契約社員の退職手続きは? 退職金や失業保険は受け取れる?【2020最新情報】
一方、契約途中の退職手続きは契約違反となるのでハードルは高く、基本的には退職できません。
この記事では、契約社員の退職に関わる手続きや退職金・失業保険、2020年現在の最新の法律についてもわかりやすく解説しています。
契約社員の退職手続きは?
契約社員が退職する際の手続きは、退職のタイミングによって異なります。
以下の3つのタイミングそれぞれの退職手続きを解説します。
契約社員の退職手続きのタイミング
- 契約満了
- 契約更新
- 契約途中
退職の手続きは上から順にスムーズです。
契約途中の退職は原則NGですが場合によっては可能です。
契約満了で退職する場合の手続き
- 退職届:不要
- 退職の方法:面談時に申し出
契約社員が退職する際に最も円満なのは契約満了のタイミングです。
契約満了の前に上司や人事担当との面談が行われることが一般的で、その際に申し出れば退職届などは必要ありません。
2013年に改正された労働契約法により、5年以上継続した雇用契約を結ぶ場合には「無期雇用転換制度」の対象となり、無期契約社員や正社員への転換の申し出が可能になりました。
したがって、5年を迎えるタイミングなどでは、正社員になるかどうか打診があるかもしれません。
退職するつもりなら、意思をしっかり示しておきましょう。
契約更新で退職する場合の手続き
- 退職届:不要
- 退職の方法:遅くとも30日前までに申し出
- 注意点:1度でも更新実績があれば早めに申し出ること
契約更新が半年~1年ごとにある契約になっている場合、契約更新のタイミングでの退職は比較的スムーズに行えます。
ただし、1度でも契約更新をしたことがある場合は、できるだけ早く会社に申し出ます。
会社側は次も更新してくれるものと考えている場合があるからです。
就業規則や雇用契約に、「退職希望日の少なくとも〇日前に申し出ること」といった記載があることが一般的なので、確認してみましょう。
どんなに遅くても30日前までに申し出ることが望ましいです。
厚生労働省のガイドラインに以下の記載があるためです。
3回以上契約が更新されている場合や1年を超えて継続勤務している人については、契約を更新しない場合、会社は30日前までに予告しなければならない
したがって、30日前に会社から何も通告がない場合には、契約は更新されると考えられます。
契約途中で退職する場合の手続き
- 退職届:必要
- 契約途中の退職は基本的にできない
- 勤続1年以上もしくはやむを得ない事由が必要
契約社員が契約の途中で退職する「契約の途中解除」は原則としてできません。
会社と契約社員が契約を結んでいるため、双方が契約を履行する義務を負っており、民法上の拘束力を持ちます。
ただし、以下の場合は例外として退職が可能です。
契約途中でも退職可能なケース1.勤続期間が1年間を超えている場合
会社での勤続期間が1年を超える場合には、契約途中でも退職の申し出が可能です。(労働基準法 第137条)
退職希望日の何日前までに申し出が必要かは、就業規則や雇用契約を確認してみましょう。
契約途中でも退職可能なケース2.やむを得ない事由がある場合
以下のようなやむを得ない理由がある場合には、契約の途中解除が可能です。
退職のやむを得ない理由の例
- 健康上の理由で働き続けるのが難しい場合
- セクハラ・パワハラなど
- 契約通りの賃金が支払われない
- 契約と異なる業務へ従事させられる
- 配偶者の転勤で通勤が不可能
会社側が、業務内容や給与、業務時間などに関して契約違反をする場合は退職することができます。
しかし、「違う業務をやりたくなった」「転職したい」といった理由は本人の都合なので退職はできません。
契約途中の退職は損害賠償請求の可能性もある
契約は法律上の拘束力を持ち、半年や1年など一定期間働く雇用契約を結んだのであれば、契約途中の退職は契約違反となります。
したがって、会社側は契約不履行として損害賠償請求の裁判を起こすことも可能です。
実際には、損害の金額を正確に算出し、弁護士などに費用を払う必要もあるなど、手順が煩雑なので裁判を起こす例はあまりないようです。
しかし、裁判を起こすこともできるほど、契約途中の退職は重大な契約違反となることを知っておきましょう。
なお、契約の途中解除の場合には、契約満了・更新のタイミングでの退職と異なり、退職届も必要です。
契約社員は退職金・失業保険は受け取れる?
