清掃員の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説
「清掃員」とは
多くの人が利用する場所を清掃する
清掃員は多くの人が利用する場所を清掃する仕事です。
清掃員の活躍の場で特に多いのが駅や商業施設、公共施設などで、これらは利用者も多いため清掃員が常駐しているところも多いです。
オフィスビルなどでは社員が清掃を行うのではなく、企業で清掃員を雇いゴミの回収などを行っています。
オフィスではごみのなかに重要な文書が紛れている場合もあるので、プライバシーの保護にも注意しなくてはなりません。
同様に、航空機や新幹線などの列車、ホテルなどでも清掃員が活躍しています。
限られた時間内にすべての作業を終わらせなくてはならないことや、常に清潔を保たなければならない場所であることから、迅速な対応が求められます。
また病院では、特殊な機械を使って清掃をすることもあり、とくに大きな病院では入院患者や受診の邪魔にならないよう気を配らなくてはならない大変な仕事です。
清掃員の仕事内容は主に掃除とごみの回収ですが、それぞれの場所にあった清掃の仕方や早さを工夫しなくてはなりません。
なお、収集車でごみを回収する人は「収集作業員」などと呼ばれ区別されることが多いです。
さらにビルの外壁を清掃する人は「ビル清掃員」、ホテルの客室を専門に清掃する人は「客室清掃員」、事件や事故現場の清掃をする人は「特殊清掃員」などと呼ばれ、仕事内容によって名称が変わることもあります。
「清掃員」の仕事紹介
清掃員の仕事内容
さまざまな場所を清掃しごみを回収する
清掃員の仕事は、主に掃除と整理整頓、そしてごみの回収です。
清掃員にはそれぞれ決められた施設やフロアがあり、その中の清掃を行います。
清掃箇所は清掃員ごとに異なり、ビルなどのフロア掃除、トイレなどの水回り掃除、庭など施設周辺の掃除など場所も方法もさまざまです。
駅や商業施設では多くの人がいるなかでいかに早く、邪魔にならないように清掃するかを考えながら行わなくてはなりません。
壁、窓、床、トイレ、手洗い場などその場所の特徴や汚れについても知り、的確な方法で清掃をする必要があります。
清掃をして出たごみは回収し、決められた場所に集め処分します。
場所によっては大量のごみが出ることもあり、また病院などでは一般のごみと同様に処理できないものも出るため、独自の方法で処分しているところも少なくありません。
仕事の際は、1人ずつ行う場合と、数名でチームを組んで行う場合があり、同じ場所を繰り返し行う場合が多いですが、定期的に場所や依頼主が異なることもあります。
そのほか、ホテルではシーツやタオルなどの交換やベッドメイク、室外清掃では窓ガラスや外壁、施設周辺の清掃、施設内の清掃では照明や吸排気等の管理などが作業に含まれることもあります。
勤務時間にも働く場所によって違いがあり、24時間交代で清掃員が常駐しているところもあれば、お客さまや社員がいない時間帯に清掃を行う場合、早朝や終業後の深夜から働くことも珍しくありません。
清掃員になるには
体力さえあれば就職しやすい職業
清掃員になるには、特別な学歴や資格は必要なく、誰でもなることができるのが特徴です。
清掃員は主に駅や商業施設の管理会社やグループ会社などが募集しており、体力さえあれば高齢の人でも働けるため、実際に50~60代以上や定年退職をした人も多く働いています。
たいていの場合は、上司や先輩などに清掃の仕方や順序などを実際にレクチャーしてもらい、その場で仕事内容や清掃技術を学んだり、入社時に研修として清掃を学んだりします。
そのため特別清掃に関する技術や知識がなくても仕事を始めることができ、家庭内での清掃を常日頃行っている人であればより歓迎されます。
むしろ、清掃のスキルよりも仕事をこなせる体力や集中力、仲間とコミュニケーションをとれるかどうかといった点が問われることが多いです。
働き方は実にさまざまで、社員や派遣社員、アルバイトなどもあり、自身のライフスタイルや希望する勤務時間などによって選ぶことができます。
