精神保健福祉士のつらいこと・大変なこと・苦労

精神保健福祉士のつらいこと・大変なこと

心の複雑さと向き合い続けなければならない

人の心はきわめて複雑であり、たとえば同じ精神障がいを抱えている患者であっても、その背景にある原因や理由は、生活環境や人間関係、過去のトラウマなど、人それぞれに異なります。

一般的な症例に当てはまらないケースもよくあり、ときには医療スタッフ同士でいくら知恵を出し合っても、根本的な治療方法が見つからないこともあります。

患者の精神状態も、昨日は明るくて調子がよかったのに、次の日にはふさぎこんでろくに口も聞いてくれないといったように、理由もわからないまま目まぐるしく移り変わっていくことも珍しくありません。

さらに、一度は完治して退院したはずの患者が、たいして間を空けることもなく病気を再発させ、また病院に戻ってくるということもあり、やるせなさを感じることもあるようです。

人の心に深く接し、その問題に直面し続けるという精神保健福祉士の仕事には、困難さと共に大きなストレスがかかるといえるでしょう。

とくにキャリアの浅い新人や若手のうちは、経験が足りないために難しい状況にどう対処してよいかわからず、無力感に苛まれることも少なくないかもしれません。

患者から暴言や暴力を受けることがある

精神に障がいを抱える人のなかには、妄想や幻覚、幻聴などにとらわれて極度の不安状態や緊張状態となり、普通では考えられないような暴言を吐いたり、暴力をふるって暴れまわる人もいます。

学校でしっかりと精神障がいについて勉強し、ときにそうした症状が起こることは知識として知っていても、「知っていること」と「体験すること」は大違いです。

実際の現場で目にしたり、あるいは自分自身が暴言や暴力の対象となったときの衝撃は図り知れず、平静を保つことはきわめて困難といえます。

頭では「この人は病気なんだ」と理解していても、なかなか優しく接することができず、精神保健福祉士を続けていく自信を失くしそうになってしまうこともあるようです。

精神保健福祉士の悩み

精神保健福祉士が抱えやすいのが、人間関係に関する悩みです。

一概にはいえませんが、精神に障がいを抱える人は、自分の意思を示すのが苦手だったり、話を理解することが難しかったりと、コミュニケーションに苦慮するケースが目立ちます。

また、精神障がいは非常にデリケートなうえに深刻な問題ですので、本人と家族、あるいは家族同士で意見がぶつかり合い、当事者間の争いに巻き込まれて板挟みにされることもあるようです。

さらに、病院などの医療施設においては、医師看護師などとチームを組んで患者の治療にあたりますが、精神保健福祉士は直接医療行為に携われないこともあり、立場が弱くなりやすいという声も聞かれます。

精神保健福祉士は、精神障がい者を支えるために、家族、医療、福祉、地域など、さまざまな分野の人たちと密に連携し、ネットワークを構築していくことが求められます。

こうした職業特性上、仕事で関わる人の数は非常に多くなりがちですので、それを取りまとめる精神保健福祉士は、人間関係に困る頻度もどうしても高くなりやすいといえます。

精神保健福祉士を辞める理由で多いものは?

精神保健福祉士を辞めるケースとしては、経済的理由によるものが目立ちます。

精神保健福祉士の給料は、職場によって多少の差があるものの、おおむね300万円~450万円前後であり、国家資格が必要となる専門職の割には、それに見合った水準とはいえないかもしれません。

キャリアを重ねて役職者に就けば、さらなる収入アップも期待できますが、職業全体として高い収入を得ている人はさほど多くはないようです。

精神保健福祉士の業務内容は非常に幅広く、さまざまな専門知識が必要になるうえ、上述したように仕事から受けるストレスも決して小さくはありません。

福祉職には大きな社会的意義があり、金銭面がすべてではないといえ、そうした業務内容と給料が見合っていないと感じる人のなかには、精神保健福祉士を辞めてしまう人も一定数いるようです。