女性の指揮者

今はまだ「まれな存在」

クラシック・オーケストラの女性指揮者は、今はまだ「珍しい」存在です。

昔はオーケストラ自体が日本の相撲同様に女人禁制でした。

楽器の演奏者という立場であれば、かなり昔から受け入れられてきたようですが、オーケストラ全体を統率する指揮者に女性を据えることに対しては、いまだに抵抗感を抱く音楽ファンや団員がいることも事実です。

また、指揮者は先輩指揮者や楽団のもとでの長い下積み修行が必要ですが、女性の場合は結婚や出産、子育てによってその修行が中断されるケースが多く、せっかく指揮者を志しても、途中で断念せざるを得ない女性も少なくありませんでした。

そのため有名どころのオーケストラで指揮棒を振る女性指揮者は世界的に見ても、まだ稀有な存在なのです。

しかし、何人かの優れた女性指揮者が地道な修行に耐え抜き、世界的に有名なコンクールで優秀な成績を収めることによって、女性指揮者への注目が集まり、徐々に有名オーケストラが女性指揮者を招へいする機会が増えてきています。

女性指揮者の裾野は広い

ただし「指揮者」を仕事にする女性の数が少ないかというと、そうではありません。女性指揮者が珍しいのは、あくまでクラシックのオーケストラでの場合。

合唱やビッグバンドなど、音楽のジャンルを限定しなければ、女性指揮者の裾野は広いといえるでしょう。あのウイーン少年合唱団でも、2014年に女性指揮者が初めて誕生しました。

ただし国内では、プロとして成立する合唱団自体がそれほど多くありません。

定期コンサートを行っていても、団員はセミプロで他の仕事を掛け持ちしていたり、趣味や学校活動のひとつとして参加しているケースが多いのです。

当然、それを指揮する女性も指揮者を本業にするのは難しく、多くは音楽講師(教師)、ボイストレーナー、楽器演奏者などの仕事を兼務していることがほとんどです。

指揮者としての収入は、ボランティア(交通費や宿泊費など、実費)程度の人も少なくありません。男性・女性に関わらず、指揮業一本で生活するのは、なかなか難しいことのようです。

これからが活躍の正念場

しかし女性指揮者への昔ながらの抵抗感は、先駆者である女性指揮者たちの努力と活躍によって少しずつ和らぎ、女性ならではの繊細で表現力豊かな指揮に期待する声も高まっています。

女性がオーケストラを指揮する華やかで美しい姿は、マスコミでもたびたび取り上げられ、女性指揮者のインタビューや演奏シーンが特集されています。

これによって女性指揮者がタクトを振るコンサートやオーケストラはもちろんのこと、クラシック音楽への興味・関心までも社会的に高める効果をもたらしています。

根強いファンは存在するものの、コンサートへの集客や興業数の少なさに頭を悩ませているクラシック音楽界にとって、女性指揮者の活躍は喜ばしいことに違いありません。

今後、女性指揮者が単なる「話題作り」や「客寄せパンダ」的存在になってしまわないためにも、後進の指揮者志望者はよりいっそうの修練と世界的コンクールで優勝するなどのキャリアを重ねる努力が必要。

男性の世界的な名指揮者と演奏そのもので肩を並べる「実力」と「演奏の魅力」が今後は重要なのです。

また人生のキャリアデザインも女性指揮者にとっては欠かせません。

結婚や出産をあきらめて指揮者という仕事に専念する「女という性を捨てた」挑み方だけでなく、家庭や子どもを得ながら指揮者としてのキャリアも築いていけるような生き方、働き方に挑戦することも、今後の女性指揮者の大きな課題となってくるでしょう。