なお、清掃員の仕事には幅広い種類があるため、ビル清掃や客室清掃、特殊清掃など仕事によっては問われるスキルや知識が全く異なるため注意が必要です。
とくに収集車でゴミを収集する「清掃作業員」になるには、各自治体や自治体からの委託会社などに採用されることが必要です。
多くの場合、体力が必要なため30代から40代の年齢制限があり、体力テストが課される場合もあります。
清掃員を目指す際には、自分がどのような場所でどのように働きたいかを考えておくとよいでしょう。
清掃員の資格・試験の難易度
資格よりも体力が重要
清掃に関する資格はいくつかあります。
「ビルクリーニング技能検定」は、厚生労働省に認められた国家検定で、ビルの所有者から委託を受けて行うビルクリーニング作業の技能を評価する「ビル清掃のスペシャリスト」を認定するものです。
→参考:公益社団法人ビルメンテナンス技能協会 ビルクリーニング技能士
そのほか、「清掃作業監督者」「ハウスクリーニング技能士」「建築物環境衛生管理技術者」などの資格がありますが、これらはすべて仕事をしながらスキルを高めるために取得する人が多いです。
→参考:公益財団法人日本建築衛生管理教育センター 清掃作業監督者講習
→参考:公益財団法人日本建築衛生管理教育センター 建築物環境衛生管理技術者 試験について
ただし就職の際にあらかじめこうした資格を取得する必要はなく、それよりも体力や清掃に関する経験の方が重要視されます。
企業のなかには、清掃員に対しレベルに応じた独自の試験や称号を設けているところもあります。
清掃員の給料・年収
業界全体として給料は低め
多くの清掃業では年収200万円~250万円が多く、オフィス清掃、病院清掃、施設清掃などであれば200万以下というところが多くなっています。
日本人の平均年収が420万円前後ということを考えると、やや低めといえるでしょう。
これは清掃の仕事全体として給料が比較的安価に設定されていることや、労働者の多くが高齢者で占められていることが理由の一つと考えられます。
またアルバイトやパート、派遣社員などとして働く人も多く、短時間で働くというパターンも多くみられるため、給料がどうしても低めになってしまいます。
さらに、アルバイトやパートの掛け持ちで働いている人が多い、特殊なスキルを必要としないため比較的誰でも仕事が始めやすいというところも給料が低くなっている原因といえるでしょう。
ただし、清掃業は必ずしも給料が低めということはなく、専門資格を取得して資格手当をもらったり、経験を重ねて管理者・監督者などになったりすることで給料アップをのぞむことができます。
清掃員の平均年収・月収・ボーナス
厚生労働省の令和5年度賃金構造基本統計調査によると、清掃員の平均年収は、53.2歳で278万円ほどとなっています。
・平均年齢: 53.2歳
・勤続年数: 9.2年
・労働時間/月: 162時間/月
・超過労働: 6時間/月
・月額給与:215,900円
・年間賞与:192,900円
・平均年収:2,783,700円
出典:厚生労働省「令和5年度 賃金構造基本統計調査」
※平均年収は、きまって支給する現金給与額×12ヶ月+年間賞与その他特別給与額にて計算。
※本統計はサンプル数が少ないため、必ずしも実態を反映しているとは限りません。
清掃員の勤務先の規模別の年収(令和5年度)
清掃員の年収は、勤務先の規模によってあまり変化がありません。
10〜99人規模の事業所に勤める清掃員の平均年収は276万円、100〜999人規模は278万円、1,000人以上の規模では281万円、10人以上規模の事業所平均は278万円となっています。
※賃金構造基本統計調査より作成。本統計は調査の母数が少ないため、必ずしも実態を反映していない可能性があります。
清掃員の勤務先の年齢別の年収(令和5年度)
清掃員の年収は、年齢とあまり関係性がありません。どの世代においても、おおむね200万円~300万円台となっています。
全年代の平均年収は278万円となっています。
清掃員の現状と将来性・今後の見通し
さらにニーズが高まっていく仕事
