フィットネス業界研究・仕事内容や求人状況、今後の動向を解説

フィットネス業界とは、フィットネスクラブやスポーツクラブなど、体力づくりや健康促進を目的とした施設やその運営会社のことを指し、代表的な職種にはインストラクターや店舗運営などが挙げられます。

フィットネス業界といえば「コナミスポーツ」「セントラルスポーツ」などの大型フィットネスクラブが全国的に有名であり、業界内のシェアの約半数を占めているのもこれら大手のフィットネスクラブです。

しかし、近年は「ライザップ」のような成果型ジムをはじめ、24時間営業や低価格を売りにしたジムなども続々と登場しており、業態の多様化が進んでいます。

そして、現在フィットネス業界を支えているのは主に定年退職を迎えた60代~70代のシニア層の会員であり、最近では介護予防という観点から事業展開を行う施設も増えつつあります。

いわゆる団塊世代と呼ばれる世代の退職が続く限り、近い将来において市場が縮小することは考えにくいですが、若い世代のスポーツ離れは年々加速しているため、将来的な会員数の減少に備えた対策を講じる必要はあるでしょう。

また、新しい施設が増える一方、各社揃って頭を悩ませているのが会員の定着率の低さです。

新規顧客獲得にかかる費用を抑え、既存顧客をどう定着させるかは業界全体の共通課題となっています。





フィットネス業界の役割

少子高齢化社会が加速する日本では、社会保障費の増大や慢性的な人手不足など様々な問題が年々深刻化しつつあります。

これに対し、介護保険の自己負担額の引き上げや、公的年金の受給開始年齢の引き上げなどさまざまな対策も進められていますが、個人レベルで私たちができることを考えた時、まず最初に考えられるのは「健康であること」ではないでしょうか。

例えば、フィットネスの利用人口が増え、医療に頼ることなく自ら健康維持や増進に励む人も増えれば、少なからず医療費の増大を抑えられるはずです。

また、健康な高齢者が増えれば、高年齢層の労働人口も増え、人手不足も少なからず緩和されることが予想されます。

現在の日本においては、フィットネスは時間や経済的に余裕のある人が利用する娯楽的側面が大きいものですが、健康維持という側面を強く打ち出し、多くの人が利用できるスタイルを確立し、普及させていくことでフィットネス業界は大きく社会に貢献することができるでしょう。

フィットネス業界の企業の種類とビジネスモデル

総合型施設

総合型施設は「コナミスポーツクラブ」や「アクトス」などの大手フィットネスクラブに多く見られる、トレーニングルームや各種教室を行うスタジオ、プール、サウナなどが一カ所に揃えられているタイプの施設です。

基本的に会員は月会費を支払い、自分でプログラムを考えながら施設を利用します。

総合型施設を利用する側のメリットとしては、運動だけではなく交流の場にもなること、また、その時々の気分や目的に合わせて自由に設備を利用できることなどが挙げられます。

一方で、自己流になりがちなため効果が表れにくい、人によっては継続しにくいなどのデメリットもあるため、最近では「ライザップ」に見られるようなパーソナルトレーニングジムに移行する会員も増加傾向にあります。

このような背景からも、総合型施設のビジネスモデルにおいては新たな戦略が求められる局面にきていると言えるでしょう。

特化型施設

特化型施設は、パーソナルトレーニングジムや女性専用ジム、短時間のスタジオレッスン型のもの、ヨガやボクシングなどプログラムが限定されているものなど、特定のニーズやユーザーにターゲットを絞った近年増加しているタイプの施設です。

パーソナルトレーニングジムの「ライザップ」やホットヨガスタジオの「LAVA」、女性限定のスタジオ「カーブス」などはこのジャンルに分類されます。

総合型施設との大きな違いは、1回の利用時間が決められていたり、3カ月などコースの期間が決められている点です。

特化型施設を利用する側のメリットとしては、基本的にマンツーマンや少人数制なので続けやすく、目的を達成しやすいことなどが挙げられますが、一人あたりにかかるコストは高くなるため、利用料金も高くなる傾向があります。

大がかりな設備や場所を用意する必要がないため、経営者側にとっては設備投資を抑え、駅前など人が多く集まる場所にも出店しやすいというメリットがあり、モノよりもコトに付加価値を見出しているビジネスモデルと言えます。

