パラダイムとは

「情報化は、働き方に対するパラダイムを劇的に変えた」

「パラダイムの転換がヒット商品につながった」

最近、よく耳にする言葉「パラダイム」。

企業・組織は、新しいパラダイムに対応できる人材を求めていると言います。

パラダイムとは、どういう意味なのでしょう。





パラダイムとは

パラダイムとは、ある時代や分野での「ものの見方や考え方」のこと。

ある業界の「常識」という意味合いで使われたり、単に、ものの見方や考え方を指したりする場合もあります。

「パラダイム」の由来

「パラダイム」という言葉の起源は、「典型」を意味するギリシア語「paradeigma(パラデイグマ)」。

英語のパラダイムは、もともと、「範例」(手本)の意味で使われる言葉でした。

現在の「ものの見方や考え方」の意味で使われるようになったのは、1962年に発刊された米国の科学史家トマス・S.クーンの著書「科学革命の構造」がきっかけだといわれています。

クーンは、この著書の中でパラダイムを「ある期間、科学者にとっての”ものの見方や考え方”の手本になる科学的業績」と定義。

また、

「あるパラダイムに沿った科学が行き詰まると、それにとって代わる新たなパラダイムが登場し、科学革命が起きる。こうして科学は進歩する」

という科学観も提示しました。

こういうクーンの定義や科学観が普及して、パラダイムは、科学の分野だけでなく、広く一般で「ものの見方や考え方」の意味や、古い考え方に代わる新しい考え方という意味合いで使われるようになりました。

また、パラダイムが根本的に変わったり、転換されたりすることを「パラダイムシフト」と呼びます。

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日本が直面しているパラダイムシフト

今、日本で進む大きな変化は、

・高齢者が増える「高齢化」
・経済などが国境を越え世界規模で拡大する「グローバル化」
・ネット販売の普及など、情報通信技術の発達が社会を変える「情報化」

の3つ。

これらの変化は、日本の社会にさまざまなパラダイムシフトを引き起こしています。

主なパラダイムシフトを挙げてみましょう。

(1)「高齢化」によるパラダイムシフト

<「60歳定年」から「生涯現役」へ>
一般に、65歳以上を高齢者といいます。

以前は「60歳で定年退職した後は、年金だけで悠々自適」が、現役引退後の生活イメージでした。

今では、急激な高齢化により、年金頼みで豊かに暮らすのは難しくなっています。

こうした年金不安に加え、比較的若い高齢者の中には元気な人が多いこともあり、「働ける間は働く」生涯現役志向の高齢者が増えています。

<医療・介護の中心は「病院」から「在宅」へ>
医療・介護が必要な高齢者数の急増に伴い、医療費も増大、医療費の中の国の負担分も増えて、国の厳しい財政状態を一層悪化させています。

一方、病院などの医療施設・スタッフは不足気味。

医療費の軽減、医療施設不足への対応のために、高齢者の医療・介護は在宅中心に考えられるようになってきました。

在宅に重きが置かれるようになった分、家族への負担が増し、仕事と介護の両立を迫られる人が増加傾向にあります。

(2)「グローバル化」によるパラダイムシフト

<アジア地域は「生産の拠点」から「販売先」へ>
日本のメーカーは、主に、コストの安いアジア地域で製品を生産してきました。

グローバル化の進展で、こうしたアジア諸国は豊かになり、日本のメーカーにとって生産拠点から製品の販売先へと変わってきています。

現在、メーカーは、アジア諸国の人々に合わせた製品を現地で企画・生産・販売しています。

<外国人スタッフは「手足となって動く人」から「共に考えるパートナー」へ>
「海外で生産するだけ」の時代には、日本人の指示通りに動く現地スタッフが求められていました。

しかし、現地の需要をとらえた製品をつくって、売る時代に入った今、現地の事情に通じた優秀な現地スタッフが必要になっています。

(3)「情報化」によるパラダイムシフト

<データ収集・加工・分析は「人の仕事」から「人工知能(AI)の仕事」へ>
現在、コンピュータによるデータ収集・加工・分析は人の手によるオフィスワークの一つですが、近い将来、AIの仕事になると予想されています。

<従業員は「決められた時間・場所で働く」から「好きな時間・場所で働く」へ>
今後、AIに単純作業を任せるようになると、人の仕事は、複雑な課題の解決や、新しい商品やサービスといった”ものごと”を創り出すことが中心になると言います。