清掃員の働く商業施設や病院、駅やホテルなどは、今後もなくなることはありません。
利便性を考えると、さらに増えていくことが考えられ、今後も一定の需要が見込める仕事です。
清掃技術や機械がいくら進化したとしても、どうしても人の手で行わなくてはならない作業は残るため、今後も清掃員の仕事はニーズが高いといえます。
近年は高齢化が進むことで高齢者施設が増えたり、共働きの世帯が増えハウスクリーニングの仕事が増えたりと、さらに活躍の場が増えつつあります。
清掃の仕事はさらに需要が高くなり、これまではパートやアルバイトが中心の清掃業でしたが、正社員が増えたり、清掃のプロとして活躍したりする人も増えると予想されます。
清掃員の就職先・活躍の場
清掃専門の業者か、施設に直接雇用される場合が多い
清掃員の就職先で多いものは、清掃員を専門に派遣する清掃業者で、清掃員を雇い、必要な施設や場所に派遣し、仕事をしてもらいます。
この場合、同じ施設で働き続ける人もいれば、さまざまな施設を回り毎日違う現場で清掃をする人もいます。
駅やオフィスビル、商業施設、列車内などの公共交通機関では清掃を専門に行うグループ会社をもっており、そこで清掃員を採用することもあります。
ホテルなどの宿泊施設では「客室清掃員」「ハウスキーパー」などと呼ばれ、清掃だけでなくベッドメイクなども行うことが多く、清掃員を自社で雇用することも多いです。
ホテルの場合はお客さまと接することが多いため、自社で採用したいと考えるところが多いようです。
清掃員の1日
勤務時間や仕事の流れはさまざま
清掃員の1日は、清掃する施設や場所、仕事内容によって違いがあります。
場合によっては早朝や深夜に作業をすることもありますし、24時間交代制で勤務することもあります。
ここではオフィスビルで働く場合の一例を紹介します。
清掃員のやりがい、楽しさ
お客さまの安心安全につながる仕事
清掃業のやりがいは、駅や商業施設などをお客さまに安心して利用してもらえることです。
清掃を行い、清潔を保つことは、施設や乗り物の安心安全を守ることにつながります。
自分自身が清掃した箇所を多くの人が利用してくれることは、やりがいにつながるでしょう。
また清掃業は仕事量が安定しており、将来的にもなくなることは考えられません。
未経験でも始めやすいことや、拘束時間が少なく時間や場所を選びやすいこと、働きやすさにつながり、今後も継続して働きやすい仕事といえるでしょう。
入職後、先輩や上司から手順や清掃方法のレクチャーを受けることで、1からスキルアップもしやすい仕事です。
清掃員のつらいこと、大変なこと
体力的にハードな仕事である
清掃員で大変なところは、体力面がきついということです。
掃除道具や備品など重いものを運ぶこともありますし、ときには暑さ寒さの中で長時間清掃をしなくてはならないこともあります。
採用の際にもまず体力面が重要視されるため、清掃員を目指すのであれば体力をつけておくようにしましょう。
また、ときには嘔吐物や排せつ物などの汚いものを清掃しなくてはならなかったり、長年こびりついた汚れを落とさなくてはならなかったりします。
たとえ潔癖でなくても、このような汚いものに直面したときには作業的にも精神的にも大変でしょう。
さらに、決められた時間内に清掃を終えなくてはお客さまや社員の仕事に支障がでることもあるため、時間に追われる仕事であることも大変なことです。
清掃員に向いている人・適性
細かいところに気が付きやすい人
清掃員に向いているのは、細かいところに気が付きやすい人、きれい好きな人です。
たとえ誰かが見ていなくても積極的にごみを拾ったり、汚れが気になってすぐに掃除をしたりする人は、非常に向いているでしょう。
清掃業はルーティンワークが多いため、毎日同じ作業を繰り返しても作業が苦にならない人、一人での作業も淡々とこなせる人であれば、より毎日の仕事も楽しくなるでしょう。
また、清掃業はお客さまと直接触れ合うことは少なく、感謝の言葉をかけられたり、お礼を言われたりすることはあまりありません。
