「カニバリ」とは

「共喰い」という意味をもつ「カニバリ」。

なんとなく恐ろしい響きをもつ言葉ですが、ビジネスの場ではよく使われます。一体どのような意味なのか詳しく見ていきましょう。





「カニバリ」の意味

「カニバリ」とは英語の「カニバリゼーション」(cannibalization)の略語です。

動物の世界での「共喰い」という意味が元になり、マーケティング用語として同じ会社の製品同士が競合することによって、別の商品の売り上げを奪ってしまうということを「カニバリ」と言うようになりました。

「カニバリ」のシチュエーションと会話例 

たとえば自動車会社が新しい車を販売することで、今まで売れていた別の車が売れなくなってしまったような場合に、「あの新車の発売でカニバリが起きてしまった」というように使います。

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「カニバリ」の具体例 

会社はさらに売り上げを伸ばすために、次々に新製品を販売することが普通です。

たとえばビール会社が、ビールより低価格な発泡酒を発売したら、単純に考えると、ビールを飲む人の他にも発泡酒を飲む人も増えて会社全体の利益がもっと上がると思いますよね。

ところが実際の所、会社全体の売り上げが下がってしまったのです。

その理由はビールを飲む人が「ビールじゃなければダメ」という人ばかりではないからです。

多くの人は「発泡酒とビールは似たようなものだし、発泡酒の方が安いからお得」とビールを買わなくなって、発泡酒を買うようになってしまったことにあります。

つまりこの場合、発泡酒とビールが「カニバリ」を起こしたということになります。発泡酒とビールが共喰いを起こしてビールの売上を食べてしまったということです。

このようにターゲットとなる人が重なる可能性がある場合「カニバリ」を起こす確立が高まります。

新製品を出す場合はこのような「カニバリ」を起こさないよう、慎重にプランをたてなければなりません。

「キリン」のとった戦略

「キリン」では「のどごし生」という商品を発売するにあたって、このようなことがおこらない戦略を立てました。

キリンで一番売れている発泡酒、「端麗」とカニバリを起こす可能性が大きかったからです。しかし結果としては「端麗」から「のどごし生」へ移った人は少なくて済みました。

その理由としては「端麗」が求める、キレや爽快さとはことなり、「のどごし生」は名前の通り、のどごしやうまさを追求したことがあげられます。

麦芽の使用率を減らして作る発泡酒に対して、「のどごし生」はホップ、糖類、大豆たんぱくなどを主原料に、発泡酒と違ったアプローチで、生ビール本来のうまさを再現したのです。

そこで爽やかさもとめる「端麗」と需要が重ならなかったということが大きな要因です。

さらにキリンは、すでに販売されている「端麗アルファ」や「端麗グリーンラベル」といった、より健康志向の人向けの端麗シリーズの味や糖質を見直し、品質をさらに向上させて差別化を図ったのです。

このような慎重な戦略を行うことで「のどごし生」はビール市場の中でも「新ジャンルのビール」としての地位を獲得しました。

わざと「カニバリ」をおこす戦略

「カニバリ」はマイナス面だけでなく上手に利用すると自社の利益につながることもあるため、あえて「カニバリ」をおこすマーケティング戦略もあります。

たとえば自動車会社などでは、自社の中で低価格から高価格まで、さまざまな個性を持ったブランドを作り、その中で「カニバリ」をおこしながらも、自社の中で買い替えを行えるようにするという作戦です。

たとえばいろいろなモデルを出していても、低価格のモデルの中でも上位のモデルや高価格のモデルでの下のモデルではあまり値段やスペックが変わらないように作られています。

このようにすることによって、少しお給料が上がったから上位モデルを買ってみよう、と考える人も出てきます。

たとえ車のモデル同士で「カニバリ」を起こしたとしても、このような仕組みを作ることで一つの車に飽きても他の会社に乗り換える人が少なくなるので、車業界の中で優位に立てるようになるという戦略です。

「カニバリ」をわざとおこす戦略ができるのは作る製品にもよります。

たとえばどんな会社の製品でも気軽に買えてすぐに消費してしまうビールなどの食品業界とは違ったシステムだからできることとも言えますね。

この記事のまとめ

「カニバリ」は大手のメーカでは多く起こりうる状況です。

その「カニバリ」に対してどのような戦略を考えるかはその企業にとってとても重要な仕事の一つなのです。

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