臨床心理士にとって大切なことは?
信頼関係を築く
臨床心理士が接するクライエントは、自らが抱える心の問題の闇から抜け出せず苦しんでいる人たちです。
人生を楽しめていなかったり、未来に希望が持てなくなっていたりすることも少なくありません。
また、虐待や暴力、いじめなどの辛い経験をした人のなかには、人間不信に陥って簡単には他人に心を開けない人もいます。
このような相手から信頼を勝ち取り、心を開いて本音を話してもらえるような関係を作るのは、とても難しいことです。
まずはクライエントに真っ直ぐ向き合うこと、そして信頼関係を築く努力を続けることが大切です。
最初からカウンセリングができない場合は、まずは雑談をしたり自分の話をしたりして相手が打ち解けてくれるのを待ちます。
辛抱強く続けていくことで、時間の経過とともに信頼関係ができるでしょう。
これが臨床心理士のカウンセリングの仕事の第一歩となるのです。
相手の意見を尊重する
クライエントとの信頼関係ができたら、カウンセリングに入ります。
相手の話を聞き、適切なカウンセリングを実践して、心の問題を解決に導くためのサポートをするのです。
ここで最も大切になるのは、「臨床心理士の個人的な価値観や意見を押し付けてはならない」ということ。
あくまでも「クライエントがどういう考え方をしているのか」「どのように生きていきたいのか」といったことを理解し、受け入れる姿勢が求められます。
相手の話を聞きながらも、自分の価値観で「こうすべき」と口を挟んでしまうようでは、臨床心理士という仕事は務まりません。
ありのままの相手を受け入れる包容力と高いコミュニケーション能力、そして何よりも、相手の微妙な感情の変化にまで気付けることが重要になのです。
コミュニケーションを工夫する
一言でクライエントといっても、さまざまな人がいます。
幼い子どもから高齢者まで、社会的な立場やキャリアも千差万別。
性格を見てみても、無口で内向的なタイプの人から社交的でお喋りが止まらないタイプの人まで、実にさまざまです。
性別も、女性の場合もあれば男性の場合もあります。
自分の性別に違和感を持っていることもあります。
ですから、臨床心理士はクライエントに応じて、話し方や接し方を変えることも必要です。
子どもであれば柔らかい話し方、ビジネスマンであれば論理的な話し方、お年寄りであれば方言を交えた話し方というように工夫するのです。
多様な人と接するのは簡単ではありませんし、当然のことながら気苦労も大きくなります。
しかし、相手に歩み寄る努力をすることでコミュニケーションが取りやすくなることは間違いありません。
誠実に対等に向き合う
臨床心理士が何よりも心がけておくべきことは「どのようなクライエントに対しても誠実に向き合うこと」です。
クライエントはひとりひとり置かれた状況は違っても、「心の問題を持っていること」は共通しています。
臨床心理士はいつでも誠実にクライエントと向き合い、信頼関係を築くことを一番に考えなくてはなりません。
たとえどんなひどい態度をとられても、絶対に相手を見下したり、バカにしたりしてはいけません。
臨床心理士が心を開き、クライエントを受け入れることで信頼関係が生まれる。
そしてクライエントも臨床心理士に対して本当の自分の悩みを打ち明けられるようになります。
臨床心理士は専門分野に対する深い知識を持つばかりでなく、他人を真っ直ぐに受け入れる力を持つ「器の大きさ」も問われる職業です。