音声スタッフの仕事内容・なり方・年収・資格などを解説

「音声スタッフ」とは

音声スタッフの仕事内容・なり方・年収・資格などを解説

美しい音を届けるために、スキルを磨きながら最新の機材を駆使するスペシャリスト。

音声スタッフとは、テレビやラジオの制作現場で音声の収録を担当するスペシャリストのことです。

インタビュー番組であれば、聞き手役であるMCとゲストの声が明瞭に聞こえるように。

音楽番組であれば、それぞれの楽器の響きとボーカルの声のバランスが美しくなるように。

スポーツ中継やドキュメンタリー番組であれば、現場で聞こえる声や音のひとつひとつを拾い上げられるように。

さまざまな最新の機材を使い分けて、最適な音の聞こえ方を模索しながら慎重に調整していきます。

カメラマンの場合はテレビ局で正社員として雇用されることもありますが、音声スタッフの場合は外注となっていることが多いようです。

番組制作会社やプロダクション、音響専門の会社などで雇用されることが多く、仕事の依頼を受けてテレビやラジオの現場に出向くことになります。

音声スタッフは、機材に関する幅広い知識と技術力の高さに加えて、音感やセンスが求められる職業です。

実力さえあれば、各方面からひっきりなしに声がかかるため、仕事には困りません。

企業に所属して経験を積んだあと、独立してフリーランスの音声スタッフとして活躍している人もいます。

「音声スタッフ」の仕事紹介

音声スタッフの仕事内容

音声を収録して美しく聞こえるよう調整

音声スタッフは、テレビやラジオの番組を制作する際に、音声の収録や調整を担当します。

ドラマや音楽番組、ドキュメンタリー、スポーツ中継など、さまざまな番組に携わっており、映画の制作現場を担当している人もいます。

音声スタッフの重要な使命は、音楽や声をより美しい形で視聴者に届けることです。

カメラマンの撮影する映像にも音声は収録されていますが、あくまでも映像をメインに撮影しているため、現場の音や声は上手く拾えていません。

遠くから撮影しているため取材相手の声が小さかったり、複数の人間が同時に話しているため話の内容が聞き取りづらかったりします。

屋外での撮影の場合は、現場の雨や風が強くてノイズが入っていることも多いのです。

こうした事態を防ぐために、番組の制作現場には、専用のマイクで音声の収録を行う音声スタッフがいます。

長い棒の先にフサフサの毛のようなものがついたガンマイクを持ち、ヘッドフォンで現場の音声を聞きながら、ミキサーを使って音や声を調整するのです。

もちろん、ただ漠然と収録に参加すればよいというわけではありません。

事前にディレクターから台本を受け取り、どんな出演者がいてどんな内容を収録するのか理解した上で機材を準備しておくことが大切です。

現場では、カメラマンの動きを見ながら、自分が映り込まないように的確に位置取りをするスキルも欠かせません。

一見すると地味な仕事に見えるかもしれませんが、番組の出来を最終的に左右するのは音声の美しさということも多々あります。

番組の制作現場には決して欠かすことのできない、音のスペシャリストです。

音声スタッフになるには

映像の専門学校やアルバイトを通してスキルを修得

音声スタッフを目指すのであれば、テレビやラジオの番組制作会社やプロダクションで求人を探すのが一般的なルートです。

「テレビ局やラジオ局の正社員になりたい」と考える人もいるかもしれませんが、音声の仕事は外注となっていることが多いのが現状です。

局員としての採用はほとんどない、と理解しておいたほうがよいでしょう。

