リーンスタートアップとは

商品やサービスの開発にはさまざまな方法論がありますが、そのひとつである「リーンスタートアップ」は、日本のみならず世界中で注目を集める手法です。

余分な時間やコストをかけずに、市場に求められる商品を開発するリーンスタートアップ。

それまで一般的とされてきた伝統的な手法とは異なる特徴を持っています。

リーンスタートアップでは、どのように新商品・サービスを開発していくのでしょうか。





リーンスタートアップとは

リーンスタートアップは、アメリカのシリコンバレーから世界へと広がった、起業における方法論のひとつです。

提唱したのはエンジニア出身の起業家、エリック・リース氏。

イェール大学在籍中に1社目のスタートアップを経験し、その後も連続して事業を立ち上げる、シリアルアントレプレナーです。

リーンスタートアップの意味

リーンスタートアップ(lean startup)の単語の意味が分かると、どのような方法論であるのかイメージがつきやすくなります。

leanは「無駄がない」「効率的な」という意味を持つ単語。

startupには「始動/立ち上げ」や「(事業を)始める」という意味があります。

日本ではstartupを「起業」や「ベンチャー企業」と訳すことが多く、そう理解している人も多いですが、本来の意味は少し異なります。

立ち上げから数年間で急成長を遂げ、その後も継続して成長を続ける(続けられる)。

そのような企業を指して、startupと呼んでいます。

つまり、「無駄なく起業し、成長を実現するための方法」が、リーンスタートアップの意味するところということでしょう。

リーンスタートアップの由来は「トヨタ生産方式」

製造業では「lean生産方式」と呼ばれる生産技術が古くから存在しています。

トヨタの生産方式はあまりにも有名ですが、必要なモノを、必要なときに、必要な分だけ調達・供給することをJust in time(ジャスト イン タイム)と呼びます。

これによって「ムダ、ムラ、ムリ」をなくし、生産効率の向上を実現します。

アメリカではこの方式をLean Manufacturing(リーン マニュファクチャリング)と呼んでおり、事業開発の手法として応用したことからリーンスタートアップと名づけられました。

リーンスタートアップのプロセス

事業開発にはさまざまな手法がありますが、リーンスタートアップには、事業開発のプロセスに他の手法との大きな違いがみられます。

リーンスタートアップのプロセスは「構築(build)」「計測(measure)」「学習(learn)」の3つです。

各フェーズをひと通り行うのではなく、循環させることが重要なポイント。

その過程から得られたvalidated learning(検証によって得た有効な学び)を事業開発に取り入れていきます。

build(構築)

ユーザーニーズの調査などから生まれた仮説をもとに商品・サービスのアイデアを形にします。

ここでは最小限の機能を有したレベルのものを、最短の時間で開発することが大切。

これをMVP(minimum viable product)と呼び、日本語では「実用最小限の製品・サービス」と訳されています。

measure(計測)

アーリーアダプター(Early Adopters)層にMVPを提供し、実際に利用してもらいます。

毎回反応を計測していきますが、改良してサイクルを繰り返すごとにユーザーの反応がどのように変化しているのかを定量的に計測することが重要です。

なぜなら成長の見込める商品・サービスかどうかを判断する材料として、この計測結果が用いられるからです。

learn(学習)

計測データをもとに商品・サービスの改良点を確認し、MVPを改良してサイクルをまわします。

ある程度の計測データが集まった時点で最初に立てた仮説の検証を行い、開発の継続が適正かどうかを判断します。

仮説が正しいと判断した場合には、validated learningが行われたものとして、拡大するための準備に入ります。

検証によって仮説の正しさが証明されたということは、商品・サービスが市場に受け入れられ、人々に支持されるということを意味しています。

一方、計測を重ねた結果、仮説が正しくないと判断されることもあります。

その場合リーンスタートアップにはピボット(方向転換)という概念があり、ビジネスモデルを改めて考え直します。

ピボットする場合も同様に、構築・計測・学習のサイクルを繰り返して仮説の検証を行います。

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MVPと顧客開発

プロセスを確認してお気づきの方が多いかもしれませんが、リーンスタートアップでは最初から作りこんだ商品やサービスを世の中に送り出すことを目指しません。

その理由は、顧客が求める商品やサービスを開発するためです。

仮説をもとに作ったMVPに顧客からのフィードバックを反映させていくことで、需要のある商品を作り上げていくのです。

MVPは事業コンセプトを形にする必要最低限の機能のみを持った商品・サービスのため、検証を行うには不十分ではないかと不安に思うことがあるかもしれません。

しかしアーリーアダプターは新しいものへの受容力が大きい人たちであり、商品の開発に対して肯定的な姿勢を持つことがほとんど。

むしろ応援してくれるケースのほうが多いといわれています。

検証を重ねるうちに、どのような顧客であれば受け入れられるのか、顧客像も明らかになるでしょう。

開発側の思い込みで立てた仮説をもとに完璧に作りこんだ商品が、実は顧客の望む商品ではなかったということは往々にしてあります。

開発にかけた時間と労力、経済的なコストがすべて無駄になることを考えれば、どちらがより大きなリスクであるかが分かるのではないでしょうか。

MVPと顧客開発の考え方を取り入れ、この無駄を最小限に押さえて事業を開発・成功へと導くのがリーンスタートアップの特徴です。

MVPと学習を重要視する背景

シリコンバレーにおける起業は、イノベーションというキーワードとともに語られることが多くあります。

また起業家のビジョンや発想によってイノベーションがもたらされると考えることは一般的で、その概念に基づいた事業開発プロセスが伝統的な手法でもあります。

ところがリーンスタートアップを提唱したエリック・リース氏はこの考えと逆の立場をとっています。

市場に求められる商品を開発するには、消費者が価値を感じるものを発見することが必要ですが、現代はそれが非常に難しい時代だと考えているからです。

「何を作るべきか」かよりも「どのようにして形にするか」を大切にするプロセスで開発を行えば、消費者が欲するものは自ずと浮き彫りになります。

そしてそれが開発できれば、世の中に受け入れられる商品になるというわけです。

リーンスタートアップがアメリカをはじめ世界で注目を集め、実践を試みる企業が多い理由のひとつには、エリック・リース氏の問題提起に共感する人々が多いからなのかもしれません。

この記事のまとめ

リーンスタートアップでは、商品やサービスを市場に投入する前に学習を繰り返します。

リリースしたあとも構築・計測・学習のサイクルは続き、小さな改善をいくつも実施することでより多くの人に愛されるサービスへと進化を遂げていきます。

学習の結果「仮説が間違っていた」という答えにいきつく可能性もあり、事業開発手法としてはとてもユニークであるといえるでしょう。

リーンスタートアップがビジネスを成功させるためのプロセスに着目し、市場に求められる商品・サービスを開発する手法だからこそ、作り手側の思い込みが排除される仕組みが備わっているのです。

学習を行うためにはある程度の時間が必要ではありますが、商品やサービスを開発する機会があればぜひ試してみてはいかがでしょうか。

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