【2023年版】作業療法士国家試験の難易度・合格率

作業療法士資格とは

作業療法士資格とは、厚生労働省が主管する国家資格であり、国家試験に合格することで資格が取得できます。

作業療法士の資格は「名称独占資格」と呼ばれるもので、作業療法士を名乗って仕事をするためには資格取得が必須であるものの、作業療法を行うこと自体は資格がなくても可能です。

しかし、作業療法を実践するには高度な専門知識やスキルが不可欠であり、また新しい治療理論も日々新しく生み出されていくため、継続的な勉強も欠かせません。

このため、臨床の現場では、看護師などがサポートすることはあっても、あくまで作業療法を行うのは作業療法士であるという認識がもたれています。

作業療法の業務を行うには、作業療法士資格の取得が絶対条件となっています。

なお、作業療法士として働くためには、国家試験に合格した後に厚生労働省が管理する「資格者名簿」に登録することが必要です。

作業療法士になるには? 必要な資格や免許は?

作業療法士国家試験の受験資格

作業療法士国家試験の受験資格を得るためには、国または都道府県の指定する養成校で3年以上学び、所定の単位を取得して卒業見込となるか、または卒業することが必要です。

ただし、学業成績が悪く、国家試験に落ちる可能性が高いと判断された生徒については、学校全体の合格率を下げないために、そもそも受験資格を与えないという学校もよく見受けられます。

身につけなければならない知識量は非常に多いうえ、座学だけでなく現場での臨床実習も相当なボリュームがあるため、しっかりと勉強に励まなければ受験資格は得られないでしょう。

なお、同じリハビリ専門職である「理学療法士」の国家資格をすでに取得している人については、必要となる知識が一部重複しているため、養成校での学習期間が2年に短縮されます。

作業療法士試験の内容

作業療法士試験は、5つのなかから1つまたは2つを選択して答えるマークシート形式で実施されます。

問題は、基礎知識を問う「一般問題」160問と、より実践的な知識を問う「実地問題」40問の2種類、計200問で構成されています。

一般問題で出題される科目は、解剖学や生理学、運動学、病理学、臨床心理学などの医学全般です。

実地問題の科目は、リハビリテーション医学や作業療法を中心とした専門的な内容となります。

午前と午後にそれぞれ2時間40分ずつ、丸1日かけて行われる長丁場の試験となるため、時間配分や集中力の持続が合否を分けるカギとなるでしょう。

厚生労働省の試験概要をみると、口述試験と実技試験の記載もありますが、これは筆記試験を受けることが難しい重度視力障がい者を対象としたものであり、一般の受験生に課されるのは筆記試験のみです。

作業療法士試験の難易度・勉強時間

作業療法士国家試験の合格率は、ここ10年ほどは70%~80%前後というかなり高い水準で推移しています。

ただし、これは試験自体の難易度が低いわけではなく、上述の通り、多くの養成校で十分に試験を突破できる実力があると認めた学生だけに受験資格を与えているためです。

合格レベルに達するためには、養成校での授業に加えて、日々の予習復習や国家試験対策といった自宅学習にも熱心に取り組むなど、日々の積み重ねが不可欠です。

また、作業療法士試験は、かつては合格率が低かった次年度には、問題をやさしくして合格率を上げるといった帳尻を合わせる動きがみられましたが、ここ数年は連続して合格率が下がり続けています。

この背景には、ある程度作業療法士の数が充足したため、新規の資格取得者を絞る厚生労働省の意向があるとする声もあり、今後もさらに合格者を減らすため、試験の難易度が上がる可能性もあります。

作業療法士国家試験の勉強方法

試験までのおおまかなスケジュール

作業療法士国家試験は、卒業を間近に控えた最終年次の2月に受験することになりますが、その試験対策は、およそ1年半ほど前から始めるケースが一般的です。

養成校によって多少の差はあるものの、最終年次の1年前(3年制ならば2年目、4年制ならば3年目)の9月頃から、国家試験対策の授業が行われるようになります。

4月を迎え、最終年次に進級すると、いよいよ試験対策が本格化しますが、夏頃には現場での臨床実習が1ヵ月~2ヵ月にわたって行われるため、その期間は試験勉強を一時中断します。

実習を無事に終えた秋頃には、外部の業者による模擬試験や校内模擬試験が実施され、自身の現時点での進捗状況を確認しつつ、引き続き勉強に励みます。

年が明けてからは、追い込みの時期となり、1日のほとんどの時間を勉強に費やすことになるでしょう。

すべての単位を取得したうえで、模擬試験においても優秀な成績を収めると、学校から「卒業見込み」と認定されて受験資格が与えられ、2月頃に実施される本番に臨みます。

作業療法士国家試験の勉強方法

過去問を徹底的にやりこむ

作業療法士国家試験において何よりもまず優先すべきなのは、過去問を徹底的にやり込むことです。

繰り返し解けば出題形式や問題の考え方に慣れることができますし、例年似たような問題が多数出題されるため、得点力アップにも直結します。

いきなり過去問すべてに挑むよりも、最初は各年度の一般問題に取り組み、ある程度の基礎知識を固めてから応用的な内容の実地問題へ進むという流れを経たほうが、スムーズに勉強できるでしょう。