音声スタッフとして働くにあたって、必ず取得しなければいけない資格や免許はありません。

学歴に関しても特に決まりはないので、大学はどんな学部や学科を卒業していても問題ありません。

もちろん、短大の出身の人、高卒や専門学校卒業の人もこの仕事に就くことは可能です。

企業によっては「未経験者も歓迎」としており、熱意や適性があれば採用してもらえます。

この場合は、入社後の研修やアシスタントを通して経験を積むことになります。

こうしたルートでも問題はありませんが、知識やスキルがある人のほうが即戦力として働ける可能性が高くなることは間違いありません。

専門的な勉強をしておきたいという人は、映像系の専門学校でカメラやミキサーの扱い方を学んでおくと役立つといわれています。

また、テレビ局やラジオ局が募集する音声補助のアルバイトに応募して働くことで実践的なスキルを身につける人もいます。

アルバイトをすると自分の適性を見極めることもできるので、音声スタッフに興味がある人は学生時代にバイトをするのもおすすめです

音声スタッフの学校・学費

映像系の専門学校で学ぶ

テレビやラジオなどの番組を制作するスタッフを目指す人のなかには、映像系の専門学校に進学する人がいます。

専門学校は、映像プランや―やディレクター、カメラマンや音響スタッフなど、さまざまな職種を育成するためのコースがあります。

音声について勉強したいのであれば、撮影機材や音響機材について学べるコースを選んでおくと将来的な選択肢も広がります。

映像系の専門学校は、学校によって学費が異なりますが、一般的には、年間100万円ほどかかると考えておくとよいでしょう。

映像系の専門学校に在学しながら、テレビ局やラジオ局のアルバイトをして学費や生活費の足しにする人もいます。

アルバイトをするとお金を稼ぎながら現場での経験を積むことができるので、一石二鳥です。

音声スタッフの資格・試験の難易度

資格や免許は必要なし

音声スタッフとして働くにあたって、必要とされる資格や免許はありません

採用試験に関しても「未経験者歓迎」としているところが多いので、特に難易度が高いというわけではないようです。

ただし、業務の内容によっては、音声スタッフがロケハンやロケの際に車の運転を担当することがあります

採用の面接の際に自動車の運転免許の有無を尋ねられることがあるので、免許に関しては早めに取得しておいたほうがよいでしょう。

もうひとつ、音声スタッフとして働くにあたって必ず求められるのは、耳のよさです。

音声スタッフは、ロケや収録の際に必要な音や声を取りこぼさないよう、ヘッドフォンを通して常に音を聞いていなければいけません。

高い音や低い音、大きい音や小さい音、どんな音もしっかり聞き取れる聴力があることが絶対条件です。

音声スタッフの給料・年収

雇用条件によって給料が変わる

音声スタッフの給料は、それぞれの雇用形態や働いている企業によって大きく異なります。

音声スタッフとして働いている人の多くが、番組制作会社やプロダクション、音響の専門会社などで働いています。

正社員であれば、毎月の給料に加えてボーナスや各種の手当てが支払われることがあり、年収にすると300万円前後になります。

ただし、これはあくまでも東京や大阪のような大都市にある企業や、業界の中で大手とされている企業の場合です。

地方の番組制作会社の場合は社員が数人しかいないことも多く、正社員であっても年収200万円ほどということは珍しくありません。

正社員ではなくて契約社員の場合、福利厚生にはあまり期待できないことが多いようです。

