特別支援学校教諭の専門性と一日の業務の流れ
悲しいことに、「特別支援学級や特別支援学校は落ちこぼれのいくとこ」「勉強はしない」「教員の仕事は障害児のお世話」という古い認識がいまだにあります。
しかし特別支援教育は「教育の原点」であり「最先端の知見に基づいて個に応じた指導支援」が行われている「スペシャルスクール」だと私は思っています。
特別支援学校教諭の専門性
特別支援学校教諭の仕事は一般校の教諭の仕事に加え、自立活動の指導に関する専門性が求められます。
自立活動とは、個々の児童生徒が障害に基づく困難を主体的に改善・克服していくための指導です。
児童生徒の実態把握・解釈をし、個別の長期・短期の視点で目標を設定、その目標を達成するための指導を実施します。
また、特別支援学校教諭の重要な仕事として、個別の指導計画の作成と活用があります。
発達が見取りにくく、ゆっくりな児童生徒が多いことや、複数人での指導支援が基本となることからも、個別の指導計画を基に共通理解をもって児童生徒への指導や支援を実現していく必要があります。
難しいけど、ここが面白い!
TT(ティーム・ティーチング)
一般校からきた教員は自分一人で学級経営や授業をすることが基本でTTの経験が少なく、これで悩んでいました。
特別支援学校では複数人での指導支援が基本です。
TTによる学習形態は多岐に渡るので、役割分担を明確にし、個別の指導計画や授業計画を基に共通理解をしておくことが必要です。
また、話し合いの際には他者の意見を受け入れる柔軟性を持つことや、聞くだけでなく自分の意見や考えを持ちそれらを相手に伝えることが重要です。
TTが上手くはまると児童生徒に効果的な指導が可能になるだけでなく、教員側もチームとしてのスキルアップや達成感も味わうことができます。
個に応じた指導や支援
「特別支援教育は教育の原点」と言われる所以です。
しかし、初学者や一般校から異動された先生は「何を教えればいいのかわからない」と悩んでいることが多かったように思います。
「よかれと思って」不必要な支援をしてしまう教員も少なくはありません。
基本の考え方を足掛かりにしっかり勉強し、児童生徒の実態把握をし、各種科学的知見・理論を基に指導仮説を立て、実際に指導支援を行い、それがビタッと児童生徒にはまった時の快感は言葉に表せないくらい最高です。
知れば知るほど面白くなるのが、特別支援教育です。
ぜひ、沼にはまってみてください。
特別支援学校教諭の一日の流れ(一例)
7:30 出勤
・メールや予定等の確認
・欠席等の連絡対応
・当日の授業準備
・教室整備
その日の気温や児童生徒の実態に応じて教室温度や教材教具等の環境を整備していました。
・校務分掌の仕事
私は体育部だったので、夏はプール、冬はスキーに関わる環境整備をしていました。
8:25 始業
・職員朝会
共通理解のもとで学校運営や児童生徒への支援ができるように準備するため、その日の予定や連絡事項、緊急性の高い事項についての話題を共有します。
会議の流れとしては、職員全体→学部→学級となります。私の学級は情報交換を日常的に行っていたので、朝の確認等は最低限の事項だけ短く行っていました。
8:45~ 児童生徒登校
・児童生徒の受け入れと情報交換
私の勤務していた学校は登校手段がスクールバスor保護者の送迎が主の学校だったので、始業後に児童生徒が登校してきていました。
・朝の支度
・朝の会
短時間の活動ですが、児童生徒の学習機会として特に力を入れて実施していました。集団と個のバランスを考えながら、個々の児童生徒の目標毎に役割や活動を設定していました。
9:25~ 午前の授業
・1~4限の授業
基本的にTT(ティームティーチング)で授業をします。
MTの場合は主になって授業を展開し、STになった場合は児童生徒への個別支援や役割に応じて授業に参加します。
・出張
センター的機能として、地域の一般校に出向いて教育相談を行うこともありました。
12:00 給食
・配膳
・給食
※全介助が必要な児童生徒には、食事介助をします。
※医療や外部専門家と連携しながら摂食に関する指導を行う場合もあります。
・歯磨き
※全介助で行ったり、仕上げ磨きを行ったりする場合もあります。
12:50~ 昼休み
児童生徒が安全に活動できるよう一緒に活動したり見守ったりします。
授業や休み時間の合間を見て、提出物の点検や連絡帳の記入をします。
13:25~ 午後の授業
・5~6限の授業
・帰りの支度
・帰りの会
15:00 下校
・下校指導
・保護者等との情報交換
15:15~16:00 休憩
・各々休憩
児童生徒の下校後に休憩時間が設定されていました。
休憩時間ですが、研修や会議、出張が設定されることもありました。
16:00 仕事
・職員会議
・外部機関との打ち合わせ
私は研修を企画する立場だったので、外部専門家に研修の依頼やそれに関わる打ち合わせをしていました。
・事務処理や雑務
・授業準備
・授業研究や個々の学習進捗の確認
児童生徒の実態や学習進捗を確認し、必要に応じて個別の指導計画を修正していました。
私は許可を取り自身の授業を録画していたので、それを見返して客観的に振り返りと次に向けて指導計画の修正等を行っていました。複数人で行う場合もありました。
・校務分掌に関する業務
担当分掌や役職により、業務量は人によって変わります。
・支援者会議各種
※一般校と比べ保護者や外部機関との会議も多いです。ケース会議やモニタリング会議など、個々の児童生徒について支援者が集まって会議があります。
・研修など
16:55 終業
・就業時間内に終わらなかった業務
19:00~21:00頃 退勤
卒業式は格別の感動
教員の醍醐味は児童生徒の成長に直に携われることです。
特別支援学校教員はその点において一般校の教員よりも喜びが大きい職種でもあります。
特に、卒業式。右も左も分からず入学・転入してきた児童生徒が卒業する時の姿は、それまでの出来事が走馬灯のように蘇ります。
「うまれてくれてありがとう」「出会えてよかった」「生きていてくれてうれしい」「しあわせにね」そんな気持ちが自然と湧いてきてしまいます。
1人ひとりの児童生徒や保護者の方と密に関わる場面が多いため、正直なところ一般校の卒業式よりも涙がこぼれます。