24時間型施設

24時間型施設はトレーニングマシンなどの設備が揃えられたジムを、会員が専用のカードキーなどを利用して24時間いつでも利用できるタイプの施設です、具体的には「エニタイムフィットネス」「ファストジム24」などが挙げられます。

インストラクターによる指導はオプションとなっているため、基本的には自分でトレーニングを進めるスタイルになりますが、一般的に総合型施設や特化型施設よりも低料金での利用が可能です。

また時間、気にせず気軽に利用できるため、これから運動を始めたい初心者、ウェイトトレーニングが趣味の中級者、仕事などでプライベートな時間の確保が不規則な方など、幅広い層から支持を得ています。

経営側としては比較的人件費がかからず、低価格なため新規会員の獲得もしやすいというメリットがあり、最近ではフランチャイズ経営というビジネスモデルにより全国で出店が広がっています。

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フィットネス業界の職種

大手フィットネスクラブの場合は、店舗勤務か本社勤務かによって仕事内容は大きく変わります。

基本的には店舗での売り上げが企業の売上の大部分を占めるため、店舗勤務をする社員の割合が高くなります。

以下ではそれらフィットネス業界特有の職種をご紹介しましょう。

インストラクター

ヨガ、スイミング、エアロビクスなど様々なジャンルはあるものの、いずれにせよ、特定の分野において専門的な知識を持ち、顧客に対して指導を行うことがインストラクターの基本的な仕事です。

また、専門性をより追及したり個性を生かすことにより、指導そのもの以上の付加価値をつけることも可能で、フィットネス業界ではフリーランスのインストラクターも多く活躍しています。

フランチャイズや個人経営などを含む、近年増加している小規模なフィットネスクラブでは、インストラクターとしてレッスンを行うだけではなく、顧客管理などの事務的な仕事や、サプリメントなどの販売といった営業活動などの業務を行うこともあります。

店舗運営

店舗において、顧客やスタッフの事務的な管理、イベントやプログラムの企画などを行います。

また、フロント業務も含まれます。

店舗の運営をスムーズにするだけではなく、スタッフの指導方法や企画によって店舗の売り上げを大きく左右する責任のある仕事であり、実績を重ねることにより、複数店舗を管理するエリアマネージャーにキャリアアップすることも可能です。

店舗開発・営業

新規出店の立ち上げや、企画の立案、企業の運営に関する業務を行います。

基本的には本社勤務となるため、直接顧客と関わることはほとんどなく、デスクワークが中心となります。

フィットネス業界では、店舗勤務において実績を積んだ上でこれらの職種に就くというパターンが多いようです。

フィットネス業界のやりがい・魅力

さまざまな出会いがあり、生き方さえも変える仕事

フィットネス業界、とくに店舗に勤務をする場合は、接客業やサービス業の要素が強く、お客様との直接コミュニケーションをとる機会が多くあります。

そして、フィットネスクラブを利用する人の多くは「健康になりたい」「体重を減らしたい」などの目標を持っていることがほとんどで、スタッフはその人たちを常に応援する立場にあります。

この仕事では、そんなお客様の日々の努力や継続の積み重ねの結果、その目標を達成する瞬間に立ち合うことができたり、お客様の喜ぶ姿を見ることができたり、時には感謝されることが大きな魅力です。

また、時にはお客様の身体面だけではなく考え方や生き方さえも前向きに変えることもあり、それもまたこの仕事に携わる上でのやりがいといえるでしょう。

今後さらに需要が高まる業界

これまで、フィットネスクラブは時間や経済的に比較的余裕がある一部の人が利用するというイメージでしたが、近年では筋トレブームの影響や、24時間型施設のような比較的低価格で利用可能な施設の増加により、多くの人にとって身近な場所になりつつあります。

そして、少子高齢化が進む中で、今後は介護予防という観点からフィットネスを利用する人が増えていくことが予想されます。

特化型施設の増加により、長年台頭してきた総合型施設のビジネスモデルは縮小の道を辿るかもしれませんが、VR(バーチャルリアリティ)のような新たなIT技術の出現により、形を変えながらもフィットネス業界の発展は続いていくことでしょう。