就職する際に、収入に関してはしっかり確認しておいたほうがよいでしょう。

また、音声スタッフとして働いている人のなかにはパートやアルバイトとして雇用されている人も少なくありません。

番組制作会社やプロダクション、音響の専門会社などはもちろんのこと、テレビ局やラジオ局から直接パートやアルバイトとして雇用されている人もいます。

この場合、給料は時給制で支払われることになります。

音声スタッフのアルバイトは、一般的には時給1000~2000円ほどです。

ロケや収録の仕事の場合、撮影が長引いて深夜の業務になることがありますが、深夜になると時給もアップするので収入としては高くなります。

この他に、フリーランスの音声スタッフとして働いている人もいますが、フリーランスの場合は収入は個人によって大きく異なります。

音声スタッフの現状と将来性・今後の見通し

時代とともに求められるのは美しい音声

テレビ局が制作して放送している映像は、時代の移り変わりとともに年々クオリティが上がってきています。

撮影機材のレベルが上がり、編集機でできることが増え、テレビそのものの画質が上がった。

その結果、まるで映画のように美しい映像が流れることが珍しくなくなったのです。

こうした変化に伴って、画質だけではなく音質にもクオリティの高さが求められる時代になってきています。

テレビ専用のスピーカーをつけている家庭もあるので、ノイズがなくてバランスよく調整された美しい音声を流すことが大切です。

高い音質を確保するため、優秀な音声スタッフを求めている企業が多いのが現状です。

スキルさえあれば、これからの時代さまざまな職場でチャンスは広がるでしょう。

音声スタッフの就職先・活躍の場

番組制作会社やプロダクションに所属

音声スタッフが就職するのは、テレビやラジオの番組制作会社やプロダクション、音響を専門にする会社です。

正社員としての雇用もありますが、どちらかというと契約社員やアルバイトなどの雇用で働いている人が多いのが現状です。

このような企業には所属せずに、テレビ局やラジオ局から直接雇われるケースもありますが、基本的には非正規雇用となります。

音声スタッフは技術やセンスがものをいう仕事なので、実力のある人は各方面から仕事の依頼が来ることになります。

独立してフリーランスの音声スタッフとして活躍することもできますが、業界内に広い人脈を作っておかなければ成功は厳しいでしょう。

音声スタッフの1日

収録スケジュールをもとに予定を作成

音声スタッフの1日は、その日に担当している仕事のスケジュールによって決まります。

ここでは、バラエティ番組のロケがある日の予定を紹介します。

7:00 起床
朝起きたら体調をチェックし、食事をしてテレビ局に出勤します。
8:30 打ち合わせ
ディレクターやカメラマンとの打ち合わせに参加します。
9:00 ロケに出発
ロケバスに機材を運び込み、準備ができたら局を出発します。
10:00 現場到着
現場に着いたら出演者に挨拶をし、マイクやミキサーの準備をします。
10:30 ロケスタート
ロケがスタートしたら、現場の音声をヘッドフォンで聞きながら収録します。
13:00 撤収後、昼食休憩
ひとつめの現場を撤収し、昼食を取りながら次のロケ地に向かいます。
14:30 ロケスタート
ふたつめの現場に着いたら再度準備を行い、ロケの音声を収録します。
17:00 撤収後、局に戻る
局に戻ったら、収録した映像や音声のチェックを行います。
18:00 機材片付け
機材を片付けて報告書を提出したら退勤します。

