照明スタッフの仕事内容・なり方・年収・資格などを解説

「照明スタッフ」とは

照明スタッフの仕事内容・なり方・年収・資格などを解説

舞台や撮影現場、イベント時に照明を用いた演出をし、場の雰囲気づくりをする。

照明スタッフは、コンサートや演劇などの舞台、テレビや映画の撮影現場、あるいは結婚式やファッションショーなどのイベントの場で、照明を用いた演出を手掛ける技術職です。

舞台監督やディレクターなどと打ち合わせながら、使用する照明機材や内容を考え、場のコンセプトや雰囲気、出演者の魅力を引き出すためのライティングを行います。

この仕事に就くうえで必須の資格はありませんが、専門的な知識・技術が要求されるため、舞台芸術や照明について学べる専門学校や大学を卒業したのち、制作会社やイベント会社、テレビ局などに就職するのが王道のルートです。

平均年収は300万円~600万円程度と幅があり、正社員とアルバイトでも大きな違いが出ます。

近年の照明業界では、LEDを使ったもの、映像と音楽を組み合わせたものなど新しいスタイルが次々と生み出されており、照明スタッフには、時代のニーズに合わせた照明技術を駆使することが求められます。

「照明スタッフ」の仕事紹介

照明スタッフの仕事内容

照明機材を使い、場にふさわしい雰囲気を演出する

照明スタッフの仕事は、ミュージシャンのコンサートや演劇の舞台、テレビや映画の撮影現場、あるいは結婚式やファッションショーなどの各種イベントにおいて、照明を使った演出を手掛けることです。

舞台監督やディレクターと打ち合わせをしながら、使用する照明の機材や照明チェンジのタイミングなどを決め、場の雰囲気にふさわしく、出演者の魅力を最大限に引き出すためのライティングを行います。

照明は、音響と同様に、それひとつで場の印象を大きく左右したり、会場を盛り上げたりする重要な要素です。

照明スタッフは、照明に関するあらゆる知識をもった技術職として、舞台やイベントを成功させるために他のスタッフと協力して動きます。

大掛かりな照明を動かしていく場合には、照明のプランニングを行うプランナーと、機材を扱うオペレーターのチームに分かれて仕事をします。

現場ごとに臨機応変な動きが求められる

照明スタッフは、光や電気に関する知識はもちろんのこと、芸術的なセンスや高いコミュニケーション能力が必要とされる職業です。

照明機材の搬入やセッティング、撤収作業にも携わるため、体力も必要とする職業です。

現場ごとに照明の内容は異なるため、臨機応変な動きが求められる仕事でもあります。

照明スタッフになるには

大学や専門学校で専門的に学んでから就職する人が多い

照明スタッフになるまでのルート

照明スタッフは、なるために特別な資格や免許が必要とされる職業ではありません。

学歴も厳しく問われないことが多いですが、専門的な知識・技術が求められる職業であることから、一般的には舞台芸術や照明に関して学べる専門学校や大学に進学し、卒業後に照明を扱う専門会社や制作会社などへ就職する人が多いです。

