競輪選手に事故は多い?
落車による事故はひんぱんに発生
競輪では、レース中や練習中の落車による事故が起きることがあります。
競輪レースでは時速50~80kmほどのスピードが出ますが、競輪用の自転車にはブレーキがありません。
自転車を止めるときにはペダルを逆回転させて速度を落としますが、急には止まれないばかりか、一気に減速することも難しい構造となっています。
競輪という競技の特性上、避けられない事故があるのは事実です。
他の自転車と接触したり、バランスを崩したり、さらには落車した自転車に衝突したりして、落車による事故はひんぱんに起きています。
競輪の自転車ではペダルとシューズとが固定されているため、落車すると自転車といっしょに選手も転がっていってしまうことがあります。
落車すれば負傷は免れず、切り傷や打撲といった軽症ですめばいいですが、鎖骨や肋骨などを骨折することも少なくありません。
最近はヘルメットやプロテクターなども改善され、厳しい事故対策が取られているため、命にかかわる重大な事故は減ってきています。
レース中の落車で死亡した選手もいる
近年は重大な事故は少なくなってきていますが、過去には残念ながら死亡事故も起きています。
若手のホープとして活躍していた内田慶選手が、レース中の落車事故で死亡したのは2008年9月のこと。
第51回オールスター競輪のレース中、後退してきた選手とスピードを上げてきた選手の間にはさまれてしまったのです。
この接触によって前輪のワイヤースポークが全壊し、内田選手は車体ごと前のめりに崩れ落ちました。
そして、バンクに顔面から叩きつけられて頭がい骨を骨折してしまい、すぐに近くの病院に搬送されましたが外傷性くも膜下出血のために亡くなりました。
内田選手は「全日本プロ選手権自転車競技大会」の4km個人追い抜きで6連覇を達成していた若手のホープで、まだ27歳の若さでした。
これまでにレース中の落車による事故で死亡した競輪選手は計7名います。
1990年代から2000年代にかけて内田選手のケースを含めて計6件の死亡事故が起きていますが、2012年の坂本照雄選手の死亡事故を最後に重大な事故は発生していません。
競輪界でも道具の改良などで重大事故の防止に全力を挙げており、以前に比べれば大きな落車事故のリスクは低くなっています。
一般道路で加害者になるケースもある
競輪選手は「乗り込み」という一般道を走るトレーニングを行います。
持久力をつけるために数人の仲間と60~100kmの距離を走りますが、ある女子選手が乗り込みのトレーニング中に、道路を横断中のOLに衝突する事故を起こしたことがあります。
信号待ちで渋滞する車の横を走っていると、道路を横断していた女性が車と車の間から突然姿をあらわし、自転車に跳ね飛ばされた結果、道路で頭を強く打って亡くなりました。
競輪選手はレース中やトレーニング中の事故で自らが負傷するリスクがあるだけでなく、一般道路でのトレーニングにおいては加害者になってしまうケースもあります。
高速で走る競輪の自転車は凶器にもなりえますから、競輪選手は十分に自覚を持って自転車に乗らなければいけません。