フィットネス業界の雰囲気

スポーツを扱う業種だけあって、やはりスポーツ経験者や体育系の学校出身者の割合は高い傾向にあります。

体育会系と聞くと男性が多いイメージを持つ人もいるかもしれませんが、フィットネスクラブの利用者は女性の割合の方が比較的高いこともあってか、男女平等な雰囲気を持つ企業が多いようです。

本社勤務の場合はデスクワークが基本となるため、体力が求められることはほとんどないものの、店舗勤務の場合は指導や機器の準備、清掃、案内など体を使う仕事も多いため、体力に自信がある人、また、人とのコミュニケーションが好きな人が多いでしょう。

なお、インストラクターの場合は身体を動かすことがメインとなる職種のため、年齢層は20~30代が最も多く、インストラクターとしての実績を積んだ後に経営や運営側に回るケースも多いようです。

フィットネス業界に就職するには

就職の状況

近年、全国各地に続々と新規出店されているフィットネスクラブ。

そのため、大手からベンチャーまで、ほとんどの企業で新卒・中途・アルバイトともに常に求人を行っている状況です。

未経験者を歓迎する求人も多く、インストラクターなど身体を動かすことが多い職種ということもあり、業界全体の傾向として若い人材を求めていることがわかります。

ただし、多くの求人は全体に占める従業員数の割合が高い店舗勤務が中心であり、最初から本社勤務を希望するとなるとその難易度は高くなります。

仮に新卒で総合職として入社した場合でも、最初の数年は店舗に勤務する形になるケースがほとんどです。

また、現在フィットネスクラブを利用する中高年が増加傾向にある一方、業界が求める若い人材は慢性的に減少傾向にあるため、当分の間需要が減るようなことは考えにくいでしょう。

就職に有利な学歴・大学学部

フィットネス業界、例えばインストラクターのような専門職であっても、実は特別な資格が必要なわけではありません。

そのため、求人を募集している企業の中には学歴不問としているケースも少なくありません。

しかし、大手企業の場合は基本的には大学院卒・大卒・短大卒・高等専門学校卒・専門学校卒であることが条件となっています。

学歴としてはやはりスポーツを扱う業界ですので、大学院・大学・短大であれば体育系の学部や健康系、専門学校であればスポーツ系の専門学校が就職には有利です。

また、フィットネス業界、とくに店舗での業務は接客やサービス業としての要素が多いため、サービス系の専門学校なども比較的有利と言えます。

就職の志望動機で多いものは

フィットネス業界への就職を希望する人の多くは、やはり身体を動かすことが好きであったり、健康への関心が高いことが多いようです。

学生時代にスポーツに打ち込んだ経験があり、その時に得た様々な経験やスポーツの面白さ、楽しさを仕事という形で多くの人に伝えたい、そんな思いからフィットネス業界を志望する人も少なくありません。

フィットネス業界を目指す場合の志望動機として、自分自身がスポーツを通して得たことや、印象的な出来事などを盛り込み、スポーツに対する熱意を伝えることは非常に大切です。

そして、スポーツへの思いと並んで重要視されるのがコミュニケーション能力の有無です。

フィットネス業界への志望動機を考える際には、スポーツに対する想いだけではなく、スポーツを通じてどう人と関わっていきたいかなど、人との繋がりについても盛り込んでみると良いでしょう。

フィットネス業界の転職状況

転職の状況

フィットネス業界では、新卒採用と同様に中途採用についても積極的に採用を行っています。

中途採用であっても職種や業種未経験者を歓迎する求人や学歴不問とする求人も多く見られ、中途採用市場の中でも比較的転職はし易い業界であるといえます。

ただし、身体を動かすことの多い業界ということもあり、募集内容には「20代~30代が活躍中」「若手が活躍中」などといった表記も見受けられます。

フィットネス業界への転職をより有利に進めたいと考えるのであれば、可能な限り早めの転職活動をおすすめします。

転職の志望動機で多いものは

転職でフィットネス業界を目指す場合であっても、やはりスポーツが好きであること、健康への関心が高いことなどが多くの人の志望動機のようです。

転職の場合はすでに社会人経験があることが前提となります。

そのため、志望動機を考える際には自らのスポーツ経験やスポーツに対するか考え方をベースに、これまでのキャリアで得たスキルをどう活かせるかといった点を絡めるとより説得力のあるものになるでしょう。

