最近の恋愛小説について一言

数年前、「世界の中心で愛を叫ぶ」が全国的にヒットしました。それ以降数々の恋愛小説が生まれました。それらの恋愛小説に共通するものがあります。それは「大切な人が死ぬ」ということです。

世界の中心で愛を叫ぶは小説も異例の発行部数を記録しましたし、ドラマ、映画、漫画にも及びました。しかし、この作品に対し文学界ではいかなる文学賞も授けませんでした。それは何故でしょう。

一つは若者に流行りのブームだったこともあります。しかし、それ以上に欠けているものもあるのです。

みなさんはこの小説や映画を見て、大半の方は涙を流したかと思います。しかし、その涙は悲しみの涙ではないでしょうか。感受性をくすぐり涙を流すというのは作家にとっての最大級の賛辞であ
ります。

しかし、人が死んで悲しいのは当たり前です。特にかの作品は最初に大切な人が死んで、その回想が主な構成となっています。

つまり、読者は「いつ死ぬのか」「どこの場面で死ぬのか」と死を前提として読むのです。これは悲劇的な小説とも言えます。死という山を大きくするために、幸せな場面を作るのですが、しかし最初に死ぬことが分かっていると、それは救いようのない話になってしまいますね。

小説としては非常に優れています。起承転結の構成もしっかりされていて読者は惹きつけられますし、冒頭は主人公が大人になっている場面からはじまり、少年時代の回想、そして現在に戻るという時制の一致のルールも守られています。

しかし、これからプロになる小説家の方には、できればいい話を書いていただき、喜びの涙を読者に流させるような小説を書いて欲しいと思います。

小説とは電車に揺られて読んでいたり、寝る前の少しの時間を読書にあてたりと空白の時間を埋めるためにも適しています。ちょっとした時間に現実の世界から逃れて想像の世界に入り込む。そして本を閉じたときの思わず微笑してしまう心地よい余韻のようなものを求める小説を書いてください。