不動産鑑定士の勤務先と仕事内容の違い

不動産鑑定士の勤務先の種類

不動産鑑定士の勤務先は、おおまかに「不動産系」と「金融系」の2種類に分けることができます。

不動産系のなかで最も代表的なのは不動産鑑定事務所ですが、そのほかにも不動産販売会社や不動産管理会社などが挙げられます。

不動産会社では「鑑定部門」に所属することが一般的であり、外部からの鑑定を請け負うか、自社物件を鑑定するかという違いはあるものの、業務内容は不動産鑑定事務所とさほど違いはありません。

金融系としては、信託銀行や「REIT」と呼ばれる不動産投資信託を取り扱う証券会社、監査法人などがあります。

金融系に属する不動産鑑定士は、鑑定業務以外にも物件運用や企業会計などに携わることもあり、不動産系の企業よりも業務内容が幅広くなりやすいといえます。

さらに、富裕層向けに、物件紹介から運用までワンストップでサービスを提供するコンサルティング会社に勤める人も一定数います。

不動産鑑定士の仕事内容

不動産鑑定事務所で働く不動産鑑定士

不動産鑑定事務所では、国や都道府県、市町村、裁判所といった公的機関から依頼を受けることもあれば、銀行をはじめとした法人企業や、資産運用を検討している個人から依頼を受けることもあります。

物件の規模やスケジュールにもよりますが、それぞれの物件調査から鑑定評価書の作成までに至る一連の業務は、個々の不動産鑑定士が単独でこなすことが一般的です。

近年では、とくに投資関係の案件が増加傾向にあり、その不動産が投資に向いているかどうかを判断する「デューデリジェンス」という作業を手掛けるケースが多くなっています。

同じように、経済の国際化が急速に進展している背景もあり、企業会計に「IFRS」という国際基準のルールを適用する企業が増えており、それに対応するため保有資産を時価評価する案件も増えています。

金融機関で働く不動産鑑定士

金融機関で働く不動産鑑定士の仕事内容は、さらに「担保評価部門」に所属するケースと「信託部門」に所属するケースの2つに大別されます。

銀行が法人や個人にお金を貸し付ける際、その保証として「不動産担保」を徴求することがよくあります。

担保評価部門の不動産鑑定士は、担保物件にいくらの市場価値があり、売却した場合にいくら回収できる見込みがあるのかを評価して、貸し付ける金額の妥当性を検証することが仕事です。

また、不動産のなかには、所有権を元のオーナーに残したまま、専属の管理会社が運営を行い、そこから得られる賃料収入などをオーナーに還元するという「信託形式」が取られるものもあります。

信託部門の不動産鑑定士は、物件ごとに最適な運用方法を見出し、得られる利回りを最大化することがおもな仕事です。

なお、どちらの部門についても、不動産鑑定士が求められるのはメガバンクをはじめとした大手金融機関に限定されます。

コンサルティング会社で働く不動産鑑定士

コンサルティング会社では、不動産鑑定士が単独で動くよりも、弁護士司法書士税理士など、法人企業や富裕層の個人と顧問契約を結んでいる他士業者と連携して働くケースが一般的です。

コンサルティングの内容は多岐にわたりますが、企業が保有する資産の最適な運用方法を提案するCRE戦略業務や、不動産オーナーのもつ資産の利回りを向上させるアドバイザリー業務などが代表的です。

コンサルティングは、鑑定評価のように定められたルールや手順に従う正確性・綿密性が求められるというよりも、個々の案件に応じて臨機応変に対応していく発想力・フットワークが求められる仕事です。

同じ不動産鑑定士であっても、不動産鑑定事務所に勤める人とコンサルティング会社に勤める人では、向き不向きは大きく違ってくるでしょう。

独立して働く不動産鑑定士

不動産鑑定士が独立して、自身の不動産鑑定事務所を開業するケースも少なくありません。

資格保有者にしかできない「独占業務」が認められているうえ、開業にあたって特殊な機材などが必要になることはほぼなく、初期投資が安くて済むため、不動産鑑定士は開業しやすい職業といえます。

基本的な業務内容は、不動産鑑定事務所に勤めている場合と大きな違いはなく、顧客から依頼された案件をこなしていくことになります。

ただし、都道府県や裁判所といった公的仕事は、ほぼ既存の事務所に受注先が固定されているため、新規開業者がそこに割り込んでいくことは至難です。

不動産鑑定士には、サラリーマンなどと違って定年退職がなく、本人の意思次第でいつまでも続けられるため、なかなか世代交代が進まない事情もあります。

独立開業するなら、詳細なマーケティング調査を行って、できる限り競合の少ないエリアを狙って創業するなど、なんらかの事業戦略が必要になるでしょう。