ただし、機材の扱い方、光や電気に関する知識、現場での立ち回り方などは実務を通じて身につくことも多く、通常、就職してすぐ一人前としてみなされることはありません。

まずはアシスタントや見習いとして現場に出て、先輩の下で仕事を覚えながら徐々にステップアップを目指します。

大学などには通わず現場に飛び込む道も

照明スタッフは熱意さえあれば、高卒などの学歴で、すぐに現場に入ることも可能です。

専門学校や大学に通う金銭的・時間的な余裕がない場合には、アシスタントの照明スタッフを募集する企業を探してみるとよいでしょう。

やる気が認められれば、そのまま正社員になれるチャンスもあります。

ただし、この場合にはアシスタントという名の雑用からスタートすることが多く、仕事は非常にハードなものになる覚悟が必要です。

技術職特有の上下関係の厳しさもやや色濃く残っている職場が多く、一人前になる前に仕事を辞めてしまう人もいます。

照明スタッフの学校・学費

照明の知識・技術を学べる専門学校や大学への進学がおすすめ

照明スタッフになるために、必ず通うべき学校はありません。

ただし、早い段階で照明の知識や技術を学びたいと考えるのであれば、舞台芸術や照明に関して学べる専門学校や大学に進学するのがおすすめです。

音楽・イベント系の専門学校などでは、照明スタッフの育成を目的とした「照明コース」を設けているところがいくつかあります。

入学時点では特別なスキルは問われず、入学後に基礎から学び、現場で役立つ実践的な力を身につけていくことが可能です。

学校によっては照明の専門会社や制作会社とのパイプがあり、直接学校に求人が届きますし、カリキュラムは2年制のところが多いため、早く現場に出たい人には向いています。

一方、芸術系の大学では4年間かけて舞台照明についての知識・技術を身につけるとともに、一般教養についても広く学べます。

音響や映像などまであわせて学べる大学もあるため、さまざまな学校のカリキュラムを比較してみるとよいでしょう。

照明スタッフの資格・試験の難易度

照明に関連する資格はあるが、さほど重視されない

照明スタッフの仕事では、資格はあまり重視されません。

資格よりも、技術や経験、そして熱意が問われることが多いため、特別な資格がなくても就職することは十分に可能です。

ただし、照明に関連する民間の資格は、以下のようにいくつかあります。

・照明コンサルタント(一般社団法人照明学会)
・照明士(一般社団法人照明学会)
・舞台・テレビジョン照明技術者技能認定(公益社団法人日本照明家協会)

照明学会の2つの資格は、同学会が開講する通信講座で学習することで取得を目指せます。

日本照明家協会の資格は、基本的には実務経験者を対象としたものですが、2級は協会が定める学校に進学して所定の科目を履修すると取得可能です。

企業によっては、このような資格を持っていると優遇されることもあり、自身の知識やスキルを証明するために取得しておく人もいます。

照明スタッフの給料・年収

個人の能力・経験で給料が決まるケースが多い

照明スタッフの給料や年収は、勤務先や雇用形態、経験などによって大きく左右されますが、平均年収は300万円〜600万円くらいといわれています。

比較的高収入を得やすいのは、大手テレビ局の技術職として正社員で雇用されている人や、照明スタッフとして豊富な経験を積み、フリーランスになって活躍している人です。

一方、照明を請け負う中小規模の専門会社や、テレビや映画の制作会社などでは、専門的な技術が求められる一方、そこまでよい待遇で働けない場合があります。

技術職であることから、基本的には個人の経験や能力にもとづいて給与が設定される職場が多く、人によってかなり収入に差が出ることもめずらしくありません。

見習い時代は厳しい待遇となることも

照明スタッフの世界は実力主義であり、ある程度の経験を積んで一人前とみなされるまでは「見習い」とみなされ、非常に給料が低めとなる場合があります。

未経験者の場合、最初はアルバイトなど非正規雇用でスタートし、経験を積んで熱意が認められると正社員になれる職場も少なくないようです。

アルバイトの場合の給料は時給制となり、仕事量に応じて収入が不安定になりがちです。

見習い社員の試用期間や待遇については企業ごとに違うため、求人票をよくチェックしておきましょう。

照明スタッフの現状と将来性・今後の見通し

技術の進歩により、新しい照明の表現にも注目が集まる

近年では、照明や映像技術の革新とともに、照明スタッフの仕事の幅が広がっています。

コンピューターを使って照明のプログラミングやコントロールをすることで多彩な演出パターンを組み込めるようになり、より自由な表現ができるようになってきました。

また「プロジェクションマッピング」という建物の壁に立体的な映像を映し出す技法が確立されるなど、映像と音楽や照明を組み合わせた新しいショーのスタイルも増えています。

一方では「省エネ」「節電」「エコ」が叫ばれる時代のなか、LEDの照明器具を使用するなど、電力を無駄遣いしない仕組みや演出、自然と調和した照明のあり方を考えることも求められるようになっています。

照明の表現の幅が広がっている以上、それが活用される場や機会も増えています。

技術職がゆえの厳しさもありますが、まだまだ大きな可能性や課題があり、挑戦しがいのある職業といえるでしょう。

照明スタッフの就職先・活躍の場

照明の専門会社からホール、テレビ局など多種多様

照明スタッフの代表的な活躍の場のひとつは、照明業務を請け負う専門会社や映像系の制作会社です。

比較的規模の小さな会社もありますが、さまざまな現場の仕事に携わることができ、経験を積みながら照明に関する高度なスキルも身につけやすいです。

このほか、公共のコンサートホールやテレビ局でも照明スタッフは活躍しています。

ホールではイベントの内容に合わせて、そこにある機材を巧みに操る技術が求められますし、テレビ局では番組の内容に合わせてロケに出かけることもあるなど、仕事の流れは勤務先によって異なります。

