経済部K君の1日 (体験談)

「おい、K君、今の記者会見の記事を夕刊用に、至急原稿にしてくれ」。キャップが指示する。K君は、4年制大学の経済学部出身の31歳。

大学卒業と同時に全国紙の新聞社に入社し、社内研修や記者教育を受けた後、校閲部、整理部など2年間の内勤を経て、地方支局に配属された。

地方支局は、北陸地方の県庁所在市にあり、そこでは、警察署回りから、市政全般、大学、教育委員会などの取材、さらには、町ネタと称する小さなコラム記事の取材まで、実にさまざまな分野を担当させられた。

支局には、支局長、デスク(支局次長)のもとに、3人の若い記者が仕事をしており、K君の場合は、新人ということもあって、先輩の記者に従って、いろいろな分野の取材のお手伝いをした。

最初のうちは、写真撮影や録音取り、テープ起こしが中心だったが、そのうちすぐに簡単な原稿を書かされた。原稿書きでは、いつもデスクに怒鳴られ、ほとんど元の形をとどめぬほどに書き換えられた。

しかし、5年間の支局生活では、地域の隅々にまで足を運び、親しくなった人も多く、地元の人よりも地域に詳しいといわれるほどになった。

K君は、経済学部出身ということもあり、新聞社では、経済部を志望していた。支局勤務が終わると、希望どおり経済部に配属になった。

経済部には、大きく、民間の企業・産業担当と、政策担当の二つのグループがある。K君の場合、経済政策を希望したが、最初は民間企業を勉強した方が良い、ということで、1年あまり企業を回った。

企業取材の場合、大きなニュースは、会社の統合・合併、トップ人事である。こうした情報が業界でささやかれると、K君も連日のように夜討ち、朝がけを始める。

これらの極秘情報は、企業、金融機関、大株主などのトップにしか知らされていない。そのため、社長や会長と言われる人の自宅に、本人が帰宅した頃を見計らって取材訪問をする。

時には、けんもほろろに、追い返されることもある。しかし、K君は、粘り強く取材を重ね、大きなニュースをものにしたこともあった。

経済部では、企業回りの後、念願の経済政策担当ということで、経済産業省の記者クラブに詰めることになった。先輩記者(キャップ)とのタグマッチである。

記者会見の記事をお昼までに仕上げて、キャップと昼食、その後、記者クラブでは、午後2時~5時頃まで、記者会見、ブリーフィング(状況説明)が続く。6時頃から、官房長懇談が行われる。

経済産業省の主要課題についての説明だ。記事執筆の際の参考情報になる。その後省内の取材や朝刊用の原稿を書き終わると、夜9時頃になる。

朝は、直接記者クラブに出勤するのが午前9時~10時頃だから、一般のサラリーマンより楽かもしれない。ただ、大きなニュースや事件があると、時間に関係なく、早朝、深夜勤務が続く。

しかし、K君は今、念願の経済政策の中枢で取材をできる幸せを感じている。