レーシングドライバーの仕事内容、なるには、資格、給料、求人

レーシングドライバーになるには

レーシングドライバーの仕事内容

マシンをより速く安全に走らせる

「レーシングドライバー」とは、世界中のさまざまな自動車レースでマシンを操縦する人をいい、「レーサー」「(F1)パイロット」などとも呼ばれています。

マシンを速く走らせるのはもちろんですが、アクシデントを回避し、レースに勝つためには「無事にゴールする」という側面もあるため、コースや車両の状態を的確に読み取る判断力、刻一刻と変わる状況に対処するドライビング・テクニックなども求められます。

また、各種カーレースの結果は、自動車技術の向上や実用車(市販車)の性能改善にフィードバックされることが少なくありません。

そのため、「走行中にどのようなことがあったか」「それにどう対処したか」といったマシンのコンディションをスタッフに伝え、アドバイスする力も必要です。

レーシングドライバーになるには

まずはレースに必要なライセンスを取得する

レーシングドライバーといえば、F1(フォーミュラー・ワン)の選手を思い浮かべる人は多いでしょう。しかし、自動車競技には下記のようにいろいろな種類があります。

・レース:代表的なレースが「F1」。レース場やサーキット、公道(区間閉鎖された)で競争する。
・ラリー:決められた区間を指定時間で正確に走る、または決められた区間の走行タイムを競うレース。
・スピード行事:ジムカーナ(駐車場)、ダートトライアル(非舗装路面)に規定のコースを走り、タイムを競う。
・レーシングカート:F1を小さくしたようなマシンでレースを行う。

上記の他に、「ヒルクライム」「ドラッグレース」といったレースも行われており、出場チームにはそれぞれレーシングドライバーが所属しています。

レーシングドライバーを目指す人は、基本的に「自動車が好き」「運転が得意。自信がある」「メンテナンスも自分で行う」というタイプが多いです。

レースに出るには普通自動車の運転免許はもちろん、競技に応じた「ライセンス」が必要です。

たとえばJAF(一般社団法人 日本自動車連盟)公認の競技会に出るためのライセンスは次の通り(通常JAF認定の講習会を受講して、合格後、JAFの窓口で申請することにより発給)。

現在活躍しているレーシングドライバーはプロになる以前に資格を取得し、多少なりともレース経験を積んでいるケースが少なくありません。

・国内Bライセンス:JAF国内競技(国内、準国内、地方)のうちレースを除く競技(ラリーなど)に出場可。
・国内Aライセンス:JAF公認の全国内競技に出場できる。
・スーパーライセンス:F1世界選手権に出るための特別な資格。国際A級保持が前提で、レース成績を参考に審査を行う。
・国際Aライセンス:国際格式のレースに出場するための資格。スーパーライセンスを取得するためには絶対に必要。
・国際Bライセンス:WEC、WTCC、スーパーフォーミュラ、スーパーGTなどに出場するための必要最低限のライセンス。
・国際Cライセンス:国際A・Bライセンス以外の国際格式レースに出るための資格。
・国際Rライセンス:WRCやAPRC、ダカールラリーなど、国際ラリー出場するためのライセンス。
・国際ドラッグライセンス:国際ドラッグレースに出るために必要な資格。
国際ソーラーカーライセンス:「ソーラーカーレース鈴鹿」への出場などに必要なライセンス。

なお、レーシングドライバーの登竜門として、小学生(10歳以上)から取得できるレーシングカートにも、国内・国際・ジュニアなどのライセンスが設けられています。

今は亡き伝説のF1ドライバー、アイルトン・セナをはじめ、皇帝ミハエル・シューマッハ、日本の中嶋一貴、佐藤琢磨選手ほか、カートは多くのF1ドライバーを輩出しています。

レーシングドライバーを目指すのであれば、まずカートから始めるのもおすすめだといえます。

また、サーキットや自動車メーカーが主催するレーシングスクールなどに入校し、優秀な成績を収めてステップアップする、レーシングチームのオーディションを受けるといった方法もあります。

レーシングドライバーの給料・年収

ドライバーのスキルによって決定

レーシングドライバーの収入は、本人の運転能力やレース成績、知名度といったファクターによって異なります。

そのため、野球やサッカー同様、実力がものをいう世界だといえます。

基本的に給料という形ではなく、年間契約=年俸という形態をとるケースが多いようです。

出場するクラスによっては年俸ではなく、レースごとに報酬をもらう場合もあります。

モータースポーツの頂上、F1のトップであれば年収50億円を超える選手もいる反面、国内最高峰のスーパーGT500のトップで1億円、平均して約2000万円。

ただし、この他のカテゴリーになるとまちまちで、下位クラスは日本人の平均収入~それ以下の選手も少なくないようです。

なお、表に出ているレーシングドライバーの年俸には、年間契約料だけでなく、レース賞金やスポンサー料なども含まれています。

そのため、レース出場のほかに、自動車メーカーやタイヤメーカーなどのテストドライバーとして、収入を得ている選手も多いようです。

レーシングドライバーのやりがい、楽しさ、魅力

好きな自動車を仕事にできる喜び

一番の喜びは、日々「好きな自動車」と接することができる点です。

レースの高揚感はもちろん、本番までの走行練習、各種トレーニング、メカニックとの打ち合わせほか、自動車一色の生活は、レーシングドライバーにとって魅力的だといえるでしょう。