また、勉強する際には、ただ単純に5つのなかから正解を選ぶだけではなく、残りの選択肢の「何が間違いなのか」まで、きちんと明確に説明できるようになることが大切です。

根拠がわからなければ、教科書で調べたりしてノートにまとめ、知識の定着を図りましょう。

過去問は、最低でも5年分、できれば10年分、何度も何度も解いて理解を深めることが望ましいでしょう。

科目ごとに勉強方法を変える

作業療法士国家試験は、生理学や運動学、臨床心理学、リハビリテーション医学など、計8科目のなかから出題されますが、それぞれの科目において有効な勉強方法は異なります。

たとえば、生理学のように、身体の生理機能に関する一連の流れを理解する必要があるものもあれば、運動学のように、人体のなかにある筋肉の名称を機械的に暗記しなければならないものもあります。

単語帳をつくったり、図や表にまとめたり、文字ではなく絵に描いてみたりと、それぞれの科目に合わせて勉強方法を柔軟に変えることがポイントです。

とくに実地問題については、心電図などのように、理論よりも画像で暗記するほうが効果的なケースもありますので、さまざまな勉強方法を試してみるとよいでしょう。

わからないことは積極的に質問する

作業療法士国家試験を受けるためには養成校に通うことが必須となるため、自身の周囲には、質問できる教師や同級生が必ずいます。

教科書や参考書の解説を読んでもわからないことがあれば、一人であれこれ悩むよりも、誰かに尋ねたほうがはるかに効率的です。

また、お互いに教え合うことで、知識の定着も早まりますし、つらい勉強に取り組み続けるモチベーションにもなります。

とくに、近年は過去問になかった新しい問題が出題される頻度が高まっており、参考書などではどうしても対策に限界があります。

誰かに質問して、ともに考えることは、作業療法士国家試験を突破するための1番の近道といえるかもしれません。

作業療法士国家試験の受験者数・合格率

作業療法士国家試験受験者数の推移

作業療法士国家試験の受験者数は、6,000人前後を推移しています。令和4年度は前年よりもやや減少し、5,719人となりました。

作業療法士国家試験受験者数_令4

作業療法士国家試験合格率の推移

作業療法士国家試験の合格率は、実施年によってややばらつきがあります。令和4年度の合格率は前年よりも上昇し、83.8%となっています。

作業療法士国家試験合格率_令4

令和4年度 作業療法士国家試験新卒・既卒受験者・合格率

令和4年度の作業療法士国家試験の受験者数は、新卒が4,809人、既卒は910人で、比率にすると新卒84.1%、既卒15.9%です。

合格率は新卒の方が大幅に高く、新卒91.3%、既卒44.3%となっています。

作業療法士国家試験新卒・既卒合格率_令4

令和4年度 作業療法士国家試験の概要

試験日 1.筆記試験:令和5年2月19日(日曜日)
2.口述試験及び実技試験:令和5年2月20日(月曜日)
申込書受付 令和4年12月14日(水曜日)から令和5年1月4日(水曜日)までの間に作業療法士国家試験臨時事務所へ提出すること。
試験地 1.筆記試験:北海道、宮城県、東京都、愛知県、大阪府、香川県、福岡県及び沖縄県
2.口述試験及び実技試験:東京都
受験資格 文部科学大臣が指定した学校又は都道府県知事が指定した作業療法士養成施設において、3年以上作業療法士として必要な知識及び技能を修得したもの(令和5年3月15日(水曜日)までに修業し、又は卒業する見込みの者を含む。)など
試験科目

筆記試験

一般問題及び実地問題に区分して次の科目について行う。ただし、重度視力障害者(視力の良い方の眼の矯正視力が0.03以下若しくは視力の良い方の眼の矯正視力が0.04かつ他方の眼の矯正視力が手動弁以下又は周辺視野角度(I/4視標による。以下同じ。)の総和が左右眼それぞれ80度以下かつ両眼中心視野角度(I/2視標による。以下同じ。)が28度以下若しくは両眼開放視認点数が70点以下かつ両眼中心視野視認点数が20点以下の者をいう。)に対しては、実地問題については行わない。また、重度視力障害者に対しては、点字、試験問題の読み上げ又はその併用による受験を認める。弱視者(視力の良い方の眼の矯正視力が0.15以下又は周辺視野角度の総和が左右眼それぞれ80度以下かつ両眼中心視野角度が56度以下若しくは両眼開放視認点数が70点以下かつ両眼中心視野視認点数が40点以下の者をいう。)に対しては、弱視用試験による受験を認める。
<一般問題>
解剖学、生理学、運動学、病理学概論、臨床心理学、リハビリテーション医学(リハビリテーション概論を含む。)、臨床医学大要(人間発達学を含む。)及び作業療法
<実地問題>
運動学、臨床心理学、リハビリテーション医学、臨床医学大要(人間発達学を含む。)及び作業療法

口述試験及び実技試験

重度視力障害者に対して、筆記試験の実地問題に代えて次の科目について行う。運動学、臨床心理学、リハビリテーション医学、臨床医学大要(人間発達学を含む。)及び作業療法

合格率 83.8%(令和4年度)
合格発表 令和5年3月23日(木曜日)午後2時に厚生労働省ホームページの資格・試験情報のページにその受験地及び受験番号を掲載して発表
受験料 10,100円
詳細情報 厚生労働省 作業療法士国家試験