LTVとは
これは企業のマーケティングや広告業界などでよく使われる言葉です。
LTVは企業が売上を考えるうえで欠かせない概念です。
売上を拡大する手法のひとつとして、顧客(=お客さま)との継続取引に力を入れています。
その指標にLTVが取り入れられているようですが、LTVとはどのような意味や目的を持つ言葉なのでしょうか。
LTVとは
LTVとはライフタイムバリューの略で、英単語の頭文字(Lifeの「L」、Timeの「T」、Valueの「V」)をとってLTVと呼ばれています。
日本語では「顧客生涯価値」と訳され、企業の顧客が企業との取引を開始してから終了するまでの間に、その取引によって生じる利益のことを意味します。
取引開始から終了までのことを「顧客ライフサイクル」といい、そのライフサイクルが長ければ長いほど、企業にもたらされる利益も大きくなります。
顧客獲得や顧客維持に関わるビジネスパーソンの間でよく使われるマーケティング用語ですが、LTVが注目されるようになった背景にはビジネス環境の変化が影響しているといわれています。
顧客重視の環境で注目されたLTV
日本経済が右肩上がりで成長を続けていた時代には、ヒット商品と呼ばれる人気商品が数多くありました。
経済的に豊かになったことで消費が拡大したのはもちろんですが、技術の進歩や生活スタイルの変化などに合わせて、企業は新しい商品を次々と開発。
作った分だけ売れる時代でした。
ところがあらゆる商品が世の中に出尽くし、飽和状態になると価格競争が始まります。
商品の差別化も次第に難しくなり、新商品を開発しても思うように売れない…。
企業にとって厳しいビジネス環境へと市場が変化していきました。
その頃から開発体制を見直す企業が増加。
顧客が求める商品の開発や既存顧客との関係強化に注力するなど、顧客を重視するマーケティングへと戦略をシフトしていきました。
顧客との長い関係性の中で利益を高めていく手法が取り入れられ、その指標として注目されるようになったのが、LTVなのです。
【要注意】不動産用語のLTV
「LTV」は、実はマーケティング用語以外に不動産用語としても知られています。
しかし、この2つは英語表記の略語が同じというだけ。
意味はまったく違うため、混乱しないように気をつけましょう。
LTVの具体例と計算方法
企業にとって重要な指標「LTV」は概念として存在しているだけではなく、実際に数値にすることができます。
計算式や具体例をみながら、理解を深めていきましょう。
LTVの計算式
LTVを計算するにはいくつかの計算式が用いられますが、ここでは代表的な計算式を1つご紹介します。
LTV(顧客生涯価値)=「購買単価」×「年間購買頻度」×「購買年数(継続期間)」
※各要素には平均値を用います
この計算式で導かれた数値が、顧客の生涯価値=企業にもたらす利益です。
計算式をみると、各要素の数字が大きくなればLTVも大きくなることが分かるでしょう。
企業は収益を高めるために、さまざまな工夫をしながらLTVの上昇を目指すのです。
LTVの具体例
LTVの計算式を理解したところで、より具体的にイメージするために例題を用いてLTVの計算をしてみましょう。
ここではスマートフォンの契約を例にLTVを確認していきます。
実際の携帯電話の契約はプランや割引などが複雑なため、シンプルに計算できるようあらかじめ条件を設定しています。
設定
企業:通信事業者(docomoやauなど)
顧客:初めてスマートフォンを契約する人
顧客が支払う料金:毎月の通信料(月額6,000円)※端末はレンタルで0円
企業の利益:20%
契約期間:2年間
計算式
LTV(顧客生涯価値)=購買あたりの収益(A)×年間購買頻度(B)×購買年数(C)
各要素を整理し、計算式に数字を当てはめてみましょう。
(A)購買あたりの収益=6,000円×20%(1,200円)
(B)年間購買頻度=12回(12カ月)
(C)購買年数(継続期間)=2年間
LTV(顧客生涯価値)=1,200円(A)× 12回(B)× 2年間(C)
LTV(顧客生涯価値)=28,800円
※実際の計算では、顧客全体の平均値から割り出すことが一般的です
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LTVの向上に必要な改善ポイント
LTVの計算方法や、各要素を向上させることが企業にとって重要なことは分かりましたが、要素の向上には何をすればよいのでしょうか。
そのポイントを確認しましょう。
LTVを構成する各要素を改善する
LTVの計算式を分解すると、各要素の掛け合わせであることが分かります。
つまり、各要素を最大化することが、LTVの最大化につながるということです。
そのため改善には、以下の3つに取り組むことが必要です。
(1)購買1回あたりの利益を上げる(単価を上げる)
(2)年間購買頻度を上げる
(3)購買年数(継続期間)を伸ばす
新規獲得と維持費用
LTVを数値化するとLTVの変化が可視化されます。
それによって、顧客との関係性が売上にどのような影響を与えているのかが分かるようになります。
ほかにも、顧客を獲得するための費用や維持費が適切かどうかの指標として活用することができます。
例えば、新規顧客を獲得するために広告投資をする場合には、予算に対してどの程度獲得できるかを想定します。
その際、1人あたりの獲得単価がLTVを上回っていたら赤字です。
当然、取引継続のためにかける予算も同様。
LTVを高めるためには、獲得単価と維持費用を下げる工夫が必要です。
広告予算の設計でも活用されるLTV
LTVは、企業で広告予算を考える際にもよく利用されます。
特にインターネット広告では、自社サイトへの誘導など成果に対してのみ支払う形態の広告が数多くあります。
そのため広告予算の設計や費用が適正かどうかの判断、また宣伝活動の効果を測定するためにもLTVが利用されています。
なぜLTVを用いるほうが最適な予算を考えられるのか、ネットショッピングサイトの具体例を用いて考えてみましょう。
利益で広告予算を考える場合
購買単価から顧客の獲得単価を導きます。
<設定>
購買単価:5,000円
1商品あたりの利益:40%
<計算式>
顧客1人あたりの獲得予算=5,000円×40%
顧客1人あたりの獲得予算=2,000円
⇒獲得単価2,000円以下で予算を設計する
LTVの概念を用いて広告予算を考える場合
顧客のLTVから顧客の獲得単価を導きます。一度きりで購入を継続しない人もいるため、リピート率50%、年間購入頻度は2回の設定で計算してみましょう。
<設定>
購買単価:5,000円
リピート率:50%
年間購買頻度平均:2回
購買年数(継続期間):1年間
1商品あたりの利益:40%
<計算式>
顧客1人あたりの獲得予算=(5,000円+(5,000円×50%))×40%
顧客1人あたりの獲得予算=3,000円
⇒獲得単価3,000円以下で予算を設計する
上記のように、一度きりの購買を想定した予算とLTVを用いた予算では差があることが分かります。
違いはわずか1,000円ですが、仮に月間の新規獲得目標が100名であれば、予算の設定が100,000円(1,000円×100名)も変わります。
人生で一度しか購入しない商品の場合以外では、広告の予算設計にLTVを用いることが重要であることが分かるでしょう。
この記事のまとめ
LTVは、顧客が企業にもたらす収益価値です。
ライフタイムバリューという言葉の通り、1回の取引ではなく、取引関係が続く間の価値を意味します。
企業はその価値を高めるために、既存顧客へのサービス向上や契約プランの工夫など関係性の強化に力を入れています。
消費者の立場からみると、1年間で利用する頻度や累積金額が高いものは、それだけ自分にとって欠かせないものである可能性が高いということでもあります。
日常生活ではLTVを意識する機会が少ないかもしれませんが、ビジネスではよく用いられる概念ですので覚えておいて損はないでしょう。
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