自動車部品メーカーの生産技術の仕事のやりがいを3つ紹介
生産技術の仕事は設計が図面化した製品を大量生産するときに、どこで生産するか、どういう工程で製造するのがよいか、品質・安全・環境・コストの面で考えていく仕事です。
そしてラインを設計して、設備を発注し、ラインが整然と製品を生産できるように調整していく仕事です。
それでは今回は生産技術の仕事のやりがいについて、3点解説します。
自分で考えた工程や設備で世界初の製品を生産できる
製造業において設計・開発部署が、自分のアイディアを製品に反映できるクリエイティブな仕事というイメージがあるかもしれません。
実は生産技術部も同じようにクリエイティブな仕事が求められます。
なぜなら今まで世界に無かった製品が、市場で販売されるためには、その製品の製造方法を開発する必要があるからです。
例えば、私が入社して2年目で担当した製品は、ねじれたスクリューが何百ミリにも続く、3次元形状の部品を搭載していました。
その3次元形状の輪郭を5ミクロン以内のずれで製作しないと、製品の機能が著しく低下するような製品でした。
従来の加工設備と工具で削った結果、15ミクロン以上のずれが発生してしまいました。
そのため、加工設備や工具のメーカーと共同で加工する技術を開発することにしました。
そして専用設備や工具の開発で半年におよぶ試行錯誤の結果、なんとか精度を達成したことで、その製品が初めて世の中に販売できるようになったのです。
設計者が考え出した理想の製品を具現化できるのは、生産技術あってこそなのだと感じました。
画期的な製造技術を開発することで、社会に大きな貢献ができる
生産技術の仕事は社会の発展に大きく関係しています。
なぜなら生産技術の設計した工程次第で、その製品の製造コストが決まるからです。
例えば自動車は今では普通の一般家庭に当たり前にある製品ですが、そうなったのは20世紀の後半からです。
その背景にあるのは、生産技術開発により機械化で昔より遥かに安いコストで製造できるようになったからです。
自動車の形状自体が昔から大きく変わっていないことを考えれば、いかに生産技術の仕事が貢献しているか分かると思います。
自分が携わっている生産技術の開発は、まだまだ社会を動かすような貢献ではありませんが、一つ一つの弛まぬ改善が社会貢献に繋がると考えています。
コストの話からはずれますが、例えば私が数年前に携わった設備では、それまで都市ガスをつかってガスバーナーでアルミのインゴットを溶かして、金型に充填していました。
それを設備の効率を上げることで、電気ヒーターでアルミのインゴットを溶かせるようにして、CO2の排出量を大幅に下げることに成功しました。
現在は工場の生産活動で発生するCO2排出量0を目指して、新たな生産技術開発に取り組んでおり、社会貢献に繋がる仕事であるとやりがいを感じています。
安全で作業しやすい設備を導入することで、製造作業者に喜ばれる
先ほどまで説明した2点より、もう少し身近な例を紹介します。
それは自分の設計したライン、設備が使用した製造作業者に喜ばれることです。
生産技術の仕事の中で、自分の導入したラインや設備で労働災害が起きることは、絶対にあってはならないことです。
そのために生産技術者は、設備導入前に自分の考えた設備の配置でどのような作業導線ができるか、どんな作業姿勢になるかなどをコンピューター上や、工場の現場でシミュレーションします。
その他にも工程内で起こりえるトラブルを事前に検討します。
具体的にはこのようなことです。
・高温の設備で保全作業するときに、接触の恐れが無いか
・設備内で清掃作業するときに無理な姿勢にならないか
・化学物質を使用する時に発火リスクや中毒のリスクがないか
さらに安全衛生部や製造部など、関係部署と何回も打ち合わせを行うこともあります。
そこまでこだわった設備を導入するからこそ、実際に製造作業者が作業してみて、「この設備なら気持ちよく作業ができるよ。」、「自分たち製造関係の人間のことを良く理解してくれてるね。」と声をかけられると、喜びを感じます。
生産技術の仕事は社外から見ると、一見分かりづらいところで仕事をしているので、認知度が低い部分があります。
ですが、製造業において生産技術の力はその会社レベルを決めると言っても過言ではない、極めて重要な仕事だと感じます。