不動産鑑定士の働き方の種類とその特徴

不動産鑑定士の雇用形態

不動産鑑定士は、資格保有者数が全国で約9000人ほどしかいない希少かつ難関な国家資格であり、資格保有者の大半はフルタイムで働く正社員か、独立開業している経営者です。

しかし、家庭の事情などで働く時間が限られる人や、より自由な働き方を求める人が契約社員やパート・アルバイトを選ぶケースも近年は増加傾向にあり、雇用形態は多様化しています。

なかには、育児のためにほぼ在宅のみで仕事をしている「ママさん鑑定士」もいるようです。

また、勤め先によっては、非正規雇用であれば資格がなくても採用するというケースもあり、「補助者」として働きながら不動産鑑定士試験合格を目指して勉強に励んでいる人も少なくありません。

以下では、それぞれの雇用形態における特徴や待遇面について、比較しながらご紹介します。

正社員の不動産鑑定士

正社員の特徴

正社員として働く不動産鑑定士は、さまざまな業界で幅広く活躍できることが特徴です。

不動産鑑定事務所や大手不動産会社を筆頭に、メガバンクや信託銀行、証券会社、監査法人、ファンド、コンサルティング会社、あるいは鉄道会社や行政機関で人もいます。

転職を重ねながら多様なスキルを身につけて、外資系企業に勤めてビジネスの最前線で働くことも可能です。

ただし、正社員の仕事には、やりがいがあると同時に重い責任ものしかかるうえ、労働時間自体も長くなりがちです。

とくに若手の間は、長期出張を何度もこなさなければならなかったり、短い頻度で転勤を強いられるケースも少なくないため、体力面・精神面双方の負担が大きいでしょう。

正社員の待遇

正社員の不動産鑑定士は、上場クラスの大手企業に勤めるケースが多く、待遇面は非常に恵まれています。

年収は600万円~700万円前後と、一般的なサラリーマンを大きく上回る水準となっているうえ、福利厚生も充実している企業が目立ちます。

キャリアを積んで外資系企業で活躍している人のなかには、年収1000万円を大きく超えている人も少なくありません。

正社員の不動産鑑定士は、資格取得の難しさや求められるスキルの高度さ、労働時間の長さに見合った、手厚い待遇が期待できるでしょう。

派遣社員の不動産鑑定士

派遣社員の特徴

派遣社員や契約社員として働く場合、正社員よりも労働時間が短いこと、そして担うべき責任が軽いことが特徴として挙げられます。

業務内容はさまざまで、高度なスキルを有してほぼ正社員と同じ仕事をこなすケースもあれば、一部業務に特化した専門的な働き方をするケース、正社員の補助業務や一般事務を手掛けるケースもあります。

不動産鑑定士試験の勉強をしたいが、実務経験も積みたいと考える人については、業務後に勉強する時間を確保しやすい派遣社員のほうが、正社員よりも望む働き方に近くなるでしょう。

派遣社員の待遇

派遣社員の給与は、自身のスキルや経験によって大きな差があります。

不動産鑑定士資格を取得・登録していれば、年収400万円以上が相場となり、実務経験次第ではほぼ正社員と遜色ない収入を得ることも可能です。

しかし、契約期間は数か月前後、どんなに長くても3年がひとつの目安となるため、雇用の安定度という点においては正社員より劣ることは否めません。

ただ、企業によっては、将来的に正社員へ登用することを前提としていたり、再雇用制度を設けているケースもあるため、条件面を確認してみるとよいでしょう。

アルバイト・パートの不動産鑑定士

アルバイト・パートとして働くことを選ぶ人の多くは資格未取得であり、これから不動産鑑定士試験を受ける、あるいは短答式試験には合格したが論文式試験には受かっていないというケースが大半です。

実務経験を積むことよりも、資格取得を優先させたいという場合、派遣社員よりもさらに多くの時間を勉強に充てることができるでしょう。

仕事内容は、不動産鑑定士の補助業務が中心となり、役所での情報収集や、計算内容のチェックなどを手掛けるケースが多いようです。

時給は1,000円前後が相場であり、一般的なアルバイトと大差ありませんが、実務経験を試験勉強に生かせる点は大きなメリットといえます。

不動産鑑定士の現場の空気に触れるだけでも、一度アルバイトとして働いてみる価値はあるでしょう。

独立開業して働く不動産鑑定士

不動産鑑定士は独立開業型の資格であり、自分の事務所を経営している人は大勢います。

年収は自身の経営手腕や人脈次第ですが、年収1000万円を超えている人も珍しくないようです。

しかし、公示価格評価などの公的案件は、既存の不動産鑑定事務所によってほぼ抑えられており、新規独立者の参入余地はあまり残されていないのが現状です。

これまでの実績がものをいう不動産鑑定士業界にあっては、後から開業しても古参の鑑定士から案件を奪うことは容易ではありません。

不動産鑑定士には、サラリーマンなどと違って定年退職制度がなく、本人の希望次第でいつまでも働き続けることが可能であるため、こうした厳しい業界環境は当面続く見通しです。

ただ、業界全体で高齢化が進展していることも事実であり、今後緩やかに世代交代が進んでいくにつれ、若い不動産鑑定士にも徐々にチャンスが巡ってくるでしょう。

副業・在宅の不動産鑑定士

不動産鑑定士の鑑定評価業務は、物件調査などのフィールドワークと、情報分析や報告書作成といったデスクワークの2種類の作業から成り立っています。

このうち後者については、パソコンさえあれば自宅で作業することも不可能ではなく、育児や介護と仕事を両立させるために、ほぼ在宅のみで働いている人もいます。

完全にフリーランスで働き、案件ごとに請け負うというよりも、特定の事務所に所属するというケースが目立っており、収入面も安定しやすいでしょう。