音声スタッフのやりがい、楽しさ

無事に完成した番組を見たときの喜び

音声スタッフにとっての大きな喜びは、音声の収録を通して番組制作に参加できることです。

ドラマの収録、スポーツの生中継、ドキュメンタリー番組のロケなど、仕事ではさまざまな現場に行くことができます。

バラエティ番組や音楽番組など、番組によっては芸能人やミュージシャンにピンマイクをつける機会もあります。

普段なかなか会えないような人にも会えるのは魅力でしょう。

また、自分が収録した音声をもとに作られた番組を見ると、大きなやりがいを感じることができます。

クリエイティブな世界で働くことができる音声スタッフは、とても魅力的な仕事です。

音声スタッフのつらいこと、大変なこと

長時間の過酷な屋外ロケも

音声スタッフにとってつらいのは、ロケや収録のスケジュールが不規則になりがちだということです。

番組制作の現場では、天候や取材相手の都合によって予定が変わるのは日常茶飯事です。

旅番組では「青空待ち」「夕日待ち」として屋外で待機することがありますし、自然番組では野生の動物に遭遇できるまでひたすら歩き回ることもあります。

ドキュメンタリー番組では、取材相手の仕事や試合が終わるまで、長時間にわたって撮影を続けなければいけません。

重いカメラを担いだままスタンバイするカメラマンも大変ですが、ガンマイクを持ちヘッドフォンを装着したままスタンバイする音声スタッフも重労働です。

ある程度は体力に自信がある人でなければ厳しい職業ともいえます。

音声スタッフに向いている人・適性

聴力には自信があり、周囲への気配りを忘れない人

音声スタッフに向いているのは、自分の聴力に自信がある人です。

音声スタッフは、テレビやラジオの制作の現場で、たくさんの音を聞き分けながら収録しなければいけません。

そのため、高音から低音まで「どんな音でも聞き取れる」という人のほうが向いています。

中耳炎や難聴など、耳の病気を経験している人は、事前に聴力検査をして自分の状態を確認しておくことが大切です。

また、ロケや収録の際にはディレクターやカメラマンのサポートをすることが多いので、気配り上手な人が重宝されます

撮影の際に邪魔にならない位置取りができて、自分の仕事をきっちりこなすことができる人は、さまざまな現場に呼ばれやすくなるようです。

音声スタッフ志望動機・目指すきっかけ

音を通して番組制作に携わりたい

カメラマンやディレクターとは異なり、音声スタッフはアルバイトやパートの求人がたくさんあります。

未経験者も歓迎であることが多いので、「テレビやラジオの制作現場で働いてみたい」という学生が応募することが珍しくありません。

このようにして音声スタッフのアルバイトやパートとして働いたことがきっかけで、この仕事の面白さに気付く人が多いようです。

学生時代にはアルバイトとして働き、卒業後にそのまま番組制作会社の社員として入社するというケースも多々あります。

決して目立つ仕事ではありませんが、ものづくりの喜びややりがいを感じられる仕事であるという点から志望する人もいます。

音声スタッフの雇用形態・働き方

正社員からアルバイトまでさまざまな雇用形態

音声スタッフの雇用形態は、正社員からアルバイトまでさまざまです。

番組制作会社やプロダクション、音響の専門会社で正社員として雇われている人。

上記の企業に契約社員として雇われている人。

さらにアルバイトやパートとして雇われている人もいます。

最初の数年間はアルバイトや契約社員として働き、スキルが身についたら正社員に登用されるというケースもあるようです。

この他にも、テレビ局やラジオ局から直接アルバイトやパートとして雇用されている人もいます。

フリーランスの音声スタッフとして活躍している人もいますが、実力や人脈がある人でなければ安定した収入を得ることは難しいでしょう。

音声スタッフの勤務時間・休日・生活

担当している番組に合わせて生活

音声スタッフの勤務時間は、担当している番組によって大きく異なります。

スタジオでの番組収録を担当している人は、収録スケジュールに合わせて出勤することになります。

朝の情報番組を担当している人は早朝に出勤し、夜のニュース番組を担当している人は夕方に出勤するという具合です。

一方で、屋外でのロケ番組を担当している人は、日帰りで遠方に出かけたり、長期の出張になったりすることが珍しくありません。

旅番組やドキュメンタリー番組は、撮影のタイミングを逃さないことが大切です。

「ロケが無事に終わるまでは休みがない」ということも珍しくありません。

連続した勤務のあとにまとめて休みをもらうこともあります。

クリエイティブな仕事に携わるぶん、スケジュールが流動的になることは覚悟したほうがよいでしょう。

音声スタッフの求人・就職状況・需要

非正規の雇用が多い傾向

音声スタッフの求人は、正規雇用ではなく、非正規の雇用が多い傾向があります。

テレビ業界全体にいえることなのですが、番組制作が外注されていることが多く、予算があまり潤沢ではないことが多いのです。

そのため、経費を抑える目的から、音声スタッフは正社員ではなく契約社員として雇うことが珍しくありません。

企業によっては、ロケや収録の仕事があるときだけ、単発で音声スタッフのアルバイトを雇うケースもあります。

音声スタッフとして正社員を目指したいという人にとっては、厳しい状況といえるでしょう。

しかし、契約社員やアルバイトとして現場で働くうちに正規雇用されるケースもあります。

諦めずにチャンスを待つことが大切です。

音声スタッフの転職状況・未経験採用

未経験者を歓迎する企業も

音声スタッフは、未経験者が転職で目指すにあたってのハードルが高くないといわれている職業です。

この仕事をするために特別に必要とされる資格や免許がないこと。

学歴や出身学部に関するルールがないこと。

年齢や性別に関係なく活躍できること。

こうしたことから「熱意さえあれば未経験者でも歓迎」としている制作会社やプロダクションが多いのです。

「テレビやラジオの制作現場に携わりたい」「音に関する仕事がしたい」という思いがある人は、チャレンジしてみるとよいでしょう。

ただし、ロケや収録が長引けば重労働になることは間違いありませんし、さまざまな音を聞き取ることができる聴力も求められます。

自分の体力と聴力に自信がある人であれば、転職しやすいのではないでしょうか。