ステノキャプショナーの仕事内容・なり方・年収・資格などを解説
「ステノキャプショナー」とは
タイピングの高度なスキルを駆使し、テレビ番組などの字幕打ち込みを行う専門職。
ステノキャプショナーとは、テレビ番組などで流れる字幕の打ち込みを行う専門職です。
字幕入力専用のキーボードを用い、放送中の番組を視聴しながら、出演者の発言やナレーションをリアルタイムで字幕化する作業を、迅速かつ正確に行います。
相当な集中力と、耳で聞いた音声を即座に文字に変換するための国語力が求められる職業です。
特殊なテクニックが必要になることから、民間の養成講座やスクールで技術を身につけ、字幕制作会社や速記事務所へ就職する人が多くなっています。
高齢化社会が進む現代では、医療や福祉などの領域でも、耳の不自由な人に対して「音声字幕」を提供する機会が増え、ステノキャプショナーの活躍の場はやや広がりを見せています。
「ステノキャプショナー」の仕事紹介
ステノキャプショナーの仕事内容
テレビ番組などの字幕をその場で迅速に入力する専門職
ステノキャプショナーとは、「ステノ(速記)」と「キャプショナー(字幕入力者)」から成る言葉で、いわゆる「字幕打ち込み」の専門職を意味します。
ステノキャプショナーの仕事内容を最も想像しやすいのは、テレビ番組でしょう。
地上デジタル放送には、リモコン操作ひとつで放送中の番組を字幕つきで見ることができるシステムがあります。
これは映画の字幕のように事前に制作しておくものではなく、放送中の番組を視聴しながら出演者の発言やナレーションをリアルタイムで字幕化することで成り立っています。
この作業を迅速にかつ正確に行うプロフェッショナルこそが、ステノキャプショナーです。
作業は字幕入力専用のキーボードを使って行い、1分間で300字ほどの高速入力をしていきます。
タイピングのスキルはもちろん、言葉を聞き漏らさない集中力、また音声を正確に聞きとって、即座に文脈を判断しながら文字にしていくための国語力なども必要な職業です。
ステノキャプショナーの役割
ステノキャプショナーが入力する字幕は、おもに「聴覚が不自由な人」に役立つものとなっています。
聴覚に障がいがある人や耳が遠い高齢者にとって、字幕はテレビの内容を把握するために欠かせないものです。
また健常者であっても、公共の場にあるテレビなど音声を出せない場でも、字幕があることで内容理解に役立ちます。
ステノキャプショナーは、一般の人にはそこまでなじみがありませんが、実はわたしたちの生活に大きく貢献している職業といえるでしょう。
ステノキャプショナーになるには
高い学歴は必要ないが、独学で技術を身につけるのは難しい
ステノキャプショナーの仕事をするために、必ず通わなくてはならない学校や、取得必須の国家資格などはありません。
しかしながら、この仕事は「音声を聞くと同時に、非常に速いスピードでタイピングをする」という特殊技能が求められます。
また、ステノキャプショナーの実際の仕事の場では、一般的なパソコンではなく、字幕入力用の特殊なキーボードを使用します。
独学ではテクニックを身につけるのが難しいため、タイピングや速記の勉強をしてから、ステノキャプショナーとして働ける場を探すのが一般的なルートとなっています。
養成機関でスキルを身につけ、就職を目指す
ステノキャプショナーの勉強ができる場として、民間の養成機関があります。
学校によってカリキュラムはさまざまですが、段階的にレベルアップしていき、2~3年ほど通う人が多いようです。
学習の途中で、ステノキャプショナーとしての能力を評価するために「スピードワープロ検定」という検定試験を受ける人も多いです。
一定のレベルに達したと判断したら、字幕制作会社や速記事務所へ就職し、仕事をスタートするという道がスタンダードとなっています。
ステノキャプショナーの給料・年収
特別な高収入は得られないが、やりがいを感じている人が多い
ステノキャプショナーの収入は、月給15万円〜20万円前後、時給だと1,200円前後からのスタートになることが多いとされています。
特殊なスキルを習得する必要はありますが、特別な高収入が得られる職業とは言い難く、「一般的な事務職に比べると少し高め」くらいと考えておくほうが無難でしょう。
収入第一というよりも、この仕事にやりがいを持って働き続けている人が多いようです。
ただし、正社員として勤務する場合は、ある程度の安定した収入が約束されます。
福利厚生は企業によっても異なるため、事前によく確認しておくことをおすすめします。
パートなど短時間勤務をする人も多い
