市役所職員の需要・現状と将来性

市役所職員の現状

地方分権の進展にともない、地域の課題は中央政府ではなく地方政府によって解決されることが求められるようになり、市役所においてもより自主性が必要とされている時代です。

その一方で、若者人口の減少や人件費削減などの理由から市役所職員の数は減少傾向にあり、結果的に職員一人当たりの仕事量は以前よりも増えているといえるでしょう。

今でも「定時退庁が当たり前」というイメージを持たれやすい仕事ですが、実際には残業が多い自治体も決して少なくありません。

また、基本的に残業をした分には残業代が支払われますが、各部署で残業代の予算額が決められているため、それを超えてしまえばサービス残業になることも考えられます。

これらの実態については、職員意識の調査結果を見るとよくわかるでしょう。

東京都町田市で2018年におこなわれた職員意識調査では、「現在の年収は、自分の業務量や質に比べて適当である」には29.9%、「職場では、個人の時間外勤務が年間360時間を超えないよう組織的な対応が行われている」には31.8%の職員が否定的な回答をしています。

参考:職員意識調査 町田市

このような調査結果からも、市役所職員であっても残業は珍しくないことや、その業務量に対する給料に不満を抱いている職員は少なくないことがわかります。

人員削減や仕事量の増加については全国の自治体に見られる傾向であり、この調査結果は程度の差こそあれ、ほかの市の状況とも重なる点が多いと推測できます。

市役所職員の需要

2019年4月時点の、地方公務員の総職員数は274万653人です。

この数字は1994年の約328万2千人をピークに年々減少し続けてきましたが、2016年以降はほぼ横ばいで推移しています。

参考:総務省 地方公務員数の状況

なお、2019年の総職員数は防災や地方創生、子育て支援への対応などにより、若干ではありますが対前年比で増加しています。

市民の生活をサポートしていくうえで一定の職員数は確保しなければいけませんが、人口減少や地方財政悪化などの問題を考えると、市役所職員の採用数が今後大きく増えることは考えにくいといえるでしょう。

市役所職員の将来性

さがり続けてきた給与

総務省の調査によると、地方公務員一般行政職の平均給与月額は2012年は「373,923円」でしたが、その後一貫して右肩下がりを続け2019年には「362,047円」になりました。

参考:総務省 平成31年地方公務員給与実態調査結果等の概要

その代表的な要因として、少子高齢化によって日本の人口が減少していることが挙げられます。

「人口が減る」ことは「税収が減る」ことに直結するため、その税金から支払われている公務員の給与が削減されるのは仕方のない部分です。

そして、今後も日本の人口は減り続けていくことが予想されており、現時点でも財政難に苦しむ地方自治体が出てきている状況です。

こうした背景や市民感情などを考えると、市役所職員の給与は今後も減少していく可能性が十分に考えられるでしょう。

AIの登場

AI(人工知能)の登場も、市役所職員の将来性に大きく関わる問題です。

事務系職員の仕事は「書類受付」「給付金の交付」「入力・チェック作業」などの定型業務も多く、これらの細かい事務作業が積み重なり残業につながっているケースもあります。

しかし、今後AIが発展していくことで、これらの単純作業はAIに取って代わられる可能性も考えられるでしょう。

そうなれば今よりも少ない職員数で事務作業をこなせるようになるため、リストラなどはすぐに起こらないとしても、今後採用数の削減などはあるかもしれません。

その際に「AIを活用する側の職員」になることができれば、価値の高い人材として評価を得ることも可能です。

市役所職員の今後の活躍の場

人口減少は簡単に解決できるような問題ではありませんが、現在、各市役所ではさまざまな取り組みがおこなわれています。

たとえば「地域の暮らしやすさ」や「子育て支援への取り組み」などを大々的にアピールし、移住者を積極的に受け入れている自治体もあります。

また、IT企業を積極的に誘致する自治体もあり、実際に多くのIT企業受け入れに成功している地方都市も出てきています。

このような取り組みにより「その地域に住みたい」と考える人を増やすことができれば、地域の経済発展につながり結果的に税収増も期待できるでしょう。

そして、こういった市全体としての取り組みに加えて、そこで働く職員一人ひとりの意識改革も大切です。

厳しい現状を改善するために、地域が抱える課題の解決策を見出す発想力や、増える仕事を効率的にさばくための創意工夫、古いお役所体質を内側から変えていくだけの情熱や忍耐力も必要です。

これからの市役所職員は、ほかの職員とも力を合わせながら「自らの手で新しい時代の市役所をつくっていく」という強い意識が求められています。