自社養成航海士の入社後の生活とは? 海技大学校での2年間の流れ
今回は、入社後に受ける海技大学校での実習、会社の貨物船での実習について書いていきます!
海技大学校(海大)とは?
船会社の採用HPや他のサイトでも詳しく紹介されてると思いますが、入社後2年間は兵庫県芦屋市にある海技大学校 (以下海大) で免許取得期間として過ごします。
芦屋といっても高級住宅街のある山側ではなく、芦屋浜と呼ばれる海沿いです。
「2年間の教育期間」とはいっても丸々2年間を座学期間で過ごすわけではないのでご安心ください(笑)
海大は、防衛大学校や海上保安大学校といった大学校と違い、会社に入社後に会社から派遣される形で「入学」 します。
学生証も発行されるので、社会人なのに映画館も学生料金です。(笑)
座学自体は半年間で終わるのですが、学生の身分そのものは、丸2年続きます。
ちなみに社内的には、「航海科実習生」という扱いです。
以下、2016年入社の私の例で説明します。
・2016年 7〜12月 座学
・2017年 1〜3月 練習帆船 (海王丸) で国内航海実習
~3週間の休暇~
・2017年 4〜6月 同帆船で、晴海〜バンクーバー〜ホノルル〜晴海の遠洋航海実習
~1か月休暇~
・2017年 7〜9月 会社の大型コンテナ船で実習 (同期12人で)
~1か月休暇~
・2017年 10〜12月 会社の大型コンテナ船で実習 (実習生は自分のみ)
・2018年1~3月 休暇+適宜研修+海大卒業式+国家試験 (面接)
途中に休暇を挟んだりするので、かなり余裕のあるスケジュールです。
この休暇期間は本当に何も業務や勉強はありません。
船員の醍醐味を味わう瞬間です!
座学の後に実技があるというのは、自動車教習所と似たような感じですね。
ちょっと違うのは、座学と言っても通いではなく、海大に併設している宿舎で暮らす点ですね。
広い個室が1人1室あり、とても快適でしたよ!
ちなみに授業の教室まで徒歩3分です。
9〜17時の授業後には釣りに行ったり、三ノ宮に遊びに行ったり、合コンに繰り出す人もいましたね。
ちなみに私が見習い航海士の時の先輩はその時知り合った方と結婚されたので、大事な出会いの場ですね(笑)
海大は小型の練習船を所有していて、2泊3日で芦屋〜高松への練習航海もありました。
船は小ぶりなものの、実際の船を操縦し、船内生活を体験出来て、すごく楽しかった記憶があります!
ちなみにこの間は基本給のみ支給されるので、あまり貯金出来ませんでした。
まあ、会社のカネで勉強させてもらって、お給料を貰えると考えると贅沢は言えませんね!
こんなことで、楽しい半年間が終わると、年明けから実習船での生活が始まります。
最初は、宮崎・鹿児島・別府・神戸・大阪といった国内の港町巡りをして、船員生活のイロハを教わります。
この実習は商船大学生に混ぜてもらう形で参加し、トータル150人ほど、乗船していました。
授業時間が終わると、甲板上で走ったり、マットを敷いて腹筋したり、剣道の素振りをしたりと各人好きなことをしていました。
その次は太平洋横断 (なんとほぼ帆走!風の力のみで走ります。燃料節約ですね!) を通じて、船で外国に行くってこんな感じなんだ!ということを学びました。
3週間かけて、バンクーバーに着いたときには本当に感動しました!
太平洋は波も高く毎日揺れるので、酔い止め(アネロンという船酔い専用のモノ。今でもお世話になってます)を飲んでも効かなくて大変でした・・・
しかし、現地では歓迎セレモニーもあり、感慨ひとしおとはこのことかと思いました。
会社の貨物船で外国に行くのとは全然違い、一生の思い出です。
会社のコンテナ船での実習
今回は、会社の大型コンテナ船での実習について書いていきます!
国の船である練習帆船との最大の違いは、会社の船は日本人とフィリピン人との混乗船だということです。
乗組員30名の内、日本人は8名ほどが普通です。
まず、最初の7〜9月 (入社2年目) は、自社養成の同期12人(航海士候補生6人、機関士候補生6人)全員で同じ船に乗り、先生役の社員や乗組員から色々なことを教わります。
機関士とは飛行機でいう整備士さんのような人たちです。
GOOD LUCKの柴咲コウと言っても古いでしょうか?(笑)
また練習船の延長として、レポート課題もありました。
航海士らしい仕事として、航海当直 (周囲の見張りのことで、双眼鏡やレーダーを使います) にも毎日立つようになり、船の大きさに感動する日々でした。
ただ、まだ無免許の状態なので、あくまでも見学というスタンスで、避航操船 (衝突するかも知れない他の船の針路を避けること) はさせてもらえません。
先輩航海士がどうやるのかを見学します。
また船体のサビ落とし・ペンキ塗りなど、三等航海士になるとあまり出来なくなる作業にも参加し、船員の現場仕事を教わります。
ちなみに現場作業自体は、フィリピン人船員の現場作業チームが担当なので、彼らのチームに混ぜてもらい、安全なやり方を教わるという感じです。
日本人航海士はどちらかと言うと、現場監督のような感じで、不具合箇所の整備計画を作って彼らにお願いします。
(若手の場合、経験を積むことも兼ねて自分で作業することもあります)
技術力の高いフィリピン人船員を大いに信頼していますが、任せっぱなしにはせず、進捗状況確認という名のコミュニケーションも欠かせません。
フィリピン人船員は、この道何十年という大ベテランの方も多いので、途中に地上勤務を挟む日本人船員とは経験値が全然違うんです!
本当に現場のプロという感じで、今でも色々なことを教わっています。
次回は、会社のコンテナ船実習の後にある研修や、その後に受ける国家試験について書きたいと思います!