心理職のメンタルクリニックでの仕事とは
近年メンタルヘルスへの関心が高まっており、心の専門家としては民間資格の「臨床心理士」や国家資格の「公認心理師」が代表的です。
本記事では、この代表的な2つの資格を心理士と呼び、心理士が活躍する場の1つであるメンタルクリニックでの実際の仕事について紹介します。
将来的に心理士を目指す人や、メンタルクリニックでの仕事を考えている人は参考にしてみてください。
メンタルクリニックに入職するには
メンタルクリニックは心理士の職場の1つで、心の悩みを相談にくる患者さんへの対応を行う場です。
メンタルクリニックへ心理士として入職するには、臨床心理士または公認心理師の資格の取得もしくは資格取得見込みの人が対象になります。
心理学の民間資格は「認定カウンセラー」や「メンタル心理カウンセラー」など多く存在しますが、心理職として就職するには効果を発揮しない場合がほとんどです。
基本的には臨床心理士・公認心理師の資格取得を目指して求人に応募するか、気になるメンタルクリニックに問い合わせてみましょう。
精神科と心療内科の違い
心の病気や悩みを相談する診療科は主に精神科と心療内科ですが、両者の違いを知っていますか。
心の不調を診るという意味では共通しますが、精神科は鬱や幻覚・幻聴などの精神症状を中心に扱い、心療内科は内科寄りの診療で主に身体の症状を中心に扱う場所です。
たとえば緊張やストレスによる頭痛や腹痛などは心療内科の方が対応しやすく、精神科の方が精神病の対応が多くなります。
患者さん側は違いを知らずに受診することが多いですが、メンタルクリニックで働く心理士として違いを知っておくと、患者さん対応がしやすくなるので覚えておきましょう。
メンタルクリニックでの仕事内容
メンタルクリニックでの心理士の仕事内容のほとんどは、カウンセリングと心理検査による患者さん対応です。
カウンセリングは、メンタルクリニックによって実施時間が決まっており、1回30分や50分の場合が多いです。
カウンセリングの時間は言語面接や絵を用いる描画法、子どもの場合は遊びを介して心に働きかけるプレイセラピーなどで患者さんの悩みや問題と向き合います。
心理検査は医師の指示に基づいて、患者さんの性格や発達レベルの把握など、患者さん理解のために実施します。
メンタルクリニック勤務であれば、人格検査のロールシャッハテスト、知能検査のWAIS-Ⅳ・WISC-Ⅳ(ウェイスフォー・ウィスクフォー)を扱う場所が多いので勉強しておきましょう。
また、職場によっては受付業務や電話対応、医師の診察補助、清掃なども行います。
メンタルクリニックには入院施設がない場所が多く、夜勤はほぼありません。
最近は、うつ病や引きこもりの人たちの居場所づくりや症状改善を目的としたデイケアを併設したメンタルクリニックもあります。
デイケアでスタッフとして患者さんと関わることも、メンタルクリニック心理士の業務の一環です。
自分が患者さんとどのように関わりたいかや、自分の強みを院長や上司と話して、仕事の配分を調整してみましょう。
筆者の場合はカウンセリングをする日が多く、週に1回心理検査のテスターをしました。
また、心理士同士や多職種と患者さんについて共有し合うことも大切な業務なので、職場内ではコミュニケーションをしっかりとるようにしましょう。
メンタルクリニックで気をつけること
メンタルクリニックに受診する患者さんの多くは心の悩みや問題を抱えた人であるため、些細な言葉でも相手を傷つけてしまう可能性が高いです。
そのため、メンタルクリニックで勤務するのであれば関わる全ての患者さんに対して思いやりをもつことが大切になります。
医療従事者全般に言えることですが、特にカウンセリングで患者さんと関わるとき、心理士は援助者でもあり加害者になりうるリスクがあります。
何気ない言葉やアドバイスで、不本意に患者さんを傷つけてしまう可能性があるため、とにかく言葉には気をつけて、相手を尊重する関わりを心がけましょう。
また、心理士は患者さんの心の様子をカウンセリングや心理検査で見立てていきますが、「うつ病です」などと診断することはできません。
患者さんから診断名について聞かれることもありますが、診断は医師の仕事であるため安易な発言には気をつけましょう。
その他、心理士も睡眠薬や抗うつ剤などの薬の名前や種類をある程度知っておくことで、スムーズな患者さん対応が可能になります。
薬についての勉強は事前にできることなので、興味のある人は勉強してみてください。
メンタルクリニックでの心理士の仕事の基本は、カウンセリングと心理検査です。
いずれも、心の悩みや問題で困っている患者さんの利益になることが最優先ですが、「人のために」を思いすぎると患者さんを傷つけてしまう可能性もあります。
目に見えない心を扱うからこそ、相手を尊重する気持ちを常にもって接することが大切になります。