国立大学・私立大学の授業料免除の制度を解説
これまで、進学する意欲がある生徒であっても、経済的な事由により進学を断念せざるを得ないケースが見られました。
しかし、大学教育の無償化制度により授業料を減免できたり、奨学金を受けられたりといった施策により、大学に進学できる人が増えると見られています。
そこで、国立大学・私立大学それぞれの授業料の免除制度について確認しておきましょう。
大学の授業料免除制度とは?
大学無償化と言っても、大学進学にあたって必要な費用が必ずしも全額免除になるわけではありません。
大学の授業料免除制度は「授業料等減免制度の創設」と「給付型奨学金の支給の拡充」の2つから成っています。
それぞれ対象となる学校の種類や世帯収入などに制限がありますので、どのようなケースで減免や支給の対象となるのか、よく確認しておく必要があります。
授業料等減免制度の基準と減免額
まず、大学無償化の対象となる学校は大学・短期大学・高等専門学校・専門学校となっています。
無償化の対象となる学生は、世帯年収が380万円以下の家庭に限られています。
さらに、資産についても生計維持者が1人の場合は1,250万円未満、2人の場合は2,000万円未満の家庭の場合、大学無償化制度の対象となります。
より具体的には、市町村税の所得割額によって下記の区分が設けられており、全額免除となる場合は実質的に世帯年収およそ270万円未満であることが条件となります。
市町村税の所得割の課税業純額×6%-(調整控除の額+税額調整額)
第Ⅰ区分(標準額の支援) 100円未満
第Ⅱ区分(標準額の2/3支援) 100円以上~25,6000円未満
第Ⅲ区分(標準額の1/3支援) 25,600円以上~51,300円未満
標準額の支援とは全額免除のことで、国立大学の場合であれば全額免除となります。
(文科省Webサイトより)
https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/hutankeigen/index.htm
給付型奨学金の支給基準を緩和
奨学金には貸与型(返済が必要)と給付型(返済が不要)の2種類があります。
従来、奨学金には貸与型しか存在しませんでしたが、2017年度より給付型奨学金の制度が始まり、最大で年額48万円の給付を受けられるようになっていました。
今回の制度改定によってこの給付型奨学金が拡充され、より多くの学生が給付の対象となります。
具体的には、住民税非課税世帯であれば国公立大で自宅生約35万円、自宅外生約80万円、私立は自宅生約46万円、自宅外生約91万円の給付が受けられます。
(文科省Webサイトより)
https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/hutankeigen/index.htm
進学先によっては給付金額が最大670万円に
上の表にある通り、給付型奨学金は進学先の学校の種類とどこから通うかによって給付基準が異なります。
もともと大学無償化は、経済的事由によって進学が困難な学生を支援することが目的の制度ですので、経済的負担が大きくなる場合ほど給付金額も高くなる仕組みになっているからです。
最も給付金額が高い組み合わせは、私立大学へ進学し自宅外から通う場合で、授業料減免と給付型奨学金を合計すると在学中に約670万円の支援を受けられることになります。
国立大学の授業料免除制度
国立大学に通う場合の授業料減免額としては、入学金28万円、授業料54万円が上限となっています。
上限額まで支給された場合、入学金・授業料とも100%まかなうことができる場合もありますので、文字通り「無償」で大学に通える可能性もあります。
このように、国立大学の場合は私立大学と比べて減免額としては小さいものの、もともと私立大学よりも授業料が少なくて済むことから、授業料減免制度の恩恵により無償化や無償化に近い状態を実現することができるのです。
授業料免除の学力基準
授業料免除が適用されるのは、家計だけが基準になっているわけではありません。
公的な支援を受けて大学に通うわけですから、学生本人に学習意欲があり、かつ一定以上の学力を有していることが条件となります。
高校2年次までの評定平均値が3.5以上あれば、高校における進路指導において進学や学習に対する意欲を見た上で支援が決定することになります。
評定平均が3.5未満の場合、文科省は「学力だけで否定的な判断をせず、レポート等で本人の学修意欲を確認」することを推奨しています。
よって、授業料減免の対象となるには基本的には高校在学中の成績が影響するものの、この基準に届いていない場合も絶対に支援が受けられないわけではないと考えていいでしょう。
授業料免除の家計基準
国立大学の授業料免除の家計基準は、次の計算式で求められます。
家計評価額=総所得金額ー特別控除額ー収入基準額
家計評価額が0円以下になった場合、免除の対象となります。
特別控除額として、大学に自宅通学している場合は28万円、自宅外通学の場合は72万円が控除されます。
収入基準額は世帯に属する人数によって定められており、大学によって異なる基準を採用しているケースもありますが、原則として次の額が基準となっています。
世帯人数 | 全額免除 | 半額免除 |
1人 | 880,000円 | 1,670,000円 |
2人 | 1,400,000円 | 2,660,000円 |
3人 | 1,620,000円 | 3,060,000円 |
4人 | 1,750,000円 | 3,340,000円 |
5人 | 1,890,000円 | 3,600,000円 |
6人 | 1,990,000円 | 3,780,000円 |
7人 | 2,070,000円 | 3,950,000円 |
授業料免除額の計算例
3人家族(父:年収600万円・総所得金額358万円、母:専業主婦、本人)、自宅外通学の場合
(全額控除の家計評価額)358万円−72万円−162万円=124万円
(半額控除の家計評価額)358万円−72万円−306万円=−20万円
0円を下回っているのは半額控除の場合の家計評価額であることから、半額免除の対象となります。
よって、この家庭では年間で授業料27万円が免除されることになります。
20代で正社員への就職・転職
私立大学の授業料免除制度
私立大学については、大学ごとに減免を受けられるかどうかが定められています。
基本的には、大学の経営に問題がなく、大幅な定員割れなどを起こしていないことが条件となっています。
志望校が免除制度の対象となっているかどうかは、文科省のWebサイトで確認しておく必要があります。
参考:修学支援の対象機関となる大学等(確認大学等)について
https://www.mext.go.jp/content/000021307.pdf
授業料免除の家計基準と計算例
私立大学においても、国立大学の場合と同様に家計評価額を算出し、0円以下となっていれば支援の対象となります。
一例として、年収370万円世帯の者が自宅外から私立大学に通う場合の減免額を挙げます。
減免額として、入学金9万円、学費23万円が免除されます。
加えて給付型奨学金を申請することにより、およそ30万円受け取ることも可能です。
学費の減免額は4年間の合計で92万円、給付金は120万円となります。
この記事のまとめ
大学の授業料免除制度によって、これまで経済的な事由で進学を断念していた世帯でも大学に通えるようになる可能性があります。
ただし、免除制度はあくまで大学で学ぶ意欲がある学生を対象としたものです。
2年次以降は学業成績をはじめ、学修意欲が問われる審査が入りますので、免除制度を利用する以上は大学入学後も意欲をもって学び続けることが必須となります。
30秒でわかる!転職サービス診断
-
20代・第二新卒・既卒の転職支援サービス:Re就活エージェント(PR)
-
未経験OK! IT・Web業界に特化:マイナビITエージェント(PR)