院内SEの将来性は? 需要がなくならない理由を解説
ここでは「医療機関のシステムエンジニアに未来はあるのか?!」というテーマで、実際に医療機関のシステムエンジニアとして働く私が、私見を述べさせてもらおうと思います。
医療機関とシステムエンジニアは、直感的に結びつきづらい印象です。
私もいざなってから、なんか変な感じと常日頃から感じていますが、結論から言うと「かなりニーズは高くて未来は明るい」です。
なぜなら…、というのは本文で話すとして、なぜ医療機関のシステムエンジニア(以下、院内SE)はニーズが高いのか、未来は明るいのかを説明させていただきます。
読んで院内SEに興味を持ってもらえると、うれしいです。
電子カルテは一度入るとなくならないから
院内SEのニーズは高くいといえる一つ目の理由は「電子カルテは一度入るとなくらならない」からです。
そもそも電子カルテとは、診療の経過を電子的に残せるシステムのことです。
例えば、受診時の症状や問診結果、どんな治療をしたかなどをパソコンで書き残します。
また、電子カルテはオーダリングシステムの機能も合わせ持っています。
オーダリングシステムとは、処方や注射、検体検査やレントゲンなどの医師の指示を電子的に作成し、記録を残すシステムです。
厳密にいえばこの2つは違うシステムなのですが、境目がわからないくらい密接な関係にあります。
そのため、電子カルテといえば、診療の記録が残せて処方や注射などの指示も出せるシステムと認識されているのが一般的です。
そしてこの電子カルテは、厚生労働省でも導入を推進していますが、現場としても「一度使うとやめられない」ものになっています。
なぜなら「とても便利だから」です。
これまでは、診察したら記録を紙に書いて、薬を出すときに処方箋を書いて、レントゲンを撮るときには指示箋を書いて…、というように、何かある都度「手で書く」ということを医師をはじめ医療機関のスタッフはやってきました。
しかし電子カルテは、書くという行為から解放されるとともに、数クリックで前と同じ指示や記録を残す(Do機能といいます)ことができたり、よくある病名に対してあらかじめ作っておいたオーダなどのセットを使ったりすることができたりして、手間が格段に減るのです。
また、現場の流れ・手順も電子カルテの導入に合わせて変わるので、これを紙運用に戻すのは至難の業です。
これらのことがあって、電子カルテは一度導入されると、システム自体を変えることはあっても、なくなることはまずありません。
そして、その電子カルテの維持管理をするのが、院内SEです。
日々、パソコンや電子カルテのトラブル、要望、問い合わせに対応し、数年に一回のシステム更新の際には、主導的な役割をします。
ですから、電子カルテを導入している医療機関では、院内SEの仕事がなくなることはないのです。
医師の働き方改革が求められているから
医師は、驚くほど残業をしています。
実際に現場で見ていても、なんで体を壊さないのかと不思議になるくらい飛び回っています。
特にご飯を食べるスピードは尋常ではありません(たぶん人によるとは思いますが…)。
そんな医師の労働時間を懸念して、国では医師の働き方改革を求めてきています。
詳しい話はしませんが、2024年から原則医師の残業時間は「年960時間まで」に制限されます。
年960時間というと、例えば1ヵ月22日働いているとして「1日3.5時間以上の残業」です。
つまり、午後6時までが定時だとすると、毎日10時近くまで働いてもOKということです。
この状態でも許容されるということ自体に驚きですが、つまりはそれ以上働いている医師がたくさんいるということです。
そして、働き方改革をするのに一番行われるのが「システムの導入」です。
仕事をIT化して効率を上げるということで、ここでも院内SEの出番です。
新しいシステムを導入するには、
「メリットは確かにあるのか?」
「仕事の流れはどう変えればいいのか?」
「かかわるスタッフへの教育方法は?」
「どんなシステムや機器を入れると費用対効果が大きいのか?」
など、考えなければならないことはたくさんあります。
これらを院内SEが一つ一つ考慮して、最善のものを最善の状態で使えるようにおぜん立てするのです。
最近では「オンライン診療」や「オンライン面会」、「オンライン会議」など、オンラインで行うものも増えてきました。
こういった新しい仕組み、システムを導入することはこれからももっと増えていくでしょう。
ですから、院内SEへのニーズは、決して減ることはないのです。
IT関係に詳しい人が少ない
これは、正直医療機関によって差があるとは思います。
しかし、私が実際に働いていて感じることでもあります。
例えば、キーボードの打ち方からエクセル関数の使い方、メールの送り方から資料の印刷の仕方まで、初歩的なことをできない人は、意外と多いのです。
もちろんその分診療行為や看護行為など、専門的な仕事をしているところを見ると、やっぱりすごいなとも感じます。
不得意なIT関係のことはこちらがフォローして、職種に応じた専門的な仕事に集中してもらうためにも、院内SEは不可欠です。
余談ですが、患者さんへの診察や治療でプロの技や知識を発揮している姿を見ると、パソコンに苦労している姿はある意味かわいいなとさえ思いますよ。
以上、医療機関のシステムエンジニアに未来はあるのか?!というテーマで、私見を述べました。
あくまでも私見ですが、業界全体で見ても、それほどずれてはいないと思います(たぶんですが…)。
つまり、院内SEはこれから求人がどんどん増えていく職種であるということです。
少しでも興味を持ってもらって、仲間が増えてくれると嬉しいです。