返報性の原理とは
この心の動きのことを「返報性の原理」といい、恋愛やビジネスでも活用することができる心理学のひとつです。
人が持つ感情の詳しい説明と、返報性の原理を利用したコミュニケーションのテクニックを見ていきましょう。
返報性の原理とは
人間の心理には、借りができるとそのお返しをしようとする傾向があるとされており、そのことを心理学では「返報性の原理」といいます。
この返報性の原理を利用した有名な交渉術に「ドア・イン・ザ・フェイス・テクニック」と呼ばれるものがあります。
交渉相手にまず大きな要求を提示し、断られたあとに小さな要求を出すことで譲歩を引き出すテクニックです。
交渉相手は一度断ったことを「借り」と感じるため、それを返すためにあとから提示された小さい要求を受け入れやすくなります。
返報性の原理では、何を返そうとするかによって「譲歩の返報性」「好意の返報性」「自己開示の返報性」など細かく分けられる場合があります。
ドア・イン・ザ・フェイス・テクニックの場合は、断った借りを返すために違う要求を受け入れるため「譲歩の返報性」に分類されます。
過去に行われた、返報性の原理の実験
返報性の原理を実証するために心理学者が行った実験にはいくつかあります。
ここでは代表的な実験を2つご紹介します。
「好意の返報性」の実証実験
返報性の原理の実証実験でよく知られているのが、デニス・リーガン博士の実験です。
この実験は2人1組で行われ、1人だけが被験者です。
仕掛け人(A)が飲み物を買いに出かけ、帰ってきたときに被験者(B)福引券の購入を持ちかけるというものでした。
自分(A)の分だけを買ってきた場合と比べて、相手の分(B)のジュースも買ってきた場合、福引券の購入率が2倍も高いという結果になったそうです。
この実験では、「ジュースを買ってあげた」という一方の好意(A)に対して、もう一方(B)が福引券を購入するという行動をとる割合が高くなりました。
つまり、好意の返報性が実証される結果となったわけです。
「譲歩の返報性」の実証実験
譲歩の返報性の実験は、ロバート・B・チャルディーニ(アメリカの心理学者)が行いました。
この実験では「1日ボランティアをしてほしい」という要求を、異なる方法で2つのグループに提示します。
1つのグループには、「3年間」のボランティアを依頼し、その後「1日だけのボランティア」と要求を引き下げました(=ケース1)。
もう一方には、最初から「1日だけ」のボランティアを依頼します(=ケース2)。
すると、「参加する」と回答した率はケース1がケース2より約2.5倍も高く、実際にボランティアに参加した人の割合でもケース1のほうが高い結果となりました。
この実験では「3年間」という大きな依頼を断った代わりに、「1日だけなら」と譲歩して受け入れた人の割合が高くなったことで、譲歩の返報性が実証されました。
※参考:ロバート・B・チャルディーニ著「影響力の武器」
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ビジネスや恋愛でも使える心理学「返報性の原理」
返報性の原理を理解しておくと、日常生活で役立てることができます。
「交渉ごとは普段しない…」という方も、難しく考える必要はありません。
法則を知っているだけで人とのコミュニケーションがスムーズになることもあるため、知っておいて損はないはずです。
とくに利用しやすい、ビジネスと恋愛の2つのシーンで活用例を見てみましょう。
活用例1:ビジネス
ビジネスシーンでよく使われるのが「無料サービス」です。
例えば、商品サンプルの提供や資料のダウンロード、セミナーへの招待などがそれに当たりますが、スーパーで見かける試食も返報性の原理を利用した仕掛けといえるでしょう。
無料のサービス(=借り)を受けたことで、返さなくては(=購入しなくては)という心理を引き出すところに、返報性の原理が利用されています。
活用例2:恋愛
返報性の原理を恋愛で応用する方法は、相手に与え続けることです。
与えるというと、何かモノをあげることが思い浮かびますが、それだけではありません。
ほめたり、励ましたり、相手が喜ぶことを言葉や態度で伝えるのもそうです。
理由は「好意を受けるうちに、自分も好意を返したくなる」という心理を引き出すため。
好きだと告白されてから、相手のことを意識し始めた(好きになった)という経験がある方もいるかもしれません。
それがまさに、恋愛における返報性の原理です。
この記事のまとめ
うれしいことをされたり好意をもたれると、自分も同じように返したくなるのは、抗えない人間の心理のようです。
交渉や駆け引きというと少し大げさに聞こえるかもしれませんが、返報性の原理を知っていることで物事をスムーズに進められることもあります。
仕事や日常生活など、さまざまなシーンで役立ててみてはいかがでしょうか。
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