転職で募集が多い職種

中途採用の場合も、新卒採用と同様に「インストラクター」「店舗運営」といった店舗勤務の求人が多いようです。

しかし、一部の企業では経営企画など本社勤務の管理系職種を中途採用枠で募集していることもあるため、本社勤務を希望する人は、転職サイトなどだけではなく、企業の採用ページもチェックしてみることをおすすめします。

フィットネス業界の求人では未経験を歓迎する企業の割合も高く、比較的異業種からの転職がしやすい業界であることが伺えます。

どんな経歴やスキルがあると転職しやすいか

業界未経験者でもフィットネス業界への転職は可能です。

ただし、仮に体育系や健康系の学歴がなくとも、過去にスポーツで成績を残している、何かしらの競技経験者である、フィットネスクラブでのアルバイト経験者であるなどの経歴があると転職には有利でしょう。

また、トレーナーやインストラクターを目指す場合は「NESTA PET」「NSCA-CPT(NSCA認定パーソナルトレーナー)」「JATI-ATI(JATI認定トレーニング指導者資格)」「健康運動実践指導者」などのトレーニング指導に関する資格を取得しておくのもおすすめです。

フィットネス業界の有名・人気企業紹介

コナミスポーツ

1973年設立。営業利益26億6200万円(2018年3月期)、従業員数6,228名(2019年3月現在)。

全国で「コナミスポーツクラブ」「エグザス」などのスポーツ施設を展開するほか、自治体や民間企業のスポーツ施設の運営を受託するなど、幅広い事業展開をしている。

オリンピック選手の育成を行うなど、国内におけるスポーツの普及に大きく貢献している。

コナミスポーツ ホームページ

ライザップ

2003年創業、2010年設立。営業利益135億円(2018年3月期)、従業員数225名(2017年3月現在)。

「結果にコミットする」というキャッチフレーズと短期間で出演者の体型が大きく変化する印象的なCMで一躍話題となったパーソナル・トレーニングジム。

パーソナル・トレーニングジム事業の急成長をきっかけに、経営母体であるRIZAPグループ株式会社はさまざまな分野へのM&Aを行い、事業を拡大させている。

ライザップ ホームページ

エニタイムフィットネス

2002年創業、1927年設立。年商31億1,560万円(2018年3月期)、従業員数113名(2019年2月時点)。

アメリカで誕生した24時間年中無休の「エニタイムフィットネス」を日本で運営する。

現在日本全国で出店が相次ぐ24時間営業ジムの草分け的存在で、国内出店数は500店舗を超える(2019年3月現在)。

エニタイムフィットネス ホームページ

フィットネス業界の現状と課題・今後の展望

競争環境(国内・国外)

近年の動向としては総合型施設を運営する大手企業を特化型施設や24時間型施設を運営する新興企業が猛追する形となっています。

総合型施設については出店や店舗の維持に莫大なコストがかかることなどから、現状からの新規参入は考えにくいといえるでしょう。

総合型施設においては、すでに独自の路線や個性を打ち出している特化型施設や24時間型施設などに対して、どのように対抗していくかが課題となります。

一方、特化型施設や24時間型施設においては、新規参入が続く中で、埋もれることなくどのようにブランディングを展開していくかが課題となるでしょう。

最新の(技術の)動向

すでにVR(バーチャルリアリティ)を取り入れたフィットネスクラブも増えつつありますが、今後はさらにVRや、アップルウォッチに代表されるようなウェアラブル端末、スマートフォンアプリなどと連動した施設が増加することが予想されます。

また、クラブのような暗闇が広がる空間でヨガやエクササイズをしたり、波の上にいるような感覚が味わえるボードにのってトレーニングするなど、エンターテイメント色の強いジムも流行の兆しを見せています。

業界としての将来性

年金受給年齢の引き上げや医療費負担の見直し、一億総活躍社会に向けた動きなど、今後ますます中高年層における健康への意識は高まることが予想されます。

また、東京オリンピックの開催によって中高年層のみならず若い世代にもスポーツへの関心が高まり、今後しばらくはフィットネス業界の勢いが衰えることはないといえるでしょう。

さらなる市場拡大には中高年のユーザー今以上に確保することも大切ですが、その先の市場を考えた時、現段階から業界全体が一体となって若い世代へのスポーツや健康に対する意識を高めておくことも必要なのかもしれません。

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