撮影スタッフの仕事内容・なり方・年収・資格などを解説
「撮影スタッフ」とは
映像を通して多くの人にメッセージを伝える、撮影のプロフェッショナル
撮影スタッフは、テレビや映画などの動画を撮影するのが仕事です。
ドラマやバラエティ番組、スポーツ中継やニュース番組。
ドキュメンタリー番組や音楽番組。
さまざまな番組の制作に携わり、ディレクターの指示をもとに現場でカメラを回します。
最近のテレビは高画質が当たり前になっているので、映像にもますます美しさが求められるようになってきました。
視聴者の心を掴むような映像を届けるためには、カメラマンの専門的な技術と優れたセンスが必要不可欠です。
どんなアングルからどんなサイズで切り取るのか。
どの出演者をメインで撮ればよいのか。
その場で瞬時に判断して撮影していかなければいけません。
こうした撮影スタッフは、テレビ局から番組制作会社やプロダクションに外注されていることが多いのが現状です。
テレビ局の社員のなかにも映像取材を担当する人はいますが、採用数は非常に少なく、狭き門であることで知られています。
一般的には、外部の制作会社にカメラマンとして所属し、テレビ局からの依頼に応じて撮影に出向くのが基本です。
実力がある人はフリーランスのカメラマンとして活動することもできます。
「撮影スタッフ」の仕事紹介
撮影スタッフの仕事内容
ディレクターと力を合わせて映像を撮影
撮影スタッフの仕事は、スタジオ収録やロケの現場でカメラを回すことです。
テレビ番組のロケに行く際は、まずは事前にディレクターと内容に関する打ち合わせを行います。
番組の趣旨、放送時間帯、メインターゲットとなる視聴者、出演者、撮影のスケジュール。
まずはこのようなことを話し合い、スタッフ同士で情報を共有します。
番組の内容はテレビドラマやドキュメンタリー番組もあれば、生放送や実況中継もあります。
ときには交通事故の現場や災害の現場などに出向くようなものもあるので、撮影時にはさまざまな注意が必要です。
被害者や被災者の顔を映さないこと、危険な場所には立ち入らないこと、現場で見たことを口外しないことなど。
スタッフとして守るべきルールがたくさんあるのです。
打ち合わせが終わったら、撮影に使う機材を準備します。
音声を収録するスタッフ、三脚やレンズを持ち運ぶスタッフ、生中継の場合はケーブルをさばくスタッフなど、人員を確保することも必要です。
このような準備を経て、ロケの本番を迎えます。
ロケが始まったらディレクターの指示をもとに撮影を行いますが、生中継の現場ではカメラマン自身が瞬時に判断しなければいけないことも多くあります。
出演者のなかには、カメラを向けられて緊張してしまう人は少なくありません。
カメラマン自身が積極的にコミュニケーションを取ったり笑顔を見せたりして、現場の空気を作ることも大切です。
撮影スタッフになるには
撮影のスキルとセンスを磨いて就職
撮影スタッフを目指すのであれば、テレビ局や番組制作会社、プロダクションなどにカメラマンとして就職するのが近道になります。
テレビ局の場合は技術職としての採用になり、そのなかで放送技術や番組技術などの各セクションに配属されることが多いようです。
担当する番組も入社後に決まることになります。
ニュースの映像取材をするカメラマンと、ドラマやバラエティ番組の収録をするカメラマンでは仕事内容が大きく異なります。
本人の適性や能力を見ながら、上司が仕事を割り振ることになるのが一般的です。
番組制作会社やプロダクションの場合は、入社するとまずは先輩カメラマンのアシスタントとして経験を積むことから始めます。
機材の扱い方からディレクターとの付き合い方、出演者や取材相手との信頼関係の築き方まで、先輩の仕事を見ながら覚えていきます。
個人によって差はあるものの、およそ半年から数年ほどのアシスタント期間を経て、一人前のカメラマンとして働けるようになります。
撮影スタッフとして就職するにあたって、求められる資格や免許はありません。
どちらかというと個人のセンスや体力が求められる職業なので、実力主義の世界といっても過言ではありません。
