アサーションの意味とは？ コミュニケーション力を上げる7つの心得とトレーニング方法9選

アサーション（assertion）とは何か？

「アサーション」「アサーティブ」の意味とは

アサーションとは、自分の権利を守りながら、相手の権利も尊重する自己表現の方法です。

英語の「assertion」は主張や断言を意味しますが、日本語のアサーションはそれとは少し異なります。

相手を攻撃したり、自分の意見を押し付けたりするのではなく、互いの立場を尊重しながら自己主張することを指します。

アサーティブとは、このようなアサーションの態度や行動を表す形容詞です。

アサーションの基本的な態度

アサーションの基本的な態度は、以下の3点に集約されます。

これらの態度を意識することで、自他ともに尊重し合える関係性を築くことができます。

アサーションと他のコミュニケーションスタイルの違い

攻撃的なコミュニケーション

攻撃的なコミュニケーションは、自分の意見や感情を強く主張しますが、相手の立場を考慮しません。

結果として、相手を傷つけたり、関係性を悪化させたりする可能性が高くなります。

非主張的なコミュニケーション

非主張的なコミュニケーションは、相手の意見や感情を優先し、自分の主張を控えめにします。

一見、円滑な関係性を保てるように思えますが、自分の不満やストレスが蓄積しやすくなります。

コミュニケーションにおいてアサーションが必要な理由

アサーションは、以下の理由から現代社会に欠かせないスキルとなっています。

• 自他尊重の関係性を築ける
• ストレスや不満の蓄積を防げる
• 建設的な対話が可能になる
• 問題解決能力が向上する
• 自己肯定感が高まる

これらの効果により、職場や私生活でのコミュニケーションが円滑になり、QOLの向上にもつながります。

アサーションにおける言語的・非言語的表現

アサーションでは、言語的表現と非言語的表現の両方が重要です。

言語的表現では、「私は〜と感じます」「〜してほしいです」といった、自分の感情や要望を明確に伝える言葉を使います。

非言語的表現では、アイコンタクト、適切な声の大きさ、相手に向かった姿勢などが効果的です。

これらの表現を組み合わせることで、より説得力のあるコミュニケーションが可能になります。

アサーションの適切な使用場面

アサーションは、以下のような場面で特に効果を発揮します。

• 意見の相違がある時
• 自分の権利が侵害されそうな時
• 相手に要望や依頼をする時
• フィードバックを伝える時
• 感情的になりそうな場面

これらの状況で、アサーティブなコミュニケーションを心がけることで、建設的な対話や問題解決につながります。

アサーションの誤った捉え方

アサーションについて、以下のような誤解を持つ人も少なくありません。

• 自分の意見を押し通すこと
• 相手を説得すること
• 常に冷静でいること

しかし、これらはアサーションの本質とは異なります。

アサーションは、自他尊重の姿勢を保ちながら、率直に自己表現することが核心です。

相手を変えようとするのではなく、互いの理解を深めることが目的なのです。

アサーションのスキルを身につける9つのメリット

メリット1. コミュニケーションが上手くなる

アサーションのスキルを身につけると、全体的なコミュニケーション能力が向上します。

自分の考えや感情を適切に表現しつつ、相手の立場も尊重することで、相互理解が深まります。

結果として、職場や私生活での対人関係がスムーズになり、より充実した日々を送れるようになります。

メリット2. 自分の意見を明確に伝えられる

アサーティブなコミュニケーションを身につけると、自分の意見や要望を明確に伝える力が養われます。

曖昧な表現や遠回しな言い方ではなく、相手に分かりやすく自己表現できるようになります。

これにより、誤解を減らし、自分の立場や考えを適切に主張できるようになります。

メリット3. 人間関係が良好になる

アサーションのスキルは、健全な人間関係を築く上で非常に重要です。

自他尊重の姿勢で対話することで、相手との信頼関係が深まります。

また、問題が生じた際も、建設的な対話を通じて解決策を見出しやすくなります。

メリット4. 穏便に「NO」と言えるようになる

アサーティブなコミュニケーションを学ぶと、相手を傷つけずに断る技術が身につきます。

自分の限界を認識し、適切に「NO」と言えることは、健全な人間関係を維持する上で重要です。

これにより、過度な負担やストレスから自身を守ることができます。

メリット5. ストレスが減少する

自分の思いや意見を適切に表現できるようになると、ストレスが大幅に軽減されます。

不満や怒りを抑え込まずに、建設的な形で表現することで、心理的な負担が減ります。

結果として、メンタルヘルスの向上やバーンアウトの予防にもつながります。

メリット6. 相手の意見を尊重できる

