医師大圃 研さん

1974年、東京都生まれ。NTT関東病院消化器内科医長。1998年日本大学医学部卒業後、都内の総合病院に勤務。2007年NTT関東病院に移り、消化管の早期がんに対する内視鏡治療を専門として、多忙な毎日を送っている。

内視鏡に関しては、どのように技術を身につけていかれたのですか?

当時、僕が取り組んでいた内視鏡手術の技術は非常に新しいものでした。どんなことをやっているのか理解している先生自体が少なかったですし、ましてやそれに携わっていた人は、全国的に見てもほんのわずかで。

僕にも直属の指導者はいなかったので、自分なりに考えていましたね。自分で行った手術を録画したビデオをすり切れるまで見返して、「次はああしよう、こうしよう」ということをずっと考えるんです。

手術後でグッタリしていますから、ビデオを見ながら寝てしまう…なんていうこともざらにありました。当時は技術的に確立されていなかったこともあり、内視鏡手術は5時間以上かかることも珍しくなく、手術のビデオを見るのも大変です。

僕はいま、「消化器内科」というところで働いていますが、内視鏡手術は外科の要素がとても大きいです。テクニックを身につけるためには「どれだけ経験を積むか」が大きなポイント。

たとえば、外科の先生は、手術以外の時間でもいたるところに糸を巻き付けて、糸結びの練習をしているんですよ。

僕は常に手術のことを考えてしまうんです。工事現場で地面掘り返すのを見てても、「あの地面を削り取る動きは、がん除去の手術に何か応用できないか」というように考えたりもしちゃいますね(笑)

いまのお仕事の内容と、1日の流れを教えていただけますか。

平日は、朝7時半頃から回診を始めます。1時間ほどかけて回ったあとは、朝のミーティングです。消化器内科は僕のいる「消化管」のほか「肝臓」と「胆のう・膵臓」の3つのグループに分かれていて、それぞれが1日の大まかな予定を確認し合います。

その後、8時半から外来の診察を始めます。僕は紹介状を持ってきている患者さんのみの診察ですが、平均1日に20人ほど、13時半から14時頃まで診察を続けます。日によっては、朝から内視鏡を行うこともあります。

午後の検査は通常13時からスタートするのですが、午前中の外来がそれ以前に終わることはないため、どうやってもお昼休憩はとれません。そのまま午後に突入し、内視鏡の検査や手術を行います。

検査は順調にいけば17時〜18時頃で終わり、そこから夕方の回診を行います。手術をする場合は21時をまわることもありますね。

午後の予定が終わったら、入院患者さんのカルテを記入します。「この患者さんには明日採血やCTを」といったオーダーも行います。それから医局に帰り、仕事のメールをチェックしたり学会や講演の資料を用意したり…と、事務作業的なことをします。

土日もお仕事をされるのですか?お休みはあるのでしょうか?

基本的に休日はありません。病気で入院している患者さんは、平日も土日も朝も夜も関係ないですよね。ですから、土日も一度は回診して様子を確認するようにしています。

患者さんは、少し私たちの顔を見るだけでも安心しますから。最近は、土日は講演などで地方へ出かけることも増えましたが、空いている日は必ず行きますね。

もちろん、医師は自分たちの生活もなんとかしなければなりませんから、全てを投げ打っても…とまでは言いませんが、うちのグループではみんな可能な限り土日も出るようにしています。

ちなみに、グループは6人です。当直は若い人を中心にしていて、僕はいまは月に1度くらいですね。当直はけっこう免除してもらってると思います。

そんな多忙な日々のなかで感じる、お仕事のやりがいを教えてください。

医師というのは患者さんに感謝される機会が多いものです。それ自体がたしかにやりがいでもあるのですが、自分に自信がなければ、本当の満足感には繋がらないなと思うんですよね。

僕自身、本当にやりがいや満足感を感じられるようになったのは、ある程度経験を積んで、自分がやっている行為に自信を持てて、胸を張れるようになってからです。

新米の頃には「こんな自分が給料をもらっていいんだろうか」という気持ちもあったんです。まだ若くて一人前でないときに、給料をもらうことは筋違いくらいに思っていました。そんな気持ちがあったから、非常勤でほとんど給料のないときも頑張れたのかもしれません。

世の中にはいろんな歯車が回っていて、それぞれの人が何かの歯車の役目を担っていると思っています。歌って人を幸せにする人もいれば、内視鏡で「がん」をとる僕のような人もいます。

そして、がんをとり、病気から人を救うという役目が僕の存在意義であると感じています。