ステノキャプショナーは、パート・アルバイトなど非正規雇用の採用が多いことが特徴です。
非正規の場合、収入面では正社員に劣りますが、シフト希望を出して短時間勤務や週に数日程度の勤務も可能になることから、家庭や育児で忙しい女性でも仕事を続けやすいのは魅力的でしょう。
長く続けることで、よりスキル仕事が評価されるようになったら時給アップも期待できます。
ステノキャプショナーの現状と将来性・今後の見通し
社会のさまざまな場で、字幕のニーズが増している
ステノキャプショナーは、一般の人々にとっては、まだそれほど認知度が高くない職業です。
しかし、このような「音声の字幕化」の仕事は、これからの時代にさらに必要とされるものだと考えられます。
たとえば、この技術がもっと発展することで「市役所での相談コーナー」「病院の診察」「市民講座」など、さまざまな場所で音声を字幕化してコミュニケーションをとることが可能になります。
ステノキャプショナーが手掛ける仕事は、耳が不自由な障がいのある人やお年寄りはもちろんのこと、速いスピードの日本語会話が聞き取れない外国人にとっても、非常に役に立つ技術といえるでしょう。
今後、AIのさらなる発展によって、ステノキャプショナーの一部の業務は自動化されるものと考えられます。
しかしながら、機械ではまかなえない部分や最終的な内容チェックなど、人の手が必要な部分は残り続けるでしょう。
ステノキャプショナーの就職先・活躍の場
字幕制作会社や速記事務所などで活躍
ステノキャプショナーのおもな就職先となるのほか、字幕制作会社や速記事務所です。
一部の映像制作会社でも、ステノキャプショナーの求人が出る場合があります。
これらの企業は日本各地に存在していますが、全体としては小規模なところが多く、従業員10名以下という事務所もあります。
また、いわゆるステノキャプショナーが手掛ける字幕速記以外に、音声書き起こしやテープ起こしなどのサービスも提供している企業が目立ちます。
なかには「医学分野」など、特定の分野に強みをもって営業している事務所もあります。
ステノキャプショナーのやりがい、楽しさ
専門的なスキルを駆使して、世のためになる仕事をする
ステノキャプショナーの仕事は、素人が挑戦しようと思って、すぐにできるようなものではありません。
専門的な訓練をし、速記の技能を身につける必要があります。
一人前のステノキャプショナーになるまでは地道な訓練の日々が続き、苦労を感じることもあるでしょう。
しかし、自分の仕事が聴覚に不自由さを抱える人の役に立つ、世の中のためになると思うと、仕事にやりがいを感じられるはずです。
また、ステノキャプショナーはまだまだニーズがあり、活躍の場も広がっています。
専門的なスキルを身につけて、それを発揮したい人には、おすすめの仕事といえるでしょう。
ステノキャプショナーのつらいこと、大変なこと
集中力や注意力が求められ、緊張を感じる場面が多い
ステノキャプショナーの仕事では、非常に強い集中力が求められます。
音声を聞き逃さず、また間違えることなく、リアルタイムで正確に入力しなくてはならないからです。
「失敗できない」という思いが強くなると、とくに仕事に慣れるまでは、本番前に身体が震えるような緊張感に襲われることもあるでしょう。
それでも集中力を保ち続け、完璧な仕事をするための努力が求められます。
スピードワープロの技術力向上の訓練を続けるのはもちろん、日頃からたくさんの本を読むなどして日本語の幅広い表現に親しんだり、「音」から正確な漢字を判断するための勉強しておいたりと、さまざまな努力が欠かせません。
ステノキャプショナーに向いている人・適性
高い集中力と、国語力を備えている人
音声を聞きながら、大量の文字を高速でタイピングするステノキャプショナーには、言うまでもなく「集中力」が不可欠です。
生放送中の番組の音声を字幕化するという責任重大な役割を担っているわけですから、「ボーっとして聞き漏らしてしまった」「疲れて打ち間違えてしまった」というミスは許されません。
ひとつのことに長時間集中することができ、正確な作業を積み重ねることができる人に向いている職業です。
さらに、ステノキャプショナーには高い「国語力」があることが大切です。
同音異義語を的確に漢字変換できること、専門用語を正しく表記できることが求められるため、日頃から本や新聞をよく読んでいて豊富な語彙を身につけている人のほうが活躍しやすいでしょう。
ステノキャプショナー志望動機・目指すきっかけ
世の中に貢献できる仕事内容や、専門性に魅力を感じて
ステノキャプショナーは、とくに若い人にとって、あまりなじみのある職業とはいえないでしょう。