アサーションのスキルは、相手の意見や感情を尊重する姿勢を養います。

自分の主張だけでなく、相手の立場も考慮することで、より深い相互理解が可能になります。

これは、多様性を重視する現代社会において、非常に重要なスキルとなります。

メリット7. 対等の立場で建設的な意見交換ができる

アサーティブなコミュニケーションを身につけると、相手と対等な立場で意見交換ができるようになります。

上下関係や立場の違いに縛られず、互いの意見を尊重しながら建設的な対話を行えます。

これにより、創造的な問題解決や新しいアイデアの創出が促進されます。

メリット8. 自信が高まる

自分の意見や感情を適切に表現できるようになると、自己肯定感が高まります。

自己主張することへの恐れや不安が減少し、さまざまな場面で自信を持って行動できるようになります。

この自信は、仕事や私生活でのパフォーマンス向上にもつながります。

メリット9. 仕事や社会的な評価が高まる

アサーティブなコミュニケーションは、職場や社会で高く評価されるスキルです。

明確な自己表現と相手への配慮のバランスが取れた人材は、チームワークやリーダーシップの面で重宝されます。

長期的には、キャリアアップや社会的な信頼獲得にもつながる可能性があります。

これらのメリットは、一朝一夕で得られるものではありません。

日々の練習と経験の積み重ねが重要です。

しかし、一度身につけたアサーションのスキルは、人生のあらゆる場面で活かすことができる、非常に価値の高いものです。

アサーティブなコミュニケーションをするための7つの心得

心得1. 「私」を主語にして考えや感情を伝える

アサーティブなコミュニケーションでは、「私」を主語にして自分の考えや感情を伝えることが重要です。

「あなたは〜すべきだ」という表現ではなく、「私は〜と感じる」「私は〜と思う」という形で伝えましょう。

この方法を使うと、相手を非難せずに自分の立場を明確に示すことができます。

例えば、「あなたは約束の時間に遅れてばかりだ」ではなく、「約束の時間に遅れると、私は不安になります」と伝えるのです。

心得2. 事実と感情を区別して伝える

効果的なアサーションには、事実と感情を明確に区別して伝えることが大切です。

まず客観的な事実を述べ、それに対する自分の感情や考えを伝えるという順序で話すと、相手に伝わりやすくなります。

例えば、「昨日の会議で、私の提案について意見を求められませんでした（事実）。そのため、私の意見が軽視されているように感じました（感情）」というように伝えます。

この方法を使うと、相手も状況を理解しやすく、建設的な対話につながります。

心得3. 具体的な事例や要望を明確に伝える

アサーティブなコミュニケーションでは、抽象的な表現を避け、具体的な事例や要望を明確に伝えることが重要です。

「もっと頑張ってほしい」という曖昧な表現ではなく、「次回のプレゼンテーションでは、データの裏付けを3つ以上示してほしい」というように具体的に伝えます。

これにより、相手の理解が深まり、誤解を防ぐことができます。

また、具体的な要望を伝えることで、問題解決への道筋も見えやすくなります。

心得4. 非攻撃的な言葉を使う

アサーティブなコミュニケーションでは、相手を攻撃したり批判したりする言葉は避けましょう。

代わりに、建設的で前向きな表現を心がけます。

例えば、「あなたは怠慢だ」という攻撃的な表現ではなく、「もう少し細かい部分まで注意を払ってもらえると助かります」というように伝えます。

非攻撃的な言葉を使うことで、相手の防衛反応を最小限に抑え、より開かれた対話が可能になります。

心得5. 相手の意見や感情も尊重して受け止める

アサーティブなコミュニケーションは、自己主張だけでなく、相手の意見や感情も尊重することが大切です。

相手の話をしっかりと聞き、その立場や感情を理解しようと努めます。

「なるほど、そのように感じられたのですね」「あなたの立場はよく分かります」といった言葉で、相手の意見を受け止めていることを示しましょう。

この姿勢が、互いの理解を深め、建設的な対話を促進します。

心得6. 傾聴の姿勢を保ち、相手を理解する

アサーティブなコミュニケーションでは、自分の意見を述べるだけでなく、相手の話をしっかりと聴くことも重要です。

相手の話を遮らず、最後まで聞く姿勢を持ちましょう。

また、相手の言葉を言い換えて確認したり、質問をしたりすることで、より深い理解を示すことができます。

「つまり、あなたは〜ということですね」「〜についてもう少し詳しく教えてください」といった言葉を使うと効果的です。

心得7. 肯定的な表現や前向きな言葉を使う

アサーティブなコミュニケーションでは、否定的な表現よりも肯定的な表現を心がけましょう。

「〜できない」「〜は無理だ」といった言葉ではなく、「〜ならできる」「〜という方法であれば可能かもしれない」といった前向きな表現を使います。