学歴に関しても特に求められないことが多いようですが、放送系の専門学校で撮影技術を学んでいると役に立つでしょう。
ただし、テレビ局の社員となる場合は大卒や高専卒が条件になることがあるので注意が必要です。
撮影スタッフの学校・学費
専門学校や放送学科で学ぶ
テレビや映画の撮影スタッフとして働きたいのであれば、就職活動をする前に自分のセンスやスキルを磨いておくとよいでしょう。
大学の放送学科や映像の専門学校には撮影技術を学べるコースがあり、カメラの種類や機材の扱い方についてゼロから学ぶことができます。
実際に撮影した映像を編集することで、自分の撮った映像がどのようにして形になっていくかを知ることもできます。
カメラマンは資格や免許ではなくて実力がものをいう職業なので、こうした学校で基礎を身につけておくと将来的に役立つといわれています。
ただし、学費が年間100万円ほどかかるので、経済的に厳しいという人はカメラマンのアシスタントのアルバイトをしながら実践で学ぶ方法もあります。
撮影スタッフの資格・試験の難易度
資格よりもセンスが大切
撮影スタッフとして働くために必要となるのは、さまざまな撮影機材を扱う知識とスキルです。
また、美しい映像を切り取るための芸術的なセンスや、周囲の人と信頼関係を築くことができるコミュニケーション能力も求められます。
このような能力はペーパーテストで証明できるものではないので、採用試験では特定の資格や免許は求められない傾向があります。
ただし、仕事内容によっては自分で車を運転する必要があるので、運転免許が必要とされることはあります。
学歴に関しては、テレビ局の社員の場合は大卒や高専卒が条件となっていることがあります。
番組制作会社やプロダクションの場合は、学歴不問としていることも珍しくありません。
映像や放送の専門学校の出身者を積極的に採用するところもあります。
撮影スタッフの給料・年収
テレビ局の社員は高収入に
撮影スタッフとして働いている人は、テレビ局や番組制作会社、プロダクションなどに雇用されています。
一般的には、テレビ局の技術部の社員になることができれば、高い収入と充実した福利厚生を期待することができます。
扶養手当や住宅手当などの各種手当もありますし、経営が悪化しない限りは年に数回のボーナスもあります。
キー局ともなれば、30代で年収1000万円に届くことも不可能ではありません。
しかし、このようなテレビ局の新卒採用は非常に狭き門であることで知られています。
技術職として採用されるのは若干名であることが多いので、現実的にはテレビ局のカメラマンを目指すのはかなり厳しい道だといえるでしょう。
東京や大阪などの大都市にたくさんある番組制作会社やプロダクションであれば、採用のチャンスが広がります。
給料は企業の規模やキャリアによって大きく異なりますが、正社員のカメラマンならば、年収300~500万円ほどになることが多いようです。
未経験者の場合、入社後は先輩カメラマンのアシスタントとして経験を積むところからスタートします。
企業によっては、アシスタントの期間はまだまだ一人前とはいえないので、アルバイトという扱いになることもあります。
撮影スタッフのアルバイトの平均的な時給は、1000円~2000円ほどです。
体力的にも経済的にも楽ではありませんが、正社員を目指すのであれば見習い期間にコツコツ努力することが大切です。
撮影スタッフの現状と将来性・今後の見通し
動画コンテンツの増加とともに高まる需要
ひと昔前までは、映像コンテンツといえばテレビ番組やCM、映画しかありませんでした。
しかし、近年では個人による動画チャンネルや企業によるインターネット広告が急増しており、動画コンテンツの幅が広がっています。
これと同時に、撮影スタッフの仕事の幅も広がっているのです。
さまざまな企業がカメラマンの求人を出しているので、仕事をしてみたい人は求人サイトで探してみるとよいでしょう。
また、昔に比べると機材のレベルが格段に上がっており、家庭向けのハンディカムでも十分に美しい映像が撮れるようになっています。
予算がなくてもセンスやアイディア次第で魅力的な映像を撮ることが可能なので、チャレンジする価値のある業界といえるでしょう。
