指揮者つらいこと、大変なこと、苦労

指揮者になること自体が超難関

指揮者、とくにプロオーケストラの指揮者は「なりたい」と思っても、簡単にはなれない難関中の難関の職業です。

ほとんどの場合、まずは音楽大学の指揮科などで学びますが、同時にピアノとそれ以外の楽器2〜3種をプロレベルで弾ける演奏家としての腕も磨きます。

実際にプロオーケストラの演奏家に指示を与えるとき、自分が演奏できないようでは相手に認めてもらえません。

何パートもの楽譜を読みこなし、瞬時に頭の中でそのハーモニーを再現できる能力も必要です。ほかのどの科よりも、ハードで幅広い勉強が必要なのが指揮科です。

音楽大学を卒業後、指揮者を目指そうと思うならオーケストラかフリーの指揮者などについて、長い下積みを経なければなりません。

師事する指揮者の仕事の手伝い、リハーサルで指揮の代役、下調べ、コンサートへの同行、衣装へのアイロンがけ、荷物持ち、音楽に関係ないことも行います。

その合間に、人脈をつなぎ、師匠から指揮をする上でのコツを盗み、腕を磨いていくのです。ときには素人オーケストラの指揮をボランティアで行って指揮や指導の練習を行うこともあります。

しかし、長年修行を積みさえすれば、いつかは指揮者になれるというものではありません。国内にはオーケストラの数自体が少なく、指揮者の席は限られているからです。

世界的コンクールで入賞したり、新設楽団のオーディションに参加するなどしてキャリアを積み重ね、運がよければ、ようやく指揮者デビューを果たせるのです。

心のハーモニー

フリーの指揮者の場合は、コンサート直前に数回リハーサルをしただけで、本番を迎えることも珍しくありません。

それが行える指揮者は超有名な場合が多く、それなりの敬意をもって演奏者も迎え入れますが、ベテラン演奏家たちの心をつかみ、自分の思う音色を引き出すのは、スター指揮者にとっても大変な作業です。

人心掌握の難しさは、キャリアの浅い指揮者にとってはなおさらのこと。新米指揮者は音色の前にオーケストラメンバーの心をどうまとめていくかで、悩むケースが多いそうです。

いくら華々しい受賞歴があろうとも、演奏するメンバーの心をつかむことができなければ、曲をまとめあげることができません。

うまくリーダーシップを発揮し、誰とでも友好的に協力できるようにと、心理学について学んだり、若いころから多くの人と接してコミュニケーション力を磨く努力をしている指揮者は多いそうです。

肉体的にも精神的にもハード

クラシックのオーケストラ・コンサート自体は、頻繁にあるわけではありませんが、公演が決まると指揮者は寝る暇もないほど忙しい日々が続きます。

曲目の資料の読み込み、スコアの下調べ、曲想の構築、演奏者への細かい指示出しなど、ひとりで黙々と行う作業が山のようにあります。

大人数のオーケストラのトップとして注目を浴びる機会も多い指揮者ですが、演奏の全責任を負うのですから、そのプレッシャーは壮絶です。

演奏前になると、眠りたいのに眠れない、一時も演奏のことが頭から離れずリラックスできないなどと、精神的な負担も少なくありません。

しかしこれを乗り越えてこそ、大きな喜びが待っています。

意外に知られていないのが、指揮者が体力的に超ハードなことです。

1時間半〜3時間のコンサートで、オーケストラを操って指揮棒を振り続けるには相当な体力が必要。

そのために毎日ランニングを欠かさない、ジムで筋肉トレーニング(主に体幹と上半身を鍛え、下半身を安定させるトレーニング)を行っているという指揮者も少なくありません。

また呼吸法を学ぶために、気功やヨガ、ピラティスを行う指揮者も多いようです。

さらには、音色を操るために、聴覚・音感の訓練も毎日の習慣として行う人が多いようです。

オリジナルの聴覚訓練をしたり、言語のアクセントを意識した発声法を勉強したり、ピアノなどを用いて音感訓練を行うなど、自分の音感を鍛えるため・衰えさせないためのトレーニングは、演奏家が毎日基礎練習を行うのと同様に、指揮者の大切な日課のひとつ。

指揮者になってからも、たくさんの訓練や修行、トレーニングが必要なのが「指揮者」という仕事なのです。