臨床心理士と公認心理師の違い・現場ではどちらが評価される?
臨床心理士と公認心理師は、心の専門家の中でも代表的な資格です。
どちらかの資格を取得することで、医療・教育・産業・福祉・司法を中心とした業界で心理職として勤務することができます。
実は、この2つの資格は心の専門家としては同じですが、大きな違いがあることを知っていますか。
今回は各資格の違いと、筆者が現場で感じる実際の様子について紹介するので、心理職を目指す人はぜひ参考にしてみてください。
臨床心理士と公認心理師とは
臨床心理士と公認心理師はどちらも心の専門家として有名な資格です。
病院やメンタルクリニック、一般企業などでの心理カウンセラーや学校でのスクールカウンセラー、児童相談所や裁判所・少年院などで心理職として働くには、どちらかの資格が必要になります。
2つの資格の主な業務は下記の通りです。
②カウンセリング…心の悩みや問題をもつ人に対して、言葉や絵、遊びなどを通して援助すること
③地域援助…学校や職場などの地域社会に対して、心の悩みや問題の専門知識を伝えるなど予防活動を行うこと
臨床心理士・公認心理師は心の援助者として、心の悩みや問題をもつ当事者だけでなく家族など関係者への支援も行います。
また、カウンセリングの理論やエビデンス(有効性)を研究したり、新しい心理検査を作ったりして心の理解に努めるための研究も仕事の一環です。
資格の歴史としては臨床心理士の方が長く、公認心理師は2020年に新しく誕生した資格です。
どちらが良いとは甲乙つけ難く、心理職を目指すならどちらも取得して損がないといえます。
2つ資格の違い
臨床心理士と公認心理師はどちらも心の専門家であり、仕事の内容も似通っていますが、当然違いがあります。
これから資格の取得を考えるための参考にしてみてください。
資格の種類
臨床心理士は民間資格、公認心理師は国家資格という最大の違いがあります。
資格の種類が違うということは、臨床心理士は民間が認定しており、公認心理師は国が認定しているという訳です。
臨床心理士の方が歴史は古く、これまでの心理職はほぼ臨床心理士が担う状態でしたが、将来的には国家資格である公認心理師の知名度や活躍の場が増すことが考えられます。
受験条件
資格の種類に次いで大きな違いとして、受験条件の違いが挙げられます。
臨床心理士の場合、基本的には臨床心理士資格認定協会が定めた、心理学の指定大学院を修了することで臨床心理士の受験資格を得ることができます。
公認心理師の場合は、指定されたカリキュラムをクリアする必要があり、心理学を学べる大学卒+実務経験というパターンでも受験が可能です。
もちろん、大学院を修了したり、専門機関を卒業したりするパターンもあります。
しかし、「大卒でも国家資格取れるのか!」と思う人も大勢いると思いますが、実際は甘くありません。
実務経験として認められる施設は現状少なく、実習生活は2年以上に渡ります。
公認心理師の資格取得は、基本的には臨床心理士と同じで指定大学院を修了する流れが一般的と言えるでしょう。
更新制度
資格の継続についても実は違いがあります。
臨床心理士は資格取得後、資格を保持し続けるためには5年ごとに更新する必要があります。
ただ申請すればいい訳ではなく、研修や学会への参加など専門家としての質の維持・向上を目的とした活動が大切になります。
一方、公認心理師の場合は一度資格を取得すれば更新の必要はありません。
「更新がない=ラク」という考えがあるかもしれませんが、心の専門家としての自分の能力を維持・向上させるために勉強は欠かせないでしょう。
臨床心理士・公認心理師は更新の有無に限らず、日々訓練と勉強が必要な資格と言えます。
臨床心理士・公認心理師の現場での扱い・評価
臨床心理士・公認心理師はどちらも心の専門家で似通っている部分も多いですが、今回説明したように大きな違いもあります。
2つの資格の実際の現場での扱いですが、個人的には大きな差を感じません。
国家資格である公認心理師の方が一般的に知られていること、信頼されやすいこと、求人情報で公認心理師と記載されることが増えたことがあります。
しかし、心理職の中では歴史があり、十分な訓練を受けている臨床心理士の方が良質に捉えられる場面も多いです。
実際には2つの資格を取得する人が多いため、扱いに差がない印象もあります。
公認心理師が新しい資格ということもあり、今後扱いに差が出る可能性も考えられます。
臨床心理士と公認心理師は、資格の性質的な違いはあれど、心の専門家として悩みや問題を抱える人たちを支援することに変わりはありません。
資格取得の難易度や労力、資格の質などを考慮しても、基本的には大学+大学院の6年の訓練・勉強を経て、2つの資格を取得することが望ましいでしょう。
資格の取得を目的にせず、有資格者として活動するために大学院へ進学し、たくさん心の勉強をしましょう。