寿司職人の独立・開業

職人になるか、経営者になるか

いざ独立し店を構えたら、最終的に経営者になるか職人であり続けるかを決めなければいけません。

店を持つということは経営を行うということです。

職人ならセンスのある会話と握りの技術があればいいのですが、経営者は店を存続させるために利益を出し続ける必要があります。

そのためには売れる店であること、固定客をいかにつかまえるか、土地柄にあった店舗づくりができているかなどがポイントです。

経営を学ぶなら、修行する店で経営を教えてもらうのが一番です。

修行が15年以上になると店を任されるようになり、板前の指導のほか、仕入れの方法や経営のノウハウを学ぶ修行が始まります。

学んでみて、もし自分に経営が向いていないと感じたら、別途経営者を見つけて自分は職人として店に立つといった共同経営という形もいいでしょう。

独立後はさらに過酷に

店を自分で切り盛りしていくということは、上司がいないということです。

すべて自分の責任で決定し、トラブルが発生すれば自分で解決しなければいけません。

まず店を建てるには資金を調達しなければいけません。

銀行やお得意さまから融資を受けられるか、立地は十分に調査したか、同業の店は何店舗くらいあって競合になりそうかなど、開店前にしっかりと考える必要があります。

また、カウンターのみの高級店にするのか、地域密着型の庶民的な店にするのか、内装をどうするか、カウンターはどんな形にするか、客席はどれくらいにするかなど考えることは山ほどあります。

また開店したとなれば、明け方ごろまで店の仕事に追われ、朝6時には市場で食材を調達。睡眠時間はわずか1、2時間という時期が3、4年続くケースもあります。

自分の店で自分の好きな仕事ができるとはいえ、体力的にはつらい時期が続くので、大変な状況も鑑みて本当に寿司職人になりたいかを考えてみることも必要です。

寿司はエンターテイメント

「つらい修行が続いても絶対に独立してやる」「一流の握りを提供したい」というような確固たる意志を持っているなら、カウンター中心の店舗での修行をおすすめします。

お客さまの前で寿司を握るということは、握りの技術はもちろんですが、寿司職人の大切な武器であるお客さまとのコミュニケーション力が磨かれるからです。

寿司職人がどれだけ自分の顧客を増やせるかどうかは、技術だけで決まるものではなく、接客能力が大切なのです。

つまり、独立は自分の客をどれだけ付けられるかが重要です。

そのためにはお客さまの名前を覚えておいたり好みのネタを握るなど、個人的な領域に少し踏み込む、などということがお客さまの心をつかむポイントになります。

お客さまとのほどよい緊張感のなか、心地よい会話とおいしい握りを提供する——厳しい世界だからこそ、いかにして腕を磨き、自分の客を増やせるか。

それが寿司職人の力の見せどころといえるでしょう。