女性でも救急救命士になれる? 女性の強み・弱みや結婚後の働き方について解説

女性の救急救命士の現状

救急救命士といえば、重体の傷病者を急いで病院まで運送し、適切な応急処置を施し、そしてまた次の通報の現場へ急ぐといった、体力と集中力、冷静さを要する仕事です。

そのため、一般的に女性より体力のある「男性の職場」と言われてしまうのも仕方がないかもしれません。

正確なデータこそありませんが、実際、女性救急救命士の数は非常に少ないのが現状です。

令和2年の救急救命士国家試験の女性合格者は219人で、男性2,356人と比較すると1割にも及びません。

しかし、令和元年中の救急車の出動件数は年間600万件以上、搬送人員も年間597万人以上と非常に多く、さらに年々増加傾向にあるため、消防官や救急隊員の需要は高まっています。

そうした流れを受けて、女性の救急救命士も徐々にではありますが増えてきているようです。

子育てや出産など女性ならではの悩みもあり、女性救急救命士として長く働き続けることは難しいとはいえますが、だんだんそうした悩みに対するサポート体制が整いつつあります。

女性の救急救命士の強み・弱み

女性ならではの気遣いを生かせる

女性救急救命士はまだまだ少数ですが、だからこそ男性社会といわれる救急救命の現場で女性の強みを生かすことができます。

たとえば、傷病者やその家族に寄り添った親切な説明をしたり、不安な人に温かい励ましの言葉をかけてあげるのは、男性より女性のほうが得意なのではないでしょうか。

子どもや女性の急病者には、「女性が来てくれて安心した」という人もいます。

また、婦人科疾患や急な出産のシーンなどでは、女性救急救命士のニーズも高くなっています。

女性が少ない職場だからこそ、女性ならではの気遣いを生かせる救急救命士が求められています。

体力面で悩むことが多い

救急救命士のほとんどは消防官です。

119番の通報と同時に現場に駆けつけ、傷病者に適切な応急処置を施し、ベッドの空きがある病院を探し、最短ルートで搬送します。

医療現場は一分一秒を争う世界ですので、やはり体力面で男性と比べて女性はやや不利かもしれません。

消防学校の訓練でも重い防火服を着て走ったり、救助者を担いで運んだりといった訓練があります。

また、救急救命士(消防官)は24時間勤務が基本ですので、そうした意味でも基礎体力が必要とされることは言うまでもありません。

男女間での体力の違いや出産後の体力の低下など、体力面で悩む女性救急救命士は多くいます。

ただし、学校に赴いて市民指導をしたり、書類を作成したりなどの仕事もありますので、アスリートのような体力が求められているわけではなく、知識や技術などでカバーできることもあります。

救急救命士の結婚後の働き方・雇用形態

消防署で働く場合、公務員である救急救命士には、結婚や出産後も安心して働ける制度がたくさんあります。

「産前産後休暇」、「育児休業」、「育児短時間勤務制度」、「部分休業」などの制度に加え、多くの自治体では地方公務員の宿舎、消防官専用の家族寮が完備されていることもあります。

育児休業中も育児休業手当金が支給されるので、安心して子育てすることができます。

また、民間企業でありがちな、休業するとキャリアアップに影響するという問題もありません。

そして、「部分休業」は、勤務のはじめの時間かおわりの時間を、1日2時間変更して休業できる制度です。

これによって、子どもを保育園に送っていく時間や、家族との時間を多くとることも可能です。

救急救命士は子育てしながら働ける?

救急隊員の仕事を現役で続けながら、出産・子育てを両立させるのは簡単なことではありません。

24時間勤務を終えた後は朝ですので、そのまま昼過ぎまで睡眠をとる場合も多いからです。

もちろん、配偶者が主夫を担当したり、家族のサポートを得られる場合は問題ないでしょうが、すべてを一人でとなると、やはり体力的・時間的に厳しいものがあります。

そのため、女性救急救命士の中には出産を機に退職してしまう人も多くいます。

しかし、公務員であるため休暇制度や家族寮の完備など、子育てを支援する環境は整っています。

子育て中は現場での仕事を離れ、通信指令員として通報を受けた時に応急処置を口頭で伝える仕事をしたり、救命講習を担当するなど、業務を少し変更して働き続けるといった方法もあるでしょう。

救急救命士は女性が一生働ける仕事?

女性が医療関係の職場で働く場合、出産・子育てなどにおいては、やはり救急救命士ではなく看護師の方が働きやすいといえるでしょう。

正社員で勤務時間を短縮して働くことができる病院もありますし、派遣やアルバイトという働き方もあるからです。

ですが、消防署においても女性の活躍を支援すべきという声が高まりつつあります。

女性救急救命士は必要とされていますし、各種制度やサポート面もますます充実していくと見込まれますから、女性が一生救急救命士として働き続けることは可能です。

育児中は事務職に異動したり、業務を変更したりすると、子育てとの両立がよりしやすくなるでしょう。

こういった変更が可能か、就職の面接の際にしっかりと聞いておくことも大切です。