落語家の下積み時代

見習い時代

落語家の卵が一人前の落語家になるまでには、非常に長い下積み時代があるのが一般的です。

基本的には東京の「江戸落語」と近畿圏の「上方(かみがた)落語」に大きくわかれており、真打(しんうち/師匠)制度は上方では消滅しているといわれています。

ただ落語は江戸時代から歴史のある伝統芸能ですから、階級を重んじる業界であるといえます。そのため見習い、前座にあたる落語家の卵時代が約4年間続きます。

それからようやく一人前の落語家として認められる「二つ目(ふたつめ)」を経て「真打」になるまで、落語家を志してから約14年の歳月がかかります。

とくに見習い時代は落語の修業のほか、師匠宅の家事や雑用をこなします。

現在では通いの人も多いといいますが、住み込みの場合もあり、どちらにしても休みはありません。

師匠宅で自ら料理を作り、一緒に食事をとります。住み込みの場合は家賃の心配は必要ありませんが、収入は雑用分の小遣い(給金)に頼ることになります。

前座時代

続いて仏教の前座(まえざ)説教が語源といわれる前座(ぜんざ)に昇進すると、師匠宅の家事や雑用のほかに、寄席(よせ/演芸場)の楽屋(がくや/控え室)入りが許されるようになります。

そして「開口一番」といわれる最初の一席を担当します。これが前座といわれる由縁です。

ただし修業中の身ですから番組(プログラム)に名前はありません。

そのほか太鼓などの鳴り物を演奏します。

また寄席従業員のような、めくり(出演者の名前を書いた札)の出し入れ、色物(落語以外の演芸)の道具の準備と回収、マイクのセッティング、着物の管理、お茶くみなどの雑用も担当します。

さらに前座にも階級があり、もっとも古株になると、立前座(たてぜんざ)といわれ、寄席興行の進行について決定権をもち、ほかの前座に指示を出したり、ネタ帳に記録をしたりと忙しくなります。

師匠のかばんを持って毎日寄席に通うので、基本的に大の月の余一(31日がある月の31日)しか休みはありません。

余一会という特別興行があれば、休みは皆無になります。前座と同じく収入は雑用分の小遣いです。

二つ目時代

落語の修業と雑用をほとんど毎日続けて4年ほど経つと、ようやく一人前の落語家になることができます。それが「二つ目」への昇進です。

だるまに二つ目を入れることができるほど開眼したという意味と、二番目に高座(こうざ/舞台)に上がるという意味があります。

自分の手ぬぐいを作って挨拶回りをし、紋付きの羽織や袴を身につけることが許され、番組に名前が出るようになります。

割(わり/出演料)がもらえるようになりますから、下積みは終わったと言えそうですが、師匠宅や寄席の雑用をしなくなる分、小遣いという収入がなくなります。

定席(じょうせき/常設の寄席)に出演できる機会は限られており、自分で仕事を探さなければなりません。テレビやラジオの現場に売り込んだり、落語会を開催したり、営業に出向いたりする必要があります。

真打に昇進できるまでには合計約14年かかるといわれていますから、現実的にはほかのアルバイトとかけもちする二つ目もたくさんいるようです。

生活面では苦しいことも多い二つ目時代をしっかり乗り切ると、トリ(最終演者)を務める真打の落語家になることができるでしょう。