例えば、「締め切りまでに完成させるのは無理です」ではなく、「締め切りを1週間延ばしていただければ、高品質な成果物を提出できます」というように伝えます。

肯定的な表現を使うことで、問題解決への意欲が高まり、建設的な対話が促進されます。

アサーションの習得・トレーニング方法9選

トレーニング1. 自分のコミュニケーションスタイルを確認する

アサーションのスキルを身につける第一歩は、自分のコミュニケーションスタイルを客観的に把握することです。

日々の会話や対人関係の中で、自分がどのような傾向を持っているか観察してみましょう。

• 攻撃的になりやすいか
• 非主張的になりやすいか
• 状況によって態度が大きく変わるか

これらの点に注目し、自己分析を行います。

必要に応じて、信頼できる人に自分のコミュニケーションスタイルについて率直な意見を求めるのも良いでしょう。

自己認識を深めることで、改善すべき点が明確になり、効果的なトレーニングにつながります。

トレーニング2. 自分の感情を言語化する練習をする

「I（アイ）メッセージ」を使う

「I（アイ）メッセージ」は、自分の感情や考えを「私は〜」という形で表現する方法です。

例えば、「あなたは約束を守らない」ではなく、「約束が守られないと、私は不安になります」と伝えます。

この方法を使うことで、相手を非難せずに自分の気持ちを伝えられるようになります。

日常生活の中で、意識的に「I（アイ）メッセージ」を使う機会を作りましょう。

感情日記をつける

毎日短時間でも、その日に感じた感情を書き留める習慣をつけましょう。

• どんな場面で
• どのような感情を
• どの程度の強さで感じたか

これらを具体的に記録します。

感情を言語化する練習を重ねることで、自己理解が深まり、アサーティブな表現力も向上します。

トレーニング3. 具体的な表現で伝える練習をする

事実と感情を分けて伝える

コミュニケーションの際、事実と感情を明確に区別して伝える練習をしましょう。

例えば、「昨日の会議で私の意見が採用されませんでした（事実）。そのため、自分の存在価値が低いように感じました（感情）」というように表現します。

この方法を使うことで、状況をより客観的に伝えられるようになります。

「〜してほしい」と具体的に依頼する

要望や依頼を伝える際は、具体的な行動を示すようにしましょう。

「もっと頑張ってほしい」ではなく、「次回のプレゼンテーションでは、データの出典を明記してほしい」というように伝えます。

具体的な表現を使うことで、相手の理解が深まり、誤解を防ぐことができます。

「〜だと感じる」と自分の感情を伝える

自分の感情を伝える際は、「〜だと感じる」という表現を使う練習をしましょう。

「あなたは私を無視している」ではなく、「あなたが返事をくれないと、無視されているように感じる」と伝えます。

この表現方法を使うことで、相手を非難せずに自分の気持ちを伝えられるようになります。

「〜だと思う」と自分の意見を述べる

意見を述べる際は、「〜だと思う」という表現を使う練習をしましょう。

「この方法は間違っている」ではなく、「この方法には改善の余地があると思う」と伝えます。

この表現を使うことで、相手の反発を招きにくくなり、建設的な対話につながります。

トレーニング4. 相手の立場に立って考える習慣をつける

相手の気持ちを想像する

日常生活の中で、相手の気持ちを想像する習慣をつけましょう。

相手の行動や言葉の背景にある感情や意図を考えてみます。

この習慣は、相手への理解を深め、より効果的なコミュニケーションにつながります。

傾聴のスキルを身につける

相手の話を真剣に聞き、理解しようとする姿勢を磨きましょう。

• 相手の話を遮らない
• うなずきや相槌を適切に入れる
• 必要に応じて質問や確認をする

これらの点に注意しながら、傾聴のスキルを向上させます。

相手の言動の裏にある意図を考える

相手の言動に対して、すぐに反応するのではなく、一旦立ち止まって考える習慣をつけましょう。

「なぜ相手はそのように言動したのか」「どのような意図があるのか」を想像してみます。

この習慣は、相手への理解を深め、より適切な対応につながります。

トレーニング5. 否定的な言葉を肯定的な言葉に変換する

日常会話の中で、否定的な表現を肯定的な表現に言い換える練習をしましょう。

例えば、「できない」を「どうすればできるか考えてみる」に、「問題がある」を「改善の余地がある」に変換します。

この練習を重ねることで、前向きで建設的なコミュニケーションが身につきます。

トレーニング6. DESC法のフレームワークを身につける

DESC法は、効果的なアサーションのためのフレームワークです。

• D（Describe）：状況を客観的に描写する
• E（Express）：自分の気持ちや考えを表現する
• S（Specify）：具体的な要望を伝える
• C（Consequence）：結果や影響を説明する