また、大規模な結婚式場でも、専属の照明スタッフを雇う場合があります。

照明スタッフの1日

勤務先や現場によって動き方は異なる

照明スタッフの1日の過ごし方は、勤務先のほか、現場によっても大きく異なる場合があります。

ここでは、照明の専門会社に在籍し、コンサートイベント時に照明を担当するスタッフのある1日の動きを紹介します。

9:00 現場入り
車に機材をのせて現場に入ります。
9:15 搬入作業
他のスタッフに挨拶しつつ、速やかに機材を搬入します。
11:00 照明調整
「シュート」と呼ばれる照明のセッティングと調整作業をおこないます。
12:00 休憩
13:30 リハーサル
計画通りに照明を動かせるように細かくチェックします。
16:30 休憩
17:00 スタッフミーティング
本番の注意点や進行について再度確認。
18:00 開場
18:30 開演
21:30 バラシ(撤収作業)
本番終了後は速やかに撤収し、業務を終えて帰宅します。

照明スタッフのやりがい、楽しさ

緊張感を乗り越えて現場が成功したときの達成感

照明スタッフの仕事は、非常に刺激的です。

現場は一つたりとして同じものはありませんし、どれだけ経験を積んだとしても、本番前には常に新鮮な緊張感に包まれます。

決して失敗は許されない仕事だからこそ、プレッシャーは大きいですが、その分、無事に現場が成功したときの達成感は計り知れません。

イベントや舞台の裏側を覗けるのも楽しいところで、もともとエンターテインメントが好きな人にとっては、ワクワクすることが多いでしょう。

また、照明スタッフの仕事は実力主義のため、地道に経験を積んでスキルアップすれば、より難しい業務、責任ある役割を任されるようになります。

後輩たちから信頼され、現場のリーダーとしてうまく回せるようになったときにもやりがいを感じられるでしょう。

照明スタッフのつらいこと、大変なこと

拘束時間が長くなりがちで、心身ともにタフさが求められる

拘束時間が長くなりがちで、心身ともにタフさが求められる

照明スタッフに向いている人・適性

照明で表現することに強い関心をもち、技術を高められる人

照明スタッフに向いているのは、頭を使って照明でどのように表現するかを考えられる豊かな感性をもつ人です。

照明のプランニングをする際には、舞台・イベントの制作者や主催者、ディレクターの意図を汲み、出演者を最も輝かせることができるライティングを考えていかなくてはなりません。

オペレーターとして現場で照明機材を操作する場合も、演劇の場面転換や音楽の転調のタイミングに合わせてセッティングを変えることになるため、演出を理解できる能力が求められます。

「演劇を見ていると眠くなってしまう」「音楽が苦手で曲が覚えられない」というような人では厳しいでしょう。

もともと芸術的なものに高い関心があり、ジャンル問わず、多様な舞台を見ることやコンサートやライブを楽しめるタイプの人は、照明スタッフとして前向きに仕事に取り組めるはずです。

また、専門的な知識が求められる技術職であるため、自分の仕事に熱中して、日々地道に技術力を高めていく努力も不可欠です。

照明スタッフ志望動機・目指すきっかけ

舞台・テレビなどエンターテインメントへの興味関心がきっかけに

照明スタッフを目指す人の多くが、子どもの頃からテレビやコンサート、舞台芸術が好きだったといいます。

たとえば、大好きなミュージシャンのライブを何度も見に行くうちに、場の印象をガラッと変える照明の美しさに感動し、この仕事を志すようになった人などがいます。

一方、テレビ番組制作の照明スタッフを目指す場合には、もともと芸能界に憧れの気持ちがあったり、番組作りを裏で支える役割に興味をもったりする人が多いようです。

また、ライトを巧みに操る職人的な要素に惹かれて、というような人もいます。

照明スタッフの活躍の場は多岐にわたるため、志望先で自分がどのように力を発揮していきたいのかをイメージして、志望動機を考えていくとよいでしょう。

照明スタッフの雇用形態・働き方

正社員からアルバイト、フリーランスまで多様な働き方

照明スタッフの雇用形態は、正社員をはじめ、契約社員や派遣社員、アルバイト・パートと多様です。

規模が大きな制作会社や、高度な技術力を求める照明の専門会社などでは、正社員を中心に雇用しているところが多く見られます。

しかし、業界全体に目を向けてみると、契約社員やアルバイトなどの非正規雇用中心で回している会社も決して少なくないようです。

就職先を探す際には、自分の理想とするキャリアパスをよく考えて、注意深く考えていくほうがよいでしょう。

照明スタッフは個人の技術力や経験が重視される職業であるため、まだ経験が浅い新人時代は、なかなか安定した働き方ができない可能性もあります。

多様な現場を経験したベテランの照明スタッフになると、独立してフリーランスで仕事を続けていく人もいます。

照明スタッフの勤務時間・休日・生活

拘束時間が長くなりがちで、不規則な生活を送る場合も

舞台や演劇、音楽、結婚式などのイベントに関わる照明スタッフは、イベント当日を中心に据えて、仕事のスケジュールを組むことになります。

一般的にイベントは土日祝日に集中することが多いため、平日に照明のプランニングや機材の準備をしておき、土日祝日に本番を迎える流れになるのが、イベントに携わる照明スタッフの働き方です。