そのため、なんらかのきっかけで「字幕を作る仕事」に関心を持ち、そこからステノキャプショナーにたどりつくケースが多いようです。
医療や福祉関連に興味のある人が、そうした業界に貢献できる仕事のひとつとして、この職業に興味を持つこともあります。
このほか、業務内容が専門的であることや、スキルを身につければ長く活躍できることなどに惹かれて、ステノキャプショナーの勉強をスタートする人も増えているようです。
ステノキャプショナーの雇用形態・働き方
正社員のほか、パートや契約社員などで雇用される人も
ステノキャプショナーは、おもに速記事務所や字幕制作会社などに所属して働いています。
その雇用形態はさまざまで、正社員として雇用されるケースもあれば、契約社員やパートといった非正規雇用となるケースもあります。
とくに経験が浅いうちは非正規からスタートすることもめずらしくありません。
また、ステノキャプショナーは女性が多く活躍しており、結婚・出産後には家庭の都合で、あえてパートの働き方を選択する人もいます。
理想のライフスタイルに応じて多様な働き方が選択できるといった点でも、魅力的な職業といえるでしょう。
ステノキャプショナーの勤務時間・休日・生活
決められたスケジュール通りに生活しやすい
ステノキャプショナーは、ライフスタイルに合わせた働き方がしやすい職業のひとつです。
テレビの番組は事前に放送プログラムが決まっているものであり、どの時間帯のどの番組を担当するかを選ぶことで、シフトを柔軟に組み替えやすいからです。
たとえば「朝早く出勤して午後には仕事を終えたい」「夜型なので夜勤中心の働き方をしたい」「土日は必ず休みたい」など、個人のさまざまなニーズに合わせて働くことができます。
また、室内での作業がメインとなるため外回りや出張はなく、放送時間の延長もめったにないため、残業も少ない傾向にあります。
仕事と主婦業と両立させたいという人やデスクワーク希望の人にとっては、理想的な職場といえるかもしれません。
ステノキャプショナーの求人・就職状況・需要
字幕制作会社や速記事務所などで求人が出る
ステノキャプショナーの求人は、字幕制作会社や速記事務所を中心に出ています。
テレビの字幕を担当する場合でも、多くの場合、放送局に勤務するわけではありません。
というのも、字幕化の作業は放送局から外部の専門企業に委託されるのが一般的であって、放送局の社員が社内で行っているわけではないからです。
字幕制作会社や速記事務所では、「正社員」の求人もゼロではないものの、どちらかというと「契約社員」や「パート」などの非正規雇用の求人が多く見られます。
また、働いている人の男女比を見ると、女性が多めです。
最初は非正規として採用されても、確かなスキルを磨いて経験を積んでいけば、正社員登用される可能性もあるでしょう。
ステノキャプショナーの転職状況・未経験採用
女性が転職を目指すケースは多い
ステノキャプショナーは、そこまでメジャーといえる職業ではないこともあって、学生から直接目指す人はそこまで多くないようです。
むしろ、社会人になってからこの職業や仕事の存在を知り、価値を感じて「やってみたい!」と挑戦する人がたくさんいます。
ステノキャプショナーは専門性の高い仕事ですが、ステノキャプショナー養成機関で十分なトレーニングを積めば、未経験から目指すことは可能です。
また、この仕事はパートの求人も多く、ライフスタイルに合わせた短時間勤務がしやすいため、子育てや介護をしている主婦からも人気があります。
「家庭と仕事をムリなく両立させられる仕事がしたい」と考える人が、ステノキャプショナーへの転職を目指す例は、増えているようです。
ステノキャプショナーはどんなキーボードを使ってる?
速記用に作られた特殊なキーボードを使用する
ステノキャプショナーの仕事では、1分間に300文字程度という、かなりの高速でタイピングをする必要があります。
そのため、通常のパソコンではなく、速記用に開発された特殊なキーボードを使用します。
ステノキャプショナーが使用するキーボードで有名なのが「ステノワード」というもので、キーはわずか10個、左側5つのキーに子音、右側5つのキーに母音が配置されていることが特徴です。
母音と子音を同時に押すことで入力の時間短縮につながり、さらに、よく使う言葉は3000ほどあるショートカットキーを覚えることによって一瞬で入力が可能となります。
このキーボードの扱い方は、一般的なパソコンのキーボードとはまったく異なるため、専門的な訓練を受けて、スキルを身につけていく必要があります。