競輪選手のつらいこと・大変なこと・苦労

競輪選手のつらいこと・大変なこと

若手選手は金銭的に苦しい時期が続く

競輪選手の数は1990年代には約4000名いましたが、現在は約2300名(2019年時点)と激減しています。

多くの団塊世代の選手たちが引退した事情もありますが、選手数が減った大きな理由は長期の経済不況と競輪人気の衰退です。

競輪場の閉鎖が相次ぎ、日本競輪選手養成所への入学も年2回から年1回に減りました。

長期の経済不況と競輪人気の衰退で売上が下がり、賞金額も減っています。

そのため、なかなかレースに勝てない若い選手の収入が低くなっており、若手の多くは移動の交通費や食費などを節約しています。

成績が振るわなければ20代前半でも引退に追い込まれるため、デビュー直後の時期を乗り切れるかどうかが大きな問題となっています。

行動が制限される

若手の苦しい時期を乗り越えると、収入はそれなりに高くなります。

しかし、レースに出場する機会が増えると、全国の競輪場を渡り歩かなければなりません。

その結果、1ヵ月の半分近くは自宅に帰れないこともあります。

競輪は公営ギャンブルであるため、一般のプロスポーツとは違って八百長防止のための行動制限があります。

レース開催中は競輪場の選手宿舎に入り、携帯電話などの通信機器はすべて預けて緊急時以外は家族とも連絡をとれません。

とくに子どもがいる家庭では、家族と一緒に過ごす時間をつくれないことがつらいと感じる選手も少なくありません。

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競輪選手の悩み・よくある怪我

競輪選手にとって、最も大きな悩みは怪我が絶えないことです。

レースや練習中に接触したり、バランスを崩して落車したりすると、大きな怪我につながります。

落車による事故はひんぱんに発生

競輪では、レース中や練習中の落車による事故が起きることがあります。

競輪レースでは時速50~80kmほどのスピードが出ますが、競輪用の自転車にはブレーキがありません。

自転車を止めるときにはペダルを逆回転させて速度を落としますが、急には止まれないばかりか、一気に減速することも難しい構造となっています。

競輪という競技の特性上、避けられない事故があるのは事実です。

他の自転車と接触したり、バランスを崩したり、さらには落車した自転車に衝突したりして、落車による事故はひんぱんに起きています。

競輪の自転車ではペダルとシューズとが固定されているため、落車すると自転車といっしょに選手も転がっていってしまうことがあります。

落車すれば負傷は免れず、切り傷や打撲といった軽症ですめばいいですが、鎖骨や肋骨などを骨折することも少なくありません。

最近はヘルメットやプロテクターなども改善され、厳しい事故対策が取られているため、命にかかわる重大な事故は減ってきています。

レース中の落車で死亡した選手もいる

近年は重大な事故は少なくなってきていますが、過去には残念ながら死亡事故も起きています。

若手のホープとして活躍していた内田慶選手が、レース中の落車事故で死亡したのは2008年9月のこと。

第51回オールスター競輪のレース中、後退してきた選手とスピードを上げてきた選手の間にはさまれてしまったのです。

この接触によって前輪のワイヤースポークが全壊し、内田選手は車体ごと前のめりに崩れ落ちました。

そして、バンクに顔面から叩きつけられて頭がい骨を骨折してしまい、すぐに近くの病院に搬送されましたが外傷性くも膜下出血のために亡くなりました。

内田選手は「全日本プロ選手権自転車競技大会」の4km個人追い抜きで6連覇を達成していた若手のホープで、まだ27歳の若さでした。

これまでにレース中の落車による事故で死亡した競輪選手は計7名います。

1990年代から2000年代にかけて内田選手のケースを含めて計6件の死亡事故が起きていますが、2012年の坂本照雄選手の死亡事故を最後に重大な事故は発生していません。

競輪界でも道具の改良などで重大事故の防止に全力を挙げており、以前に比べれば大きな落車事故のリスクは低くなっています。

一般道路で加害者になるケースもある

競輪選手は「乗り込み」という一般道を走るトレーニングを行います。

持久力をつけるために数人の仲間と60~100kmの距離を走りますが、ある女子選手が乗り込みのトレーニング中に、道路を横断中のOLに衝突する事故を起こしたことがあります。

信号待ちで渋滞する車の横を走っていると、道路を横断していた女性が車と車の間から突然姿をあらわし、自転車に跳ね飛ばされた結果、道路で頭を強く打って亡くなりました。

競輪選手はレース中やトレーニング中の事故で自らが負傷するリスクがあるだけでなく、一般道路でのトレーニングにおいては加害者になってしまうケースもあります。

高速で走る競輪の自転車は凶器にもなりえますから、競輪選手は十分に自覚を持って自転車に乗らなければいけません。

競輪選手を辞める理由で多いものは?

競輪選手はスポーツ選手ですから、辞める理由としてはまず、年齢による体力の衰えや大きな怪我によって引退せざるを得ない状況となる場合があります。

レースになかなか勝てずに十分な収入が得られず、若くして引退を決意する選手もいます。

また、自ら引退を決意するケースだけではなく、競輪界には「代謝制度」というルールがあります。

毎年、日本競輪選手養成所を卒業して新たに競輪の世界に入ってくる新人選手たちがいる一方で、成績がよくないことで事実上の「引退勧告」を受けて現役を退く選手もいます。

代謝の対象となるのは、最も下のA級3班にランクされている選手だけです。

競輪ではレースの順位によって競争得点が与えられますが、A級3班にランクされている選手が3期連続して「平均競争得点70点未満」で「下位30人」に入ると、代謝の対象となります。