また、自動車レースの世界は実力がすべてです。

身体を鍛え、レーステクニックを磨き、レースで結果を出した時の達成感はひとしおですし、やりがいを感じるといいます。

学歴や職歴は関係なく、レースで実績を積んでいけば、名声や高収入を手に入れることも可能です。

そのため、多少つらいことがあっても、「目標を目指して頑張れる」という選手も少なくありません。

レーシングドライバーのつらいこと、大変なこと

勝つことが第一の厳しい世界

実力至上主義のため、いくら自動車やレースを愛していても、競技で優勝するなど、結果が出せなければ思うような収入は得られません。

そのため、ひとつでも多くのレースにでようとカテゴリを掛け持ちする、オフの日にはアルバイトをして生計を立てている選手もいます。

また、レーシングドライバーの世界には、「越えられない壁」があり、いくら努力をしても、適性や才能が足りないという現実を見せつけられることもあります。

さらに自動車レースには、常に事故やアクシデントといった危険が付きまといます。

事故の度合いによっては、大怪我をしたり、最悪の場合、命を失う可能性もあります。

勝てば成功を手に入れられる一方で、危険と背中合わせの仕事だといえるでしょう。

レーシングドライバーに向いている人、適性

技術力・精神力と向上する努力

まず「自動車やレースが好きであり、運転に自信のある人」でしょう。

それに加えて、運転やメンテナンスなどについての知識、高速マシンを操る、耐久レースに対応できる体力(運動神経)を有し、動体視力の優れた人であれば、なお向いているといえます。

また、レースでのプレッシャーを跳ね返し、逆境に立ち向かえる精神力、あらゆる状況を想定して、突発的なアクシデントに冷静に対処できる判断力も必要です。

ただ、最初からすべてを兼ね備えることは難しいといえます。

自分に足りない技術力や知識を身に付けるための努力を怠らないということも、レーシングドライバーに不可欠な素養でしょう。

レーシングドライバーの雇用形態、働き方

ワークスまたはプライベート所属が主流

一線で活躍しているレーシングドライバーは、「ワークスチーム(自動車メーカーによるチーム)」、または「プライベートチーム(プライベーターとも。自動車メーカー以外の企業・個人がお金を出して、チームを作る)」に所属しています。

ただし、カテゴリーによっては基準が複雑で、「シャシーは自前、エンジンはメーカーから買う」チームを、プライベートチームではなく「カスタマーチーム」「コンストラクターチーム」と呼ぶこともあります。

「ワークスチーム」はもちろん、資金力・技術力のある「プライベートチーム」に所属できるのは、必然的にトップクラスのドライバーです。

とはいえ、自動車レースを続け、勝つためのマシンを確保するには、どのチームも大きな資金が必要です。

そのため、トップドライバーといえども、マシンを走らせるだけではなく、スポンサー取得のための活動(イベントやパーティーへの出席、ファンサービスなど)をすることもあります。

また、個人でマシンを購入し、レースに参戦するドライバーもおり、実績を積めば、ワークスやプライベートから声がかかることもあるといいます。

レーシングドライバーの勤務時間・休日・生活

ドライバーごとにスケジュールが異なる

レーシングドライバーのスケジュールは、ドライバーの参戦カテゴリーやランクによって異なります。

たとえば、あるスーパーGTの選手の場合、レースに費やす日数は約50日(年間8レースに数回のテスト走行)、残りの時間は他カテゴリーのレースに参戦、レーススクールの講師、自動車や自動車部品メーカーのテストドライバー、さらに打ち合わせやスポンサー活動などに費やしているそうです。

つまり、ステアリング一本で生活しているレーシングドライバーは、ほんのひと握りです。

多くのレーシングドライバーはレース以外の仕事もこなすので、その日によってスケジュールにはバラつきがあるのです。

そのため、勤務時間や休日、生活の平均モデルを決めるのは難しいといえます。

レーシングドライバーの現状と将来性・今後の見通し

安定性・将来性は自分の腕が決める

レーシングドライバーという職業の安定性、および将来性はそれほど高くありません。

一流のドライビング技術を持ち、人気のドライバーであれば、数年の間で稼いでリタイアし、あとは悠々自適な暮らしができます。

しかし、一般的なドライバーは、まずチームやスポンサーと契約して、マシンをはじめ、レーシングスーツといった装備、基本的な収入を得る必要があります。

さらにテストドライバーやレーススクールの講師といった副業を得ることで、収入をアップすることができます。

とはいえ、レースで結果を出せなければ賞金は入りませんし、長く成績が低迷すれば契約解除となる場合も少なくありません。

レーシングドライバーの仕事は、やはり「勝つ」ことです。

ひとつでも多く勝利するため、常に努力を怠らずスキルを磨き、着実にキャリアを積んでいかなければなりません。

厳しい世界ではありますが、逆にいえば、安定性・将来性は自分の腕で決めることができるのです。