撮影スタッフの就職先・活躍の場
テレビ局や番組制作会社に就職
撮影スタッフを目指す人の主な就職先となっているのは、テレビ局や番組制作会社、プロダクションです。
テレビ局の社員が最も待遇がよいことで知られていますが、技術職の採用人数は非常に少ないのが現状です。
かなりの難関だと考えておいたほうがよいでしょう。
番組制作会社やプロダクションでは未経験者でも採用を行っていることが多く、年齢制限も特にありません。
入社したあとは先輩カメラマンのアシスタントとして撮影の補助につき、三脚や機材を持って現場を駆け回ります。
仕事を覚えたら少しずつ撮影の仕事を任せてもらえるようになります。
このような企業に所属して一通りの技術を身につけたあとに、フリーランスのカメラマンになる人もいます。
撮影スタッフの1日
出演者や天候に左右されるスケジュール
撮影スタッフの予定は、担当している番組の放送スケジュールによって決まります。
ここでは、朝の情報番組を担当しているカメラマンの1日を紹介しましょう。
撮影スタッフのやりがい、楽しさ
刺激的な毎日を送れる楽しさ
テレビや映画の撮影スタッフとして働いていると、たくさんの素晴らしい出会いがあります。
ドラマの撮影では人気俳優と一緒に仕事をすることができますし、バラエティ番組の収録では芸人のトークを聞くことができます。
スポーツの中継ではアスリートの迫力ある試合を見ることができ、旅番組では日本中のさまざまな場所の魅力を知ることができます。
担当している番組によって会う人も行く場所も異なるので、仕事に飽きがくるということがありません。
カメラを通して、いつも新しい出会いがあり、学びや発見があるのです。
「面白いことがしたい」「刺激的な毎日を送りたい」という願望がある人にとっては、この上なくやりがいのある仕事になるでしょう。
撮影スタッフのつらいこと、大変なこと
ハードワークで肩や腰を痛めることも
撮影スタッフは、重い機材を持って動き回るのが日常茶飯事の職業です。
屋外でのロケやスタジオ収録ではカメラやレンズ、三脚などさまざまな機材を使います。
アシスタントがいれば手伝ってくれることもありますが、基本的には自分で機材の運搬やセッティングをしなければいけません。
また、旅番組やドキュメンタリー番組では、長時間にわたってカメラを肩に担いだまま取材相手を追いかけることもあります。
こうしたことから、番組の撮影を担当しているカメラマンは、腰や肩を痛めることが多いといわれています。
撮影中は目を酷使するので、頭痛に悩まされているという人もいます。
ハードワークからくる全身のつらい症状は、まさに職業病といってもよいでしょう。
撮影スタッフに向いている人・適性
映像が好きでセンスがある人
撮影スタッフに向いているのは、とにかく映像を撮ることが大好きという人です。
美しい風景や可愛い動物、珍しいお店や素敵な人を見つけたら思わずカメラに収めたくなってしまう。
自分が撮る映像を通して誰かに伝えたいメッセージがある。
そんな人であればカメラマンの仕事を心から楽しむことができるでしょう。
もうひとつ、プロとしてやっていく以上は、芸術的なセンスも必要不可欠です。
どんなアングルで、どんなサイズで被写体を切り取れば、魅力的な映像になるのか。
瞬時に判断できるようなセンスがある人は、業界のなかでも高い信頼を得ることができます。
幅広いジャンルの番組で活躍することができましょう。
撮影スタッフ志望動機・目指すきっかけ
映像を通して人々に感動を届けたい
撮影スタッフを目指す人は、もともと映像の仕事に興味があったという人が多いようです。
「子どもの頃からテレビが大好きだった」「人生を変えてくれた映画があった」「好きな映像作品がある」。
そんな理由から、自分も番組制作にスタッフとして携わりたいと思うようになるのでしょう。
また、「もともとカメラが趣味だった」とか「放送部や映画研究会で活動していた」ことをきっかけに撮影スタッフを志望する人もいます。
この他には、学生時代にテレビ局でカメラアシスタントのアルバイトをしていて面白かったので、そのまま就職するという人もいます。
好きな気持ちが仕事に直結しやすいのが撮影スタッフの特徴です。
