トリマーの仕事をするうえで大切なこと(体験談)

想定外の事態

私の卒業したトリマー専門学校(ジャパンケネルクラブ認定校)は、犬の起源・遺伝・繁殖・行動学や生態など、獣医師やハンドラー(ドッグショーにおける技術と知識を備えたプロ)の講義と、実習では常にモデル犬がいるといった恵まれた環境だったと思います。

このような知識や技術を学べる機会はなかなかないことですし、大事な内容に間違いはありません。

しかし、深い知識を学ぶ前にもっと大切なことがありました。

それは消毒などの衛生面の徹底です。

学校では当然のごとく行われていたことが、2か所目に勤務したペットショップでは行われないこともあり、当時疲労が重なっていた私はウイルス感染症で入院を余儀なくされました。

その後、衛生面は改善されたのですが、私の心の中にはトラウマとして残っています。

ギャップをステップに

学校での実習は、スタンダード(犬種標準)に添ったカットを教わることが多いのですが、実際の仕事では、短めのカットや可愛く見えるカットを希望されるお客さまが多いようです。

慣れるまでは基本は骨格にあるという要点をおさえ、イメージを描きながら少しずつカットしていくと失敗も最小限におさえることができると思います。

カットは、それぞれの骨格や特徴をよく理解することから始まりますので、ペットとして飼われている家庭犬の特徴は、犬種別に調べておいたほうがよいように思います。

保定は立派な特技

動物の扱い方が上手な人は、動物に信頼されやすいといった傾向があるようです。

苦痛を与えずに動きを抑える「保定」という重要な仕事があります。

この作業がうまくできることで時間に余裕が生まれ、カットもイメージ通りに仕上がるといってもよいのではないかと思います。

保定とは、動物の四肢など関節の動く方向を把握し、正しい身体の位置をおさえながら落ち着かせることです。

暴れる犬をコントロールできるトリマーは、一目おかれる存在にもなることもありますので、実習の際に習得しておくとよいでしょう。

工夫しながら楽しむ

トリミングの道具の中には、ハサミなどの刃物があります。

カット時は、一見すると両方の刃を動かしているように見えるかも知れませんが、実は「動刃」と「静刃」があり、動刃にあたる親指の方で動かして切り、静刃は受ける形で切っているのです。

私は時間があれば練習していたのですが、道具に慣れるばかりでなく、その先の自信にも繋がった記憶がありますので、一つの練習方法としてお試しください。

トリマーという仕事は、頭の中だけで勉強するものではなく、頭数をこなしながら自分なりに工夫していくことが一番の勉強だと思っています。

学校以外にも犬に触れる機会のある方は、トリミング台を購入されて実際の感覚をつかむと非常によいと思います。

勉強は目指したその時から始まり、短く終わる人もいれば長く続く人もいます。また、人それぞれ苦手とするところも異なります。

短所ばかりが気になり、自分を見失ってしまっては前へは進めません。

短所を補うにはどのような努力が必要か、自分の得意なところをより伸ばすにはどうしたらよいかなど、自分自身を見つめなおすことも大切な勉強の一つではないかと思います。