このようにたとえ周りからの評価がなかったとしても、人に喜んでもらいたい、清潔を保って安心安全に施設を利用してもらいたいと思える人に向いています。
清掃員志望動機・目指すきっかけ
掃除が好き、きれい好きであることが多い
清掃員の志望動機として多いものは、掃除が好き、または体力に自信があるというものです。
人間としていきていくために掃除や整理整頓は欠かせないものですが、他人が利用したものや場所を掃除することは、自宅や仕事場の清掃とはまた異なります。
就業後のギャップがないように、しっかりと仕事内容を確認しておきましょう。
体力に自信がある場合は、部活やサークルをしている、毎日トレーニングをしているなど具体的なエピソードを添えるとよりよいでしょう。
また清掃をする上ではチームで仕事をすることもありますし、商業施設などではサービス業としてお客さまへ対応することもあるため、一般的なマナーやコミュニケーション能力も大切です。
清掃員の雇用形態・働き方
アルバイトやパートも多い
清掃業には実にさまざまな働き方があります。
正社員だけでなく、派遣社員や契約社員、またパートやアルバイトが非常に多いことも特徴です。
これは清掃範囲が狭く、比較的短時間で終わる施設が多いこと、また早朝や深夜に短時間で一気に清掃を終わらせたいというところが多いためです。
また清掃員には高齢者が多いため、体力的にも数時間で終えられるアルバイトやパートのニーズが高いという一因もあります。
長時間開いている公共施設や駅、休みのない公共交通機関などでは、ローテーションやシフトを組み数時間単位で清掃員を交代させていることもあります。
自分自身の働き方の希望やライフスタイルに合わせて働くことができるといえるでしょう。
清掃員の勤務時間・休日・生活
シフトを組んで休みを取ることが多い
清掃員の勤務時間や休日は、清掃する場所と仕事内容によって異なります。
オフィスビルの清掃では、社員が出社する前に仕事をするため、早朝にすべて終えられるよう5:30や6:00からはじまり、9:00頃には終えられるようにしているところが多いです。
商業施設ではまだ人の少ない午前中や閉店前の夜間に行われることが多く、オープン前の早朝やクローズ後の深夜に行われることも珍しくありません。
駅などでは清掃員が24時間常駐しているところもあり、交代で勤務することもあります。
こうした施設は基本的に休日や定休日がないため、365日仕事を行う必要があり、スタッフがローテーションを組み、シフトで休みを取ることがほとんどです。
清掃員の求人・就職状況・需要
清掃のニーズは一定数ある
近年は外国人観光客が増加したことや衛生管理・公衆衛生のニーズが上昇していることもあり、清掃業は一定のニーズがあり続けると考えられます。
ただしその多くは高齢者のパートやアルバイトで、正社員として清掃業を行うのは難しい一面もあります。
そんな中で近年急速に伸びてきているのが「特殊清掃」と「ハウスクリーニング」です。
特殊清掃は事件や事故現場等で清掃を行う専門の業者で、近年問題視されつつある高齢者の孤独死などに対応するためにニーズが増えています。
また共働き家庭が増えたことでハウスクリーニングの需要も増えつつあり、家事のスキルも生かせることから特に女性に人気が高まっています。
清掃員の転職状況・未経験採用
多くの人は転職で清掃業になる
清掃業は学歴不問で、体力さえあればどんな年齢の人でも働くことができるため、転職業界においても比較的チャレンジしやすい業種です。
業界や企業によって学歴や経歴を重視するところもありますが、清掃員になる際にこうしたことは問われないため、どんな職種や業種からでも転職しやすいです。
また清掃業はどんな時代であっても一定のニーズがあり、この先も仕事がなくなることはないため、長く働きたい人や経験を積んでキャリアアップしたいという人にも向いています。
一方で清掃員に新卒でなる人はあまりいません。
新卒の正社員の場合、清掃員を経験することはあっても、ゆくゆくは清掃員を束ねるリーダーや指導役としてキャリアアップしていくため、清掃員を続ける人は少ないです。