一方、テレビ局や芸能関係のスタジオでの撮影に携わる照明スタッフの場合は、平日の撮影に参加して土日は休めることもあります。

ただし、いずれの場合も終了時間がハッキリとは読めず、本番の進行が滞ったときや撤収に時間がかかるときには長時間の残業が発生することはめずらしくありません。

不規則な生活になりがちなことは、覚悟しておくほうがよいでしょう。

照明スタッフの求人・就職状況・需要

多様な企業で求人が出るが非正規で働く人も多い

照明スタッフを多く募集するのは、公共のコンサートホールやテレビ局、照明を扱う専門会社や制作会社などです。

このほか、大規模な結婚式場でも求人が出ることがあります。

職場によって手掛ける仕事内容やイベントの内容に大きな違いがあるため、どのような照明に携わりたいのかをよく考えて就職先を選ぶとよいでしょう。

規模が大きめの企業では、新卒の学生を正社員として採用することも多いですが、業界全体で見ると契約社員やアルバイトなど非正規で働く人も決して少なくありません。

実務未経験者の場合は、まずアルバイトの見習いとして入社し、数年間の経験を積んでようやく正社員にキャリアアップできるケースも多いようです。

また、照明の仕事はコンサートやライブ、舞台、結婚式などのイベント時に発生するため、繁忙期のみアルバイトやパートを雇う企業もあります。

照明スタッフの転職状況・未経験採用

経験者は年齢問わず歓迎されるケースが多い

照明スタッフへの転職は、経験さえあれば、さほど難しいものではありません。

技術職のため、学歴や資格などよりも、どれだけ照明に関する知識・スキルがあるかが重視されます。

経験を積むと、よりよい待遇やキャリアアップのチャンスを狙って、業界内で勤務先を転々と変えていく人も少なくないようです。

一方、未経験から照明スタッフへ転職を目指す場合には、ややハードルが高いことを認識しておく必要があるでしょう。

基本的に新人はアシスタントからのスタートになり、その時期は雑用中心で待遇もあまりよくない場合があります。

上下関係もやや厳しく、早く業界に入った人が上の立場とみなされるため、職場によっては年下の上司の指示を受けて働かなくてはなりません。

こういった厳しさも覚悟して、本当に転職する意思を持てるかどうか考えていくことをおすすめします。

舞台照明の仕事内容

光と闇を効果的に演出して舞台作品の世界観をつくり上げる

舞台照明とは、おもに演劇など、ホールの舞台で演じられる作品の照明のこと、あるいはその照明を計画して実際につくり出すことを意味します。

舞台の袖幕や上部のスポットライト、舞台奥のバックライト、あるいは「ころがし」と呼ばれる舞台の下方面からの照明などを操って、演者が最も輝く照明をつくり出します。

たとえば演劇であれば、場面によっては暗闇の中で演者だけにピンスポットを当てて観客の視線を集中させたり、場面転換時にスムーズに暗転・明転をつくり出したりと、照明は作品の質を高めるための重要な要素を担います。

このため、舞台照明の担当者は、作品全体の流れをきちんと押さえたうえで、演出者や美術担当者とも打ち合わせを重ねながら、各場面で一つひとつ適切な照明計画をプランニングして実施します。

ライブ・コンサート照明の仕事内容

ミュージシャンの気分を高めて観客を盛り上げる照明を演出

ライブ・コンサート照明とは、おもにライブハウスやコンサートホールなどで実施される、ミュージシャンのライブやコンサートの照明のこと、あるいはその照明を専門に担当する人のことを意味します。

ライブ・コンサート照明で重視されるのは、いかにしてステージの演出効果を高めることです。

音楽の曲調や盛り上がり、イベントのコンセプトに合わせて、ふさわしい照明計画をプランニングし、本番は実際に照明機材を操って舞台を演出します。

たとえば、最も曲が盛り上がる場面ではカラフルな照明を激しく動かしたり、しっとりとした曲ではシックな色合いの照明で場の雰囲気を落ち着かせたりと、綿密に照明の内容を考えていきます。

また、現場ごとに機材の搬入やセッティング、終演後には撤去作業なども担当し、体力や臨機応変な動き方が求められます。