この順序で伝えることで、相手に理解されやすいメッセージを作ることができます。

日常生活の中で、このフレームワークを意識して使う機会を作りましょう。

トレーニング7. ロールプレイングで実践する

信頼できる人と一緒に、アサーティブなコミュニケーションのロールプレイングを行いましょう。

実際の場面を想定し、学んだスキルを実践してみます。

• 上司への意見の伝え方
• 同僚との意見の相違への対処法
• 友人との約束の調整方法

これらの場面を想定したロールプレイングを行うことで、実践的なスキルが身につきます。

トレーニング8. 非言語コミュニケーションに気を配る

アサーティブなコミュニケーションには、言葉だけでなく非言語的な要素も重要です。

• 適切なアイコンタクト
• オープンな姿勢
• 適度な声の大きさとトーン

これらの点に注意を払い、練習しましょう。

鏡の前で練習したり、信頼できる人にフィードバックを求めたりするのも効果的です。

トレーニング9. 専門家のトレーニングを受ける

アサーションスキルを本格的に向上させたい場合は、専門家によるトレーニングを受けることも検討しましょう。

• アサーティブネス・トレーニングのワークショップ
• コミュニケーションスキル向上のセミナー
• 個人カウンセリング

これらのプログラムでは、専門的な知識と実践的なスキルを効率的に学ぶことができます。

専門家からの適切なフィードバックを受けることで、より効果的にスキルを向上させることができるでしょう。

これらのトレーニング方法は、日々の生活の中で少しずつ実践し、継続的に取り組むことが大切です。

アサーションが苦手な人の7つの特徴

特徴1. 相手の反応を気にしすぎてしまう

アサーションが苦手な人は、相手の反応を過度に気にする傾向があります。

「相手を怒らせてしまうのではないか」「嫌われてしまうのではないか」といった不安が、自己表現を妨げてしまうのです。

この特徴は、自分の意見を述べる機会を逃したり、本心とは異なる同意をしたりする原因となります。

特徴2. 衝突や対立を過度に恐れてしまう

衝突や対立を極端に避けようとする人は、アサーションが苦手な場合が多いです。

意見の相違は自然なものですが、これを否定的に捉えすぎると、建設的な議論の機会を逃してしまいます。

結果として、問題の解決が遅れたり、不満が蓄積したりする可能性があります。

特徴3. 他者に依存する傾向がある

自分で決断することを避け、常に他人の意見や判断に頼ろうとする人は、アサーションが苦手な傾向にあります。

この特徴は、自己主張の機会を減らし、自立心の発達を妨げる可能性があります。

長期的には、自信の欠如や自己効力感の低下につながる恐れがあります。

特徴4. 自己肯定感や自己効力感が低い

自分に自信がない人や、自分の能力を過小評価している人は、アサーションを実践するのが難しいでしょう。

「自分の意見なんて価値がない」「どうせ上手くいかない」といった否定的な思考が、自己表現を阻害してしまうのです。

この特徴は、チャレンジングな状況を避ける傾向や、成長の機会を逃す原因にもなります。

特徴5. 感情を表に出すことが苦手

自分の感情を適切に表現できない人は、アサーションが難しくなります。

喜怒哀楽を抑え込んでしまう傾向や、感情を言葉で表現することに慣れていない状態が、この特徴の背景にあります。

結果として、誤解を招いたり、ストレスが蓄積したりする可能性が高くなります。

特徴6. 自分の意見を整理して伝えられない

自分の考えや意見を論理的に整理し、相手に分かりやすく伝えることが苦手な人は、アサーションが難しくなります。

言葉の選び方や表現方法に自信がないと、自己主張を避けてしまう傾向があります。

この特徴は、コミュニケーションの機会を逃したり、誤解を招いたりする原因となりかねません。

これらの特徴は、決して固定的なものではありません。

自己認識を深め、適切なトレーニングを重ねることで、誰でもアサーティブなコミュニケーションを身につけることができます。

自分の特徴を把握し、改善に向けて一歩ずつ歩みを進めていくことが大切です。

おわりに

アサーションは、現代社会を生きる私たちにとって欠かせないコミュニケーションスキルです。

自分の意見や感情を適切に表現しながら、相手の立場も尊重する。

このバランスの取れた自己表現法は、人間関係を円滑にし、ストレスを軽減させる効果があります。

本記事では、アサーションの意味から実践的なトレーニング方法まで、幅広く解説しました。

アサーションのスキルを身につけることで、職場や私生活でのコミュニケーションが大きく改善されるでしょう。

自分の意見をはっきりと伝えられるようになり、相手の立場も尊重できるようになります。

結果として、より健全で建設的な人間関係を築くことができるのです。

これらのスキルを身につけるためには、日々の生活の中で少しずつ実践し、継続的に取り組むことが大切です。

アサーションの習得は、自分自身の成長だけでなく、周囲の人々との関係性も豊かにするものです。

ぜひアサーティブなコミュニケーションに取り組んでみてください。