こうした仕事に必要な課題解決力や発想力は、多様な経験で養われるものです。

また、これらの仕事の成果は、労働時間の長さに比例するものではありません。

そのため、自主的に豊かな経験を積めるよう、企業に所属する従業員の勤務時間や場所を自由にして、好きな時間・場所で働けるようにすべきだとの声が高まってきました。

実際、労働時間ではなく成果を評価して賃金を払う「脱時間給」の制度化が、話題を集めています。

また、企業の中には、自宅やカフェなど好きな場所で仕事を行う「リモートワーク」を本格導入しているところも出てきました。

求められるパラダイムシフトへの対応力

上記のようなパラダイムシフトが起こっているということは、今後、企業・組織、また、それらで働く人々には、これらのパラダイムシフトへの対応が求められることを意味します。

企業・組織に求められること

新しいパラダイムへの具体的対応策として、企業・組織は、以下の2つに取り組むことが不可欠と言われます。

・高齢者、外国人、介護しながら働く人など、同じ職場で年齢、国籍、生活スタイルの異なる人々が働くようになるため、多様な人々にとって働きやすい職場の整備

・従業員の課題解決力や発想力を高めるための「働き方改革」や教育の充実

こうした取り組みを上手く行えた企業・組織は、成長性が期待できますが、できないところは、停滞、もしくは衰退の可能性が高まります。

従って、これから就職・転職を考える際、企業・組織のこれら2点への取り組み具合も重要なチェックポイントになってきます。

働く人々に求められること

一方、企業・組織で働く人々には、以下のような能力を身に付けることが、新しいパラダイムへの対応力を高めるとされています。

<マネジメント力>
職場に集う人達それぞれの価値観やバックグラウンドを尊重しながら、各自のやる気をかき立て、能力を伸ばして、共通の目的へと導く。

<課題解決力>
表面化する前に潜在的課題に気づいたり、利害が複雑に絡む課題に粘り強く取り組んだりするなど、豊かな感性と強い忍耐力で積極的に課題に向き合い、解決へと進める。

<発想力>
課題を発見するための手順をまとめたり、新たに社会で求められる商品やサービスの方向性を考え出したり、各種のアイデアを思いついたり、新たな突破口を見出す。

これらの能力を持つ人材が多数在籍していれば、企業・組織のパラダイムシフト対応力も、自ずと向上します。

従って、マネジメント力・課題解決力・発想力に磨きをかけていけば、企業・組織に必要とされる人材になれるといえるでしょう。

求められる3つの力を高めるには

今後、職場で一層求められるマネジメント力・課題解決力・発想力。

しかし、どうすれば、これら3つの力を高めていけるのでしょうか。

価値観も生き方も多様な職場の仲間をまとめながら、難しい課題に取り組んだり、画期的な新商品やサービスのアイデアを得たりするのは、カンタンなことではありません。

そこで、力を高める手法の一つとして、「第3の案」という考え方を紹介しましょう。

この考え方を使って、家族や友人の間、部活や仕事で起きる課題に向き合うようにすれば、自ずと3つの力を鍛えられます。

「第3の案」とは

ここで言う「第3の案」とは、「私の案(第1案)」でも、「あなたの案(第2案)」でもない、全く新しい「我々の案(アイデア・答え)」、もしくは「我々の案」にたどり着くための考え方を意味します。

「第3の案」は、世界的にも著名なビジネス思想家”スティーブン・R・コヴィー博士”によって提唱されたものです。

「第3の案」にたどり着く手順

(1)「第3の案」を探す決意
価値観の異なる人が集まると、意見は対立しがち。

まずは、誰が正しい、間違っているという「二者択一」のパラダイムを捨て、同じ一つの課題に取り組むメンバーそれぞれの価値観の違いを理解した上で、それらを尊重します。

その上で、個々の考えに固執せず、それぞれが納得できる新しい「第3の案」が存在するというパラダイムを信じて、アイデアを出し合う決意をします。

(2)成功の条件を決める
各メンバーの考えを丁寧に聴き、どういう条件を満たせば、メンバー全員が納得でき、今取り組んでいる課題を解決したことになるのか、成功したことになるのかを決めていきます。

(3)どんどん案を出し合う
急がず、「ダメ出し」なしで、世間や業界のパラダイム(常識)にもとらわれず、お互いがどんどんアイデアを出し合います。

アイデアを絵にしたり、図にしたりしながら考えを深めます。

(4)「第3の案」に到達
先に決めた成功の条件を満たし、メンバー全員が納得できる案にたどりついたら、それが「第3の案」です。

「第3の案」については、多数の関連書籍が出版されており、各種のセミナーも数多く開かれています。

書籍やセミナーも、今後の社会で必要な基礎力を強化する上で参考になるでしょう。

この記事のまとめ

パラダイムとは、ある時代や分野で生きる人々が共通して持っている「ものの見方や考え方」を言います。

社会の変化につれて、パラダイムもまた大きく変わります。

社会で活躍する人材であるためには、新しいパラダイムを知り、これに適応する姿勢と努力が不可欠です。

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