撮影スタッフの雇用形態・働き方
アシスタント期間はアルバイトということも
撮影スタッフの雇用形態は、個人の能力やキャリアによってさまざまです。
たとえば、ベテランのカメラマンは番組制作会社やプロダクションから正社員として雇われることが多い傾向があります。
仕事は会社が割り振ってくれるので、収入も安定しています。
一方で、この業界に飛び込んだばかりのアシスタントは、一人前になるまでアルバイトやパートという扱いで雇用されることも珍しくありません。
時給制で働くことになるので収入は不安定です。
さらに、業界内である程度の実績と人脈ができているカメラマンの場合は、フリーランスのカメラマンとして活動していることがあります。
フリーランスは実力に応じて高い収入を得ることも可能ですが、仕事がなくなるリスクもあるので、安定した働き方はできないのが難点です。
撮影スタッフの勤務時間・休日・生活
流動的なスケジュールになる毎日
撮影スタッフの勤務時間は、ロケや収録のスケジュールに合わせて決まります。
たとえば、生放送の番組のカメラマンを担当している人は、その前後の時間帯がメインの勤務時間になります。
スタッフの打ち合わせから始まり、機材の準備、リハーサル、本番、片付け、反省会までが一連の作業です。
生放送がない日が、必然的に休日になっていることが多いようです。
ロケのカメラマンを担当している人は、取材相手の都合や天気予報に合わせて予定を組みます。
屋外のロケが入る場合は「雨だから延期」「花が開花したから前倒しで行く」ということが珍しくないので、スケジュールは流動的になります。
週休二日が理想ではありますが、忙しいときにはなかなか休日が取れないこともあるようです。
撮影スタッフの求人・就職状況・需要
中途採用も多い業界
撮影スタッフは、番組制作会社やプロダクションから数多くの求人が出ています。
人材の入れ替わりの激しい業界なので、新卒だけではなく中途採用に積極的な企業も多いのが特徴です。
経験者のカメラマンであれば、即戦力として正規雇用されるチャンスがあります。
ここでいう経験というのは、必ずしもテレビや映画の仕事である必要はありません。
「趣味でよくカメラを使っている」とか「動画サイトの映像を自分で撮影している」、あるいは「結婚式場でビデオの撮影の仕事をしていた」などの経験も役立ちます。
一方、未経験者の場合はアシスタントとしてアルバイトで雇用することがあります。
いずれにしても雇用条件に関しては事前にしっかり確認しておくことが大切です。
撮影スタッフの転職状況・未経験採用
未経験者でもチャレンジできる
テレビ業界の仕事やカメラマンという職業に憧れを持つ人は少なくありません。
未経験の人が転職で撮影スタッフにチャレンジすることはできるのでしょうか。
これに関しては企業によるものの、中途採用で「未経験者も歓迎」としているケースは珍しくありません。
映像や放送に関する専門学校で学んだことがあることが理想ではありますが、こうした知識は入社後に先輩の仕事を見ながら学ぶことも可能です。
アシスタントとして現場を駆け回るうちに自然と身につく技術が多いといわれています。
年齢や性別に関する決まりもないので、最近では女性のカメラマンも多く活躍しています。
ただし、カメラマンの仕事は体力がものをいうので、自分でしっかり体調管理ができることが大切です。
「特機」とは
天候や取材相手の都合でスタンバイに入ることも
撮影の仕事は、自分の思い通りにスケジュールが立てられるわけではありません。
旅番組の場合、天候に恵まれなければロケができないことが多く、天気予報をチェックしながら現場で待つことがあります。
自然番組の場合、野生の動物や魚の姿をとらえる必要があるため、彼らの縄張りの近くで長時間待つことがあります。
ニュース番組の場合、被疑者の逮捕の瞬間を生中継で伝えるため、夜を徹して張り込みをすることがあります。
このように、大事な瞬間をカメラに収めるために長時間待機(スタンバイ)するのも、撮影スタッフの重要な仕事です。
肉体的にも精神的にも負担の大きい作業になりますが、そのぶん狙い通りの映像を撮影できたときの喜びも大きいのです。