して進学先を選ぶようにしましょう。
就職の志望動機で多いものは
アニメ業界を受ける学生は、「アニメが好き」「アニメ制作に携わりたい」という志望動機を伝える学生が非常に多いです。
ただし、「アニメが好き」であることはアニメ業界を受ける学生であれば「当たり前」と捉えられる可能性も高いため、違う視点から志望動機を考えることも必要になるでしょう。
学生によっては「今のアニメ業界の問題点」や「アニメに対する今後の社会のニーズ」などの部分に着目し、より切り込んだ内容の志望動機にすることで他の学生との違いを出しているケースもあります。
アニメ業界は学生の人気が高く応募者も殺到することから、平均的な内容の志望動機では面接官の記憶に残らないため、興味を持ってもらえるよう工夫することも大切です。
アニメ業界の転職状況
転職の状況
アニメ業界に属する企業では、新卒者を対象とした定期採用のほか、既卒者を対象とした中途採用も積極的に行われています。
とくに大手のアニメ会社では従業員数も多く、毎年一定数の定年退職者も出ることから安定的に求人が出ている状況です。
アニメーターなどの職種であれば専門スキルが求められますが、事務系や制作管理などの仕事の場合は未経験でも採用している企業が少なくありません。
求人サイトなどに加えて、各アニメ会社のホームページでも中途採用に関する情報が公開されていますので、こまめにチェックするようにしましょう。
転職の志望動機で多いものは
新卒の志望動機と同じように、「アニメ制作に関わる仕事がしたい」といった理由で志望する人が多いです。
アニメ業界に関わらず、中途採用の志望動機では「これまでのキャリアがどう仕事に活かせるのか」がとくに重要視されます。
そのため、アニメ業界以外の会社から転職する場合でも、そこで培った知識やスキルがどのようにアニメ制作に活かせるのかをよく考えておきましょう。
転職で募集が多い職種
アニメ業界は中途採用でもさまざまな職種で募集を行なわれていますが、その中でもとくに募集が多いのが「アニメーター」「制作進行」などの職種です。
「制作進行」とはスタッフの手配やアニメーターからの原画回収、制作スケジュールの調整など、アニメ制作全体に関わる仕事であり、そこで経験を積んで「プロデューサー」などにステップアップしていくのが一般的です。
全体を調整する立場であり大変な仕事ですが、求人も多く出回っているため、アニメ業界で働きたい人にとってはチャンスの大きい職種となっています。
どんな経歴やスキルがあると転職しやすいか
アニメ業界へ転職する場合、制作進行や事務系の採用に関しては同じアニメ業界での業務経験は問われないケースがほとんどです。
ただし、学歴については基本的に「大卒以上」の学歴を応募条件としている会社が多いようです。
一方、アニメーターや背景美術などの職種については、専門的な知識やスキルがあることが前提での募集となっています。
アニメ業界の有名・人気企業紹介
東映アニメーション
1956年設立、連結売上高557億円、連結従業員数755名(2019年3月期)
数多くのヒット作品を生み出してきた、日本のアニメ業界の代表的な存在です。
映像配信だけでなく、キャラクタービジネスやショップ運営など幅広く事業を展開しています。
マーベラス
1997年設立、連結売上高268億円、連結従業員数528名(2019年3月期)
アニメ制作に加えてオンラインゲームやゲームソフトの企画・販売なども手がける、総合エンターテインメント企業です。
現在は「コンシューマ事業」「オンライン事業」「音楽映像事業」の3つを事業の柱としています。
創通
1965年設立、連結売上高169億円、連結従業員数92名(2018年8月期)
幅広い世代に人気な「機動戦士ガンダム」の制作を手がけたとして有名な大手企業です。
もともとは「東洋エージェンシー」という名称で設立され、2007年に現在の商号に変更されています。
アニメ業界の現状と課題・今後の展望
競争環境(国内・国外)
今、国内外問わずアニメ業界ではあまり激しい競争は起きていません。
それぞれのアニメ制作会社が独自の個性を活かした上でアニメ制作を行っているため、アニメ業界は他社とお互いに共存しやすい環境といえます。
一方で、アニメ業界では5社に1社は赤字経営ともいわれています。
倒産や休廃業、解散などで毎年多くのアニメ制作会社が市場から撤退している状況です。
市場撤退数は急激なスピードで年々増え続けており、これは他の業界にない特徴とされています。
非常に高いクオリティのアニメを制作していたとしても、赤字経営である会社は少なくないのです。
そのため、就職先として会社を選ぶ際には個々の経営状況を入念にチェックすることが大切です。
業界としての将来性
日本国内の主要産業としても注目され、クールジャパン政策を牽引する役割も担っているアニメ産業は、今後も堅調に需要が伸びていくことが予想されるでしょう。
このように国内外で日本のアニメ業界が注目を集めている一方で、アニメ業界には「ブラック企業が多い」という問題も残っています。
スタッフの育成に時間がかかる上に需要が急激に伸びたことから、アニメ制作が追いつかず常に人員不足の状態となってしまったことが、その要因と考えられています。
このような状況を改善すべく、スタッフたちの労働環境改善に尽力している会社も実際に出始めている状況です。
政府主導の「働き方改革」の後押しもあり、今後もこうした企業が増えることが予想されており、業界全体の働き方が変わっていくことが期待されています。
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