ブルーオーシャン戦略とは

商品やサービスがあふれ、ライバルとの差別化がいっそう難しい時代に突入した2000年代前半。

世界中で話題となったのが「ブルーオーシャン」です。

直訳すると「青い海」となりますが、いったい何を意味する言葉なのでしょうか?





ブルーオーシャンとは

ブルーオーシャンとは、ビジネス書「Blue Ocean Strategy」の中で提唱された市場概念です。

激しい競争が繰り広げられる既存市場を、争いで血に染まる赤い海(レッドオーシャン)に見立て、その正反対で競争のない市場をブルーオーシャンと定義しました。

「Blue Ocean Strategy」はフランスのビジネススクールで教授を務めるW・チャン・キム氏とレネ・モボルニュ氏の著書。

世界で350万部以上が発刊されベストセラーとなったビジネス書です。

日本では「ブルーオーシャン戦略」として翻訳本が2005年に登場し、日本での事例が大幅に追加された新版は2015年に発売されています。

ブルーオーシャン戦略の手法

競争のない市場「ブルーオーシャン」を見つけることは、まだライバルが存在しない新しい市場を開拓することを意味します。

そして新しい市場の発見には、既存市場を再定義する必要があるとされています。

ブルーオーシャン戦略のキーワードは「バリューイノベーション」。

バリューイノベーションとは、顧客にはこれまでなかった価値を提供しながら、自社の利益も上がるビジネスモデルを構築することです。

バリューイノベーションを起こすための具体的な手法を詳しくみていきましょう。

「アクションマトリクス」と「戦略キャンバス」

ブルーオーシャン戦略では、経営戦略の概念だけでなく、実践に必要なフレームワークが紹介されています。

中でも「アクションマトリクス」と「戦略キャンバス」が有名です。

アクションマトリクス
アクションマトリクスを使って、自社の事業や業界について書き出していきます。

書き出す項目は「取り除く」「減らす」「付け加える」「増やす」の4つです。

ここで既存市場と自社事業を整理し、市場を再定義するためのヒントにするのです。

(1)取り除く(Eliminate)
業界標準の機能やサービスなどのうち、取り除いても成立するもの

(2)減らす(Reduce)
自社の事業から減らすことができる要素。業界標準にとらわれず、思い切って減らせるもの。減らすべきもの

(3)付け加える(Create)
業界標準とされている機能・サービス以外で、今後加えるべきもの

(4)増やす(Raise)
自社の事業に増やすことができる要素。業界標準にとらわれず、思い切って増やせるもの。増やすべきもの

競争戦略で知られるマイケル・ポーターは「差別化」「集中」「低コスト」の3つの戦略を提唱しています。

一方、ブルーオーシャン戦略では、差別化と低コストは別々ではなく同時に行う必要があるとしています。

これがブルーオーシャン戦略の大きな特徴であり、競争をしない市場を発見するという、過去にはなかった経営戦略論です。

「取り除く」「減らす」で低コスト化し、自社の利益を向上。

さらに「付け加える」「増やす」で差別化することによって、顧客に新しい価値を提供する。

これこそ顧客も自社も価値が高まる「バリューイノベーション」と理解すればよいでしょう。

戦略キャンバス
戦略キャンバスは、競合との差別化ポイントを明確化するためのグラフです。

グラフは横軸に自社が顧客に提供する価値をならべ、縦軸は顧客メリットの高低を示します。

各価値に対してあてはまるメリットの高さの位置に点を置き、点をすべて結んでいくと1つの線になりますが、その線のことを「価値曲線」と呼びます。

キャンバスには、既存市場で提供されている価値と新しい事業で提供する価値を両方書き出し、グラフにします。

キャンバスに現れたいくつかの価値曲線において、明確に違いがある価値が差別化ポイントとなるわけです。

競合との差別化を明確化するフレームワークは、ポジショニングマップをご存じの方が多いかもしれません。

2つのフレームワークの相違点は、ポジショニングマップが二軸の価値で自社のポジションを表すのに対し、戦略キャンバスでは複数の価値で競合との比較ができるところでしょう。

違いをさらに理解するために、化粧品事業の戦略設計でフレームワークを用いる場合を例に挙げてみることにします。

ポジショニングマップの場合、価格軸(高低)と機能軸(多少)などでマップを作成していきますが、ほかにも価格軸と安心度軸(高低)などのマップも考えられます。

つまり、比較要素が多い場合にはグラフがいくつも必要になるのです。

一方、戦略キャンバスでは価格のほかに機能、利便性(オールインワン)、安全性(無添加)など顧客のメリットをすべて書き出すことができるため、複数軸で他社との比較を行うことができます。

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ブルーオーシャンの成功事例

誰もが知っている企業もライバルに勝ち続けるために、ブルーオーシャン戦略をとっています。

デザインや機能を改善し続けるだけでは、競争が激しくなるだけだからです。

ブルーオーシャン戦略で成功している企業の事例をみてみましょう。

アップルのブルーオーシャン戦略

アップルが新しい市場を作ったといわれる代表的な製品は「iPod」です。

当時デジタル音楽市場は、日本メーカーが高い知名度と技術で市場を席巻していましたが、アップルはまったく違う価値を提供して新しい市場を開拓しました。

アップルが顧客に提供した新しい価値
・インターネットから音楽をダウンロードできる
・新曲を手軽に入手できる
・楽曲をすぐに探せる
・パソコンに接続しやすい
・デザイン性が高い

日本メーカーは、音楽プレイヤーとしての技術やデザインで熾烈な戦いを繰り広げていました。

アップルは技術面での勝負はせず、音楽を楽しむという顧客の価値を高めることに集中したのです。

iPodは最終的に日本市場でも、日本メーカーを抑えて売上げNo.1へと躍進しました。

アップルはiPodと同じく、iPhoneでも新しい市場の発見に成功しています。

スマートフォンという新しい市場を作ったのです。

日本メーカーが機能の増加や改善、世界最薄やワンプッシュなど端末の差別化で熾烈な競争を繰り広げる中、まったく異なるコンセプトのiPhoneは消費者の心をつかみました。

みなさんもご存じの通り、現在も高い人気を維持しています。

オーシャン戦略における実践の重要性

iPodでメジャーとなった音楽配信サービスですが、実はソニーも他社に先駆けて同様のサービスを開始していました。

ところが顧客が満足できるだけの楽曲数を集めることができず、失敗。

自社で音楽レーベルを運営していることや、独自の圧縮技術にこだわったことなどが裏目にでてしまったのです。

ブルーオーシャンは新しい市場だからこそ、社内や業界からの反発も大きくなります。

すばらしい戦略に引けをとらない、実行力が重要ということです。

新しい世界を作り出すことの厳しさを示すよい例ではないでしょうか。

この記事のまとめ

書籍の発表以降、ブルーオーシャン戦略は有名な経営戦略論のひとつになりました。

ブルーオーシャンはときに、「まだ誰も手をつけていない市場」という意味で使われることがありますが、実際には自社の事業とまったく関係のないところで、誰も気づいていない市場を見つけることは簡単ではありません。

「市場を新しく定義しなおす」と解説されているように、提供している価値や顧客が感じている価値を、視点を変えて見つめなおすということです。

フレームワークを使って、試しに整理してみてはいかがでしょうか。

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