契約社員は退職金は受け取れないことが多いですが、失業保険は条件を満たせば受け取ることができます。
なお、近年の裁判の判例や2020年4月施行される「パートタイム・有期雇用労働法」「改正労働者派遣法」により、今後は契約社員にも退職金を支給する企業が増えていくことも見込まれます。
この章では、契約社員の退職金・失業保険について詳しく見ていきます。
契約社員は退職金を受け取れないことが多い
そもそも、退職金制度の設置は義務ではありません。
したがって、会社によっては正社員にも退職金が払われないことがあります。
退職金制度がある会社でも、正社員には退職金が支給されるが契約社員にはない、というのが一般的です。
東京都産業調査局の「契約社員の実態調査」によると、契約社員に退職金を支払わないと回答した企業は84%でした。
しかし、以下2点の理由から今後は契約社員も退職金を受け取れるようになる可能性があります。
- 契約社員への退職金不払いを違法とする判決
- 2020年4月施行「パートタイム・有期雇用労働法」「改正労働者派遣法」
2019年2月に、駅の売店の販売員として働いていた契約社員が退職金の不払いを不服として起こした裁判で、裁判所は会社に退職金の支払いを命じました。
勤続10年程度の契約社員への退職金を一切支給しないことに対して違法と判断されたのです。
また、2020年4月には「パートタイム・有期雇用労働法」「改正労働者派遣法」が施行されます。
この2つの法律の目指すところは「同一労働同一賃金」で、企業は正社員か非正規労働者であるかを理由に、待遇に不合理な格差をつけることを禁じています。
正社員と同等の条件で働いているのであれば、契約社員であっても退職金の他、通勤手当や家族手当といった福利厚生を受けられるようになる可能性があります。
また、契約社員も正社員と同じ就業規則を使用している会社では、退職金を受け取れる場合もあります。
雇用契約書や就業規則を確認してみてください。
契約社員も失業保険は受け取れる
契約社員か正社員かに関わらず、条件を満たせば失業保険を受け取ることができます。
- 自己都合の場合:退職日以前の2年間のうち通算1年以上雇用保険に加入
- 会社都合の場合:退職日以前の1年間のうち通算6か月以上雇用保険に加入
自己都合の場合は、ハローワークに申請後、7日の待機期間+3ヶ月の給付制限以降に失業保険を給付されます。
一方、契約満了時に会社から更新しないことを告げられた場合などは会社都合となります。
会社都合の場合には7日の待期期間以降に失業保険を受け取ることができます。
ご自身が雇用保険に加入しているかどうかの判断方法は以下の通りです。
会社は1人でも人を雇うと雇用保険に加入する義務があります。
契約社員は以下を満たせば雇用保険に加入しています。
- 1週間の所定労働時間が 20 時間以上
- 雇用期間が31日以上である場合
- 雇用契約に更新規定があり、31日未満での雇止めの明示がない場合
- 31日以上雇用された実績がある場合
厚生労働省HP「雇用保険の手続はきちんとなされていますか!」より
20代で正社員への就職・転職
契約満了で更新されずに「雇止め」にあって退職する場合
「今回も契約を更新してもらえると思っていたのに、更新されず退職することになってしまった」
このような場合について、自分の身を守るために知っておくべき法律についてわかりやすく解説します。
雇止めは無効になる可能性がある
契約社員の契約を更新せずに打ち切る「雇止め」は以下の場合には無効となります。
- 過去に何度も契約更新されてきた
- 次回の更新について期待させるような会社側の対応があった
厚生労働省「労働契約法改正のあらまし」より作成
上記のいずれかに当てはまり、契約更新をしないことが「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないとき」は雇止めは認められません(雇止め法理)。
不当な解雇と同じ扱いとなります。
契約を不当に打ち切られたと感じる方は、上記の法律があることを知っておき、総合労働相談コーナーなどに相談してみてください。
契約社員の退職手続きと退職金・失業保険のまとめ
- 契約社員の退職のタイミングは契約満了・更新時が望ましい
- 契約途中の退職は基本的にできない
- 退職金は受け取れないことが多いが、失業保険は条件を満たせば受給可
契約社員の退職手続きは、契約満了もしくは更新の時であれば円満に進みます。
会社に業務上迷惑がかからないように遅くとも30日前には申し出ましょう。
退職金は現状はもらえない企業が多いですが、近年の同一労働同一賃金を推し進める社会の流れから、今後は契約社員への退職金制度が拡充されることが考えられます。
失業保険は条件を満たせば受け取れるのでハローワークで所定の手続きを行いましょう。
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