司書の魅力(体験談)

「ありがとう」

金銭のやりとりがないのに、初対面の人から「ありがとう」と言われること。これが、司書という職業の最大の魅力でしょう。最も感謝されるのは、やはりレファレンスサービス。

膨大な資料の中から、利用者が探している情報を、短時間で的確に提示できたときには「ありがとう」と何度も言われ、本当に嬉しくなります。

また、こちらが薦めた本をその日のうちに借りていってもらえたり、読後に「おもしろかった」とわざわざ感想を述べにきてもらえたりするときも、司書としての喜びを味わえます。

公立図書館の中には、大型車に図書を積んで山間地などを回る「移動図書館」のサービスを行なっているところもあります。利用者に好まれそうな本を選んで乗せているのですが、到着早々、子どもたちが「本を持ってきてくれてありがとう」などと言いながら借りていきます。

このように、数えきれない「ありがとう」に支えられて働けるのが、司書という職業です。

知識の蓄積

日々、利用者からの探し物に答えたり、話題の本や新刊本などの情報に触れたりしますから、当然、知識がどんどん増えていきます。

司書として働き始めたばかりのころは、自分が専門的に勉強してこなかった分野の質問が苦手でした。利用者にとって有益なレファレンスができないことが多く、自身の未熟さを悔やみました。

しかし、経験を積めば積むほどさまざまな知識が蓄積されていき、司書としての成長を実感します。

知的好奇心が旺盛な人にとって、毎日の業務が「常に勉強」である司書という職業は、魅力ある仕事だといえます。

チャレンジ

多くの公共図書館では、子ども向けに本の読み聞かせを行なっています。

司書講習で、演習の一環として大人を相手に読み聞かせをしたことはありましたが、「本物の」(という表現はおかしいでしょうけれど)子どもの前で絵本を読んだ経験はありません。

一回目の読み聞かせは、手と声とを震わせながらの朗読となりました。回を重ねるごとに慣れていき、子どもたちの表情を見渡せる余裕が生まれてくると、じっとこちらを見つめるその眼差しに、感動を覚えたものです。

司書という職業は、同じ業務内容をひたすら繰り返して日々を過ごしているような印象を持たれがちです。しかし実際には、新たな事柄にチャレンジさせてもらうことで経験を広